空き家に漫画を描いて島おこし、愛媛の廃校に「漫画学校」開校…有名漫画家が島に滞在し指南

2025年4月28日(月)14時30分 読売新聞

生徒に講義するのむらさん(愛媛県上島町で)

 空き家の壁に人気漫画を描いて島おこしに取り組む愛媛県上島町の高井神島で27日、廃校舎を活用した「漫画学校」が開校した。有名漫画家が講師を務め、若い世代を呼び込むことで漫画による島の活性化を進めていく狙いがある。初日は、一日漫画教室が開かれ、町内の小中学生ら約20人が、のむらしんぼさんと押山雄一さん、塚本知子さんから、人物画の描き方や創作について教わった。(脊尾直哉)

 漫画による島おこしを始めた長谷部理さん(76)は開校式で、「夢はこの学校からプロの漫画家を輩出して、いつか島の壁に作品を描いてもらうこと。島を『漫画の聖地』としてさらに盛り上げたい」と語った。

 一日漫画教室には町立魚島小中学校や岩城中などの子どもらが招待された。「月刊コロコロコミック」などで連載された「つるピカハゲ丸」の作者として知られるのむらさんは、描いた漫画の原型となる「ネーム」などを見せ、「いまや作画はAI(人工知能)でもでき、どれだけ面白い創作ができるかが大切。自らの内に秘める個性と想像力が創作の原点になる」と語りかけた。

 魚島中3年の男子生徒(14)は「教わった技術は知らないことばかり。今までよりも上手に絵が描けるようになった。漫画学校の影響で島にたくさん人が来て上島町の魅力を知ってほしい」と話した。

 漫画学校は、5〜7月の土日曜、島に滞在する計6日間のコースで、5月中旬頃まで募集している。すでに小学生から50歳代まで幅広い世代の応募があるという。夏以降には長期休みの高校生や大学生を対象にした1週間の合宿も企画する。

 山梨県で医療系の会社を経営する長谷部さんが島おこしを始めたのは約20年前。初めて訪れた時から燧灘ひうちなだの多島美に心を奪われたという。人口減少が続く島の力になろうと私費で壁画作りを計画。2016年、親交のあった漫画「Dr.コトー診療所」の作者、山田貴敏さんに原画を提供してもらい、島の公民館に最初の壁画が完成した。

 壁画は年に3〜5作品のペースで増え、今では、「GTO」「賭博黙示録カイジ」など約30作品にのぼる。「漫画の島」として知られるようになり、島の人口増加策として若い世代を呼び込むために発案されたのが、漫画学校だった。

 校舎は23年3月に廃校となった町立高井神小中学校の校舎を町から借り受け整備。トイレやエアコンを設置し、5部屋を使用できるようにした。そのうち1部屋は、図書室とし壁画作りに協力した漫画家の作品約500冊が並ぶ。

 長谷部さんは「島を盛り上げようと取り組んできたが、やっと若い世代を呼び込む設備が整ってきた。これからも漫画をきっかけに島の人口増加につなげていきたい」と話した。

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