「最初は大騒ぎで全然寝なくて」……保育士の資格を取った絵本作家が思いをこめて
2025年4月28日(月)15時20分 読売新聞
保育士 見たままの子供たち
『おひるねとんとん』『せんせいみてて!』 石井聖岳さん(48)
怒られてばかりいる子供の心の中を描いた『おこだでませんように』(くすのき しげのり・作)の絵で知られる絵本作家が2023年、保育士の免許を取った。
長男が通っていた保育園の園児の父親が、資格試験を受けることになり、「石井さんもどうですか」と勧められた。何回かの挑戦で合格。アルバイトで保育園で働くことに。日々目にする子供たちの様子をもとに、2冊の絵本を描きあげた。
「最初は大騒ぎで全然寝なくて。寝方も様々で、背中をとんとんたたいてほしい子もいれば、とんとんいらないって言う子もいて」。そんなお昼寝の時間の様子をイメージして描いたのが『おひるね とんとん』。
一方、『せんせい みてて!』は、子供たちが何かできるようになった時に、先生に向かって言うフレーズをタイトルに。一本橋を渡ったり、うんていをしたり。子供たちにサルやゾウも加わって、みな満足そうだ。「ただうれしくて見てほしいのかもしれない。そして、見てくれる大人がいること自体が幸せなことなのでは」
愛知県内にあった美術系短大を卒業し、絵本の勉強をしながら、学童保育で働いた。「もともと子供が大好きだったわけではない」が、学童で子供たちと接し、「すごく楽しかった」と振り返る。
2000年に絵本作家デビューを果たし、上京。絵だけを描くことが多く、07年に『ふってきました』(もとした いづみ・文)で日本絵本賞などを受賞したが、『ぷかぷか』などでは文も書いた。
いずれも、子供の手描きの感じが残る柔らかい絵が印象的だ。「デッサンが狂ってても、技法がなくても、子供が見たまま感じたままを描いた絵が好き。親御さんに『うちの子もこんな表情します』『そうそうこうだよね』って言ってもらえるような絵を、僕も描きたい」(童心社、各1540円)(近藤孝)