「赤毛のアン」は、シェークスピアと意外な接点があった……アニメ放送開始に合わせて読みたい新訳や関連本

2025年4月28日(月)15時30分 読売新聞

Eテレで放送されているアニメ「アン・シャーリー」

「赤毛のアン」 尽きない魅力

 名作『赤毛のアン』を書いたカナダの作家、モンゴメリ(1874〜1942年)が生まれて150年余り。NHK・Eテレのアニメシリーズ「アン・シャーリー」が放送され、新訳や関連本の出版が目立っている。想像力豊かな少女の成長物語は、多くの人の心をひきつける。(北村真)

教養明確に訳出 俳優が翻訳挑戦

 『赤毛のアン』は、自然豊かなカナダのプリンス・エドワード島を舞台にマシューとマリラの老兄妹に引き取られた孤児、アンの成長を描く物語だ。村岡花子(1893〜1968年)が初めて日本語に訳した後、様々な訳が出版されてきた。

 3月に刊行された『新訳 赤毛のアン』(角川文庫)はシェークスピア研究が専門の英文学者、河合祥一郎さんが翻訳を手掛けた。アンのセリフは、シェークスピア作品が多く引かれる。マリラと出会ってすぐのアンが自身を「コーディーリア」と呼んでほしいと頼む有名な場面は、『リア王』のヒロインの名前からの引用だ。

 河合さんは、「文学少女アンを創り出した作者の文学的教養がどのように織り込まれているかを、これまで以上に明確に訳出した」と話す。10代の若者だけでなく、かつて親しんだ大人も楽しめる一冊となった。

 モンゴメリが自身の半生をつづった『ストーリー・オブ・マイ・キャリア 「赤毛のアン」が生まれるまで』(水谷利美訳、柏書房)は、「アン」の原点となったプリンス・エドワード島での子ども時代の思い出や、親しんだ文学などについて振り返った作品だ。

 書き上げて出版されるまで、いくつもの出版社に売り込み、原稿を送り返されたという。成功までの苦労が分かり、「同じように悩みもがいている人たち」を温かく励ましてくれる。

 モンゴメリが書く英語の原文に気軽に触れられる書籍もある。上白石萌音、河野万里子『翻訳書簡 「赤毛のアン」をめぐる言葉の旅』(NHK出版)は俳優の上白石さんが「アン」の名場面の翻訳に挑戦した。

 往復書簡の形式で翻訳家の河野さんが上白石さんの訳文を添削する構成だ。読者も原文に親しみながら、徐々に訳文が洗練される過程をたどることができ、翻訳の奥深さを感じ取れる。

 新井えり『「赤毛のアン」の名言で学ぶ英語』(IBCパブリッシング)は、「名言の宝庫」という「アン」に登場する53の短い会話文と訳文を並べ、単語や表現の意味を登場人物の心情に寄り添いながら解説する。

 <All sorts of mornings are interesting,don’t you think?>

 (どんな朝でも、朝って心が弾むでしょ?)

 想像力豊かなアンや、愛情に満ちたマリラやマシューたちのセリフを英文で堪能しつつ、英語表現を身につけることができる。

壮大な大河小説…松本侑子さんが解説本

 作家で翻訳家の松本侑子さんが、『赤毛のアン』と続編について解説した『赤毛のアン論 八つの扉』(文春新書)を刊行した。児童書のイメージが強い作品を英文学やスコットランド民族、キリスト教など八つの観点から読み解いた。

 松本さんは、シリーズは「壮大な大河小説」だと説く。作品には半世紀以上の時間が流れ、ダイアナとの友情、進学、就職、ギルバートとの結婚、出産を経て、モンゴメリも生きた第1次大戦中の暮らしが描かれる。「触れるときの自分の年齢に応じ、色々な登場人物の気持ちで読むことができる」

 「祖父が上院議員で、自身は牧師夫人も務めたモンゴメリさんは政治や社会、国際情勢などに関心が高い人だった」と話す。島の歴史や民族、宗教やカナダの2大政党制といった政治的背景も織り込まれている。「『アン』は普通の人たちがより良い人生を目指して誠実に生きる姿が書かれる。100年以上前の小説だけど、女性の自立や結婚しない人たちの生き方、新しい家族の形を描いている」

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