『マジカル頭脳パワー!!』四半世紀経っても色褪せないスタイルに衝撃 “分かりやすさ”徹底追求の真髄を見た

2025年5月24日(土)18時0分 マイナビニュース


●懐かしさに浸ることなくクイズスタート
日本テレビの平成の名番組が続々と登場する「大進化!レジェンド番組祭り」。この先陣を切るのが、きょう24日(19:00〜)に放送される『マジカル頭脳パワー!!2025』だ。
1990年から9年にわたり放送され、全局のクイズ・ゲーム番組で歴代9位となる番組最高視聴率31.6%(世帯、ビデオリサーチ調べ・関東地区 ※77年9月26日以降)を記録し、大ブームを巻き起こした同番組。23年ぶりの復活を遂げた今回の番組を一足先に視聴すると、当時と変わらぬテイスト・スタイルでありながら、全く古臭さを感じないことに驚かされた。
○「映像シャウト」をめぐるスタッフと解答者の駆け引き
番組がスタートし、早速映し出されるMC卓。ここに配置されたデジタル数字フォントの「MAGICAL SPECIAL 2025」を見るだけで、あの頃にタイムスリップしたかのような気分になる。
しかし、当時に続きMCを務める永井美奈子や、レギュラー解答者だった所ジョージ加藤紀子間寛平らが「久しぶりですね」といった言葉も交わさず、ノスタルジーに浸るやり取りが一切ないまま、新MC・山里亮太の「ますは、マジカルシャウトー!! それでは参りましょう!」とクイズがスタートした。
その瞬間、当時もオープニングから間髪入れずクイズに突入する構成だったことを思い出すのと同時に、今回の番組がただ復活することを楽しむのではなく、“今”の番組として戦う覚悟を示したのだと受け止めた。
懐かしさは、クイズのスタイルや出演者のやり取りのほか、問題ごとのBGM、そのまま放送に流すのが憚られる解答に被せる“バキュン!”効果音、小学生にも分かるテロップのふりがな、出演者発言の手書き風テロップなど、番組が進行するのを見ているだけで十分味わえる。
早押しボタンを使わず解答の声を検知する「マジカルシャウト」では、ひっかけ問題の「映像シャウト」が登場。“意地悪さ”あふれる映像を出題するスタッフと、素直に受け止めるべきかどうか…と悩む解答者たちの駆け引きが繰り広げられ、加藤は「これが『マジカル』です!」と胸を張る。
そして、どんなにシュールな映像でも「よくありますよね!」と、スタッフ側に立って何の悪意もないことを平然とアピールする永井のポジショニングも変わらない。
○“知り尽くした男”所ジョージの変わらぬ切れ味
『マジカル頭脳パワー!!』の名物といえば、MCの板東英二と、脅威の正解率を誇る所ジョージとのやり取りだ。所は、スタッフの出題意図を読み切って、問題VTRが出る前に正解を出してしまうというクイズ番組史に刻まれる伝説の解答をするなど、『マジカル』によって現在につながるインテリな一面も確立することになった。今回も永井が「さすが、『マジカル』を知り尽くしている!」と舌を巻くなど、変わらぬ切れ味を見せている。
そんな所に対して、MCらしからぬ敵意むき出しぶりだった板東。珍しく誤答するとうれしそうに喜ぶのが印象的だったが、その関係性があるからこそ、所が天才的な発想力で正解を出した際の称賛が、効果的に生きていた。
しかし今回は、所の15歳上だった板東に代わって22歳下の山里が登板。大先輩に対して全く同じ構図で対峙(たいじ)するのは至難の業であることが想像できるが、時折ボケて見せる所に、板東と違って下手に出ながら果敢にツッコミを入れていく。
ほかの解答者にも、ひっかけ問題にハマると「思うツボです〜」と“意地悪さ”を出しつつ、天然解答を見せた大橋和也(なにわ男子)に「スーパーアイドルだよ?」と持ち上げながらチクリと刺すなど、独自のスタイルを確立。クイズの進行においては、長年『東大王』(TBS)でMCを務めてきただけに、安定感抜群だ。
●「森さん!」からバトンタッチのプレッシャー
レギュラー放送時からの変更点として、MCに次いで分かりやすいのは“声”。今回の出題役は、板東や永井が「森さん!」と呼びかけていた森功至に代わり、日テレの藤田大介アナウンサーが担当した。
藤田アナは自身のX(Twitter)で、本番中は観覧席の最上段に座り、時にMCと会話する特殊なスタイルであることを明かし、「読み間違えられないプレッシャー、力量が試されました」と吐露しているが、“第三の進行役”としてその役割を見事に果たしている。
また、当時から解答者が大幅に入れ替わる中で、名勝負となったのが、「マジカルプッシュ知らなきゃ押しつけろ!!」の丸山桂里奈vs浜口京子。問題を聞いて「分からない」と思ったら相手のボタンを押し、相手に答えさせることができるというルールだ。
かつては対決する解答者同士が向き合っていたが、今回は並列で早押しを構えているため、日本が誇るアスリート出身天然タレントの2大巨頭が、テレビなんてお構いなしに取っ組み合いながら、我々の想像のはるか上を行く爆笑解答を次々にぶっ放していく。
番組では、ほかのクイズや解答者からも、思わぬ爆笑解答が随所に登場。あまりに笑いすぎて、MC卓の後ろにしゃがんで見えなくなってしまう永井のリアクションも健在だ。
○総合演出・五味一男氏が狙う「極端」
こうした様々な変化がある一方、テロップのテイストや番組のテンポが大きく変わっていないにもかかわらず、全く古臭さを感じない。それは、“分かりやすさ”を徹底的に追求した演出が、現在のテレビ制作の礎となるターニングポイントであったことを裏付けている。
元フジテレビの小松純也氏は、マイナビニュースの取材に、「『マジカル頭脳パワー!!』を見ると、画面上、分からないものが何一つあってはならないという追い込まれ方をされてたんだと思うんです。そのおかげで、テレビマンは(編集作業が増えて)大変になりましたから」と業界への影響を証言している。
このスタイルを生み出したのは、総合演出の五味一男氏。同氏はマイナビニュースの取材に、「とにかく僕は“極端”って言葉が大好きで、極端に小学1年生でも分かりやすい番組を作ろうと言って、ゲームのようにスピード感があるものにした。賛否両論はあるんですけど、やっぱり徹底的に極端なものを作りたかったんです」と語っている。今回の復活版でも五味氏が総合演出を務めており、そのクオリティが担保されているのだ。
代わる代わるクイズが展開されていく中、それぞれにルール説明の時間はほとんど設けられていない。にもかかわらず、初見のクイズでもすぐ理解して楽しめることに、“分かりやすさ”追求の真髄を感じた。
○さらなる名クイズの復活に期待
今回登場するクイズは、「マジカルシャウト」「超瞬間お手上げクイズ」「逆から早撃ちクイズ」「マジカルプッシュ 知らなきゃ押しつけろ!!」「マジカルアート伝言バトル」「マジカルアクション伝言バトル」「マジカルインスピレーション」「マジカルものまねワンダーランド」「エラーを探せ」といったラインナップ。
9年間の放送で生み出された252種類の中から選りすぐりであることに間違いないが、日本中にブームを巻き起こした「マジカルバナナ」に、初期の名物コーナー「あるなしクイズ」、所が前述の伝説解答を見せた「マジカルコインいち文字クイズ」など、まだまだ見たい名クイズ・ゲームを挙げることができる。
この記事を読みながら、ヘッドホンで他者の解答が聞こえず、正解すると“檻(おり)”から脱出する早抜けや、「ナイショ」テロップ&効果音が脳内再生された人もいるのではないか。今回のエンディングで、MCの山里は「また次回お会いしましょう!」と締めているので、その言葉を信じてさらなる復活を期待することにしよう。

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