予測不能な展開にもはや感動…『続・続・最後から二番目の恋』第5話の“フリ”と“オチ”に注目

2025年5月13日(火)11時0分 マイナビニュース


小泉今日子中井貴一が主演を務めるフジテレビ系ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(毎週月曜21:00〜 ※TVer、FODで配信)の第5話が、12日に放送された。
鎌倉の古民家へ越してきたテレビドラマプロデューサーの千明(小泉)が、その隣家に住む市役所職員の和平(中井)と出会い、和平の家族とともに恋や友情を育んでいく大人のロマンチック&ホームコメディ。第3シーズンとなる今作は、還暦間近の千明に定年を迎えた和平という、さらに円熟味を増した彼らの“今と未来”が丁寧に描かれていく。
第5話は、第3期まで続くシリーズものとして見ても、この回だけの1話完結ものとしても見ても、“フリ”と“オチ”が美しい見事な一遍であった——。
○何も起こらない「いつもの感じ」が壮大な“フリ”に
終了の約3分前までは誰もが「いつもの感じ…」とある意味油断をしていただろう。とはいえ、その「いつもの感じ」は、このドラマにおいてはいい意味での予定調和であり、それこそが心地よく、大きなドラマチックな出来事が起こらないからこそ、安心と信頼があるのだ。
だが、冒頭での何げない会話の中で繰り広げられた、高齢者宅に強盗事件が起こっていること。それをきっかけに独り身の千明を心配した和平が呼び出しボタンを準備したこと。そしてどうしようもなく泥酔してしまった日、千明は全裸になって寝てしまうこと——それらがまさか思いもよらない“フリ”となり、終了3分の大ラスで見事な“オチ”に着地したことは、おかしさや仰天を超えて、感動的ですらあった。
このドラマであれば、導入部の“フリ”はただただ“何げない楽しい会話”として成立できていただろうし、和平が千明を思っていることが描写されるだけで、大人のラブストーリーの一端が表現できたとも言えるだろう。むしろそれこそが「いつもの感じ」なのだ。しかし今回は、このドラマが培ってきたそれらの何げなさや、何も起こらない「いつもの感じ」が、図らずも壮大な“フリ”となっていたのだ。
そして、和平が千明を心配して呼び出しボタンを設置するその流れが、最終的な“オチ”に向けたいやらしい伏線や匂わせをしていたわけではないという点も、今作らしさが詰まっている。なぜなら和平が呼び出しボタンを設置したのは、千明を心配してということももちろんあるのだが、和平が前々回で市長に打診されたこと(※しかもそれがまんざらでもない)が、このパートへ絶妙に生かされていた。千明への具体的な優しさである“呼び出しボタンの設置”が、市民を守ることの芽生えであるという点も、実にさりげなく描写されており見事だった。
○油断できないドラマであることを思い知らされる
視聴者が最後にあんな“オチ”が待ち受けているとは予想もしなかったほど油断してしまったのは、千明が泥酔してしまったことにも、しっかりとした“フリ”が用意されていたからだ。
それは冒頭で描かれた古い知人との再会であり、そこで交わされた千明への評価が全て投資に誘うためのウソだったという、千明にとってかなり大きいショックを描いた場面だ。この部分、和平や千明のように年を重ねた末にカッコいい大人になったことの対比として、カッコ悪い大人も描いてみせた…という考察をしていたのだが、それだけでなく、千明を泥酔させて完成させる“オチ”に向かうための“フリ”だとは思いもしなかった。
ほかにも、典子(飯島直子)の“熟女グラビア”という今シーズン序盤に仕掛けられたその“フリ”の“オチ”が、今作ではおなじみの離婚危機を繰り返した挙げ句に、“家出が許される夫”となった広行(浅野和之)との再会という展開もあっぱれだった。この“フリ”と“オチ”も、シーズンを横断するような仕掛けでうまさがあった。
このドラマは、やはり“油断できない”ということを思い知らされる第5話であった。
「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平 おおいしようへい テレビの“視聴質”を独自に調査している「テレビ視聴しつ」(株式会社eight)の室長。雑誌やウェブなどにコラムを展開している。特にテレビドラマの脚本家や監督、音楽など、制作スタッフに着目したレポートを執筆しており、独自のマニアックな視点で、スタッフへのインタビューも行っている。 この著者の記事一覧はこちら

マイナビニュース

「最後」をもっと詳しく

「最後」のニュース

「最後」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ