『べらぼう』手段を選ばない誰袖(福原遥)に視聴者最注目 第19話画面注視データを分析

2025年5月25日(日)6時0分 マイナビニュース


●強引に書かせた遺言書
テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、18日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(総合 毎週日曜20:00〜ほか)の第19話「鱗の置き土産」の視聴分析をまとめた。
○「ああいうのが大奥で毒盛ったりするんだろうな」
最も注目されたのは20時39分で、注目度77.7%。誰袖(福原遥)が今際の際をさまよう大文字屋市兵衛(伊藤淳史)に、蔦重(横浜流星)による身請けを許す遺言書を強引に書かせるシーンだ。
桜が舞う九郎助稲荷で、蔦重は鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)の店がうまくいくよう願っていると、背後から誰かが手を重ねてきた。誰袖だった。神聖な場所で戯れる誰袖を非難する蔦重だが、九郎助稲荷(綾瀬はるか)は蔦重が瀬川(小芝風花)と逢瀬を重ねていたことを知っている。
「だってわっちら、夫婦になりんしたゆえ」誰袖が胸元から取り出した証書には、蔦重が500両で誰袖を身請けを許す、と大文字屋市兵衛の名で記されていた。誰袖は死の床に伏せる市兵衛を無理やり起こして書かせたようである。あきれた蔦重をよそに、「500両…500両…500両」とつぶやく誰袖を残して、蔦重はその場を去った。「ああいうのが、大奥で毒盛ったりするんだろうな」女の情念の恐ろしさを垣間見た蔦重であった。
○「かわいいのにやってることがエグい」
注目された理由は、目的のためには手段を選ばない誰袖に、視聴者がドン引きしたと考えられる。
蔦重に猛烈アプローチをかけたり、花魁道中で堂々とした風格を見せつけたりと、その言動が何かと話題となる誰袖だが、今回は危篤の大文字屋市兵衛にムチを打って遺書を書かせるという暴挙に出た。
振り切った誰袖の行動にSNSでは、「誰袖ちゃん、かぼちゃさまの寿命短くしてない?」「かわいいのにやってることがエグい」「強引すぎて笑えるけど笑えない」といったコメントが集まった。また、「これ真田丸でも何回か見たやり方だ…」「石田三成みたいな真似してるやん」と、2016年の大河ドラマ『真田丸』の豊臣秀吉に遺言を書かせるシーンを思い出した視聴者も多かったようだ。
突然背後から抱きついてきた誰袖を、「お稲荷さんの境内でこんな!」と蔦重はたしなめたが、実は九郎助稲荷は、五穀豊穣、諸願成就のほかに縁結びのご利益もあるといわれており、女性の様々な願いをかなえてくれると伝えられていた。なので誰袖の今回の振る舞いは、むしろ理にかなったものであると言える。
吉原でもっとも下級の河岸見世から一代で吉原有数の大店へとのし上がった市兵衛だが、惜しくも今回で退場となった。史実では大文字屋は市兵衛の姪・まさを妻に迎え養子となった二代目・市兵衛が後を継いだ。天明期に狂歌が流行すると、狂名「加保茶元成」を名乗り、蔦屋重三郎「蔦唐丸」、扇屋宇右衛門(山路和弘)「棟上高見」、りつ(安達祐実)の夫である大黒屋庄六「俵小槌」とともに吉原連を結成し、自ら主宰として、逍遥楼と名付けた別宅で狂歌会を催した。歌集として『上餡集』を残している。また、初代は園芸を好んだが、二代目は古銭の収集・鑑定家として有名だった。
●「100年先の江戸」という想定外の案思が誕生
2番目に注目されたのは20時23分で、注目度77.0%。蔦重一派が昼夜を問わずブレインストーミングを行うシーンだ。
鱗形屋の没落によって鶴屋に移籍した恋川春町は、鶴屋喜右衛門(風間俊介)とそりがあわず悩んでいた。紆余曲折の末、春町を耕書堂に移すため、蔦重と鱗形屋孫兵衛は、春町が書きたくなるような案思をともに考えることになる。蔦重は朋誠堂喜三二(尾美としのり)をはじめ、きく(かたせ梨乃さん)やりつ、志水燕十(加藤虎ノ介)など多くの仲間たちと思案を重ねるが、青本が世にあふれているこのご時世に、誰も使っていない案思というのはなかなか見つかるものではなかった。
あきらめの雰囲気が漂い始めたその時、「あのさいっそ、絵から考えるってなぁねえの?」と、喜多川歌麿(染谷将太)が口走った。歌麿が詳しく説明すると、「それだ!」と一同は口をそろえて膝を打つ。「100年先の江戸」という想定外の案思が生まれた瞬間であった。
○「編集会議マジで楽しそう」
このシーンは、耕書堂のミーティングからどのような案思が飛び出すのか、視聴者の注目が集まったと考えられる。
仕事にこだわりのある春町を鶴屋から引き抜くには、春町が書きたいと思える案思を土産にするしかなかった。そこで蔦重は、アイデア出しため関係者を集めてミーティングを行ったが、このミーティングは和気あいあいとみんなが建設的な意見を述べ合う理想的なものだった。
SNSでは、「『それだ!』がめちゃくちゃ楽しそう」「編集会議マジで楽しそう」「色んな立場の人たちがいるおかげで創作にはいい環境だな」と、楽しそうな職場をうらやむコメントが集まった。
どさくさに紛れて北川豊章改め志水燕十も取り込んでいるあたり、さすが蔦重。燕十は歌麿をゴーストとして扱うなどしていたため、視聴者のイメージはあまり良くないと推察されるが、燕十はその名が示すとおり、鳥山石燕(片岡鶴太郎)の弟子だ。春町も石燕の弟子であるため、今回のミーティングの参加者としては適任と言える。
そんな志水燕十を演じる加藤虎ノ介は、アルファエージェンシーに所属する大阪府出身の50歳。母方の先祖は、戦国時代に加藤清正に敗れた堺の武将・小西行長に当たるそうだ(なぜ芸名が敵方を連想させるものなのか、とても興味深いです)。大河ドラマは2010年『龍馬伝』、2012年『平清盛』、2013年『八重の桜』に続いて4度目の出演となる。
恋川春町は本名を倉橋格という。駿河小島藩・滝脇松平家の年寄本役を務め、その石高は最終的には120石だった。文・挿絵ともに自らしたためた黄表紙を多数残し、他の作家の洒落本や滑稽本などの挿絵を提供している。歌麿や燕十と同じく鳥山石燕に浮世絵を学び、勝川春章をリスペクトしていたようだ。また、朋誠堂喜三二とは公私ともに仲が良く、再婚相手は喜三二に紹介してもらったと伝わる。
●『菊寿草』が界隈で話題に
3番目に注目されたシーンは20時42分で、注目度75.1%。大田南畝(桐谷健太)の『菊寿草』が界隈で話題となるシーンだ。
蔦重が耕書堂に帰ると、次郎兵衛(中村蒼)とりつ、歌麿の3人が勢いよく蔦重に駆け寄ってきた。そして、興奮した様子の次郎兵衛は、蔦重に一冊の本を手渡してきた。本の表紙には『菊寿草』と書かれている。『菊寿草』は、平賀源内(安田顕)にその才能を激賞されたという南畝が、今年に出版された青本を全て読み、番付にしたものであった。
『菊寿草』によると、朋誠堂喜三ニの『見徳一炊夢』が極上上吉、つまりもっとも面白いと評価されていた。蔦重が目を見開いてその部分を読んでいると、当の喜三ニが恋川春町とともに姿を現した。今度は蔦重が喜三ニに駆け寄り『菊寿草』を手渡すと、「おめでとうごぜえやす!」と喜色満面の笑みを浮かべて、喜三ニの快挙を喜んだ。
○どの時代も人はランキング好き
ここは、突如舞い込んだ吉報に視聴者の関心が集まったと考えられる。
評判はいいが目立たない喜三ニの『見徳一炊夢』だが、思わぬ形で高評価を受けた。番付で下にされた鶴屋と西村屋はとても不快そうだった。SNSでは、「喜三次さん、今でいう本屋大賞を取ったみたいなもんかな」「人は昔からランキングが好きなんだね。どの時代もやっていること変わらないな」「大田南畝に評価されるっていうのがすごいってのが伝わってくるな」と、喜三ニと耕書堂の躍進が祝福されている。
『菊寿草』の作者である大田南畝は相当の大物文化人だった。1749(寛延2)年生まれの南畝は蔦重の1つ年上で、本職は勘定所のエリート官僚。貧しい下級武士の出身だったが、幼いころから学問や文筆に秀でており、15歳の頃に江戸六歌仙の1人だった儒学者であり狂歌師でもあった内山賀邸に師事する。借金を重ねつつも勉学に励み、後に朱楽菅江、山崎景基とともに狂歌三大家と呼ばれた。
19歳の頃、同門の平秩東作(木村了)の後押しもあり、1767(明和4)年に初の狂詩集『寝惚先生文集』を刊行している。その際、平賀源内が狂歌師・風来山人として序文を寄せている。南畝の優秀さを示すエピソードとして、松平定信(寺田心)の寛政の改革で、旗本・御家人とその子弟を対象に朱子学の知識を試す学問吟味という試験が行われた際、南畝は将軍に謁見する資格のない御目見得以下の身分の中で首席で合格するという成績を残している。次回、初登場を果たす大田南畝だが、果たして注目されたシーンにランクインするのだろうか。
●家治と意次、蔦重と孫兵衛の関係に注目
第19話「鱗の置き土産」では、1780(安永9)年から1781(天明元)年の様子が描かれた。市中では人気作家である恋川春町の争奪戦が行われ、幕府内では次期将軍をめぐって暗闘が繰り広げられた。
注目度トップ3以外の見どころとしては、十代将軍・徳川家治(眞島秀和)と田沼意次(渡辺謙)の強い主従の絆が描かれたシーンが挙げられる。知保の方(高梨臨)の狂言をきっかけに、家治は実子をあきらめ他家の子を次期将軍にと決意するが、その思いには別の理由もあった。
「十代家治は、凡庸なる将軍であった。しかし1つだけ素晴らしいことをした。それは田沼主殿頭を守ったことだ。主殿がおらねば今日の繁栄はなかったのだから。余は、後の世にそう評されたい」と胸の内を打ち明ける家治と、「田沼主殿頭意次、この身を捧げ終生上様にお仕えしとう存じます!」と涙ながらに誓う意次に、「どれだけ家治が父・家重と同様に意次を信頼していたかが分かってよかった」「田沼意次、男泣き。忠義が報われるってこういう事だよね」「家基も武元も失ったけど、意次だけは失いたくなかったんだろうな…」と、SNSでは2人の関係性に視聴者のコメントが集まった。家治のこの決心は今後にどのような影響をもたらすのだろうか。
また、蔦重と鱗形屋孫兵衛の関係にも注目が集まっている。須原屋市兵衛(里見浩太朗)の仲立ちもあり、鶴屋で心が折れかかっている恋川春町を耕書堂に引き抜くため、再び手を組むこととなった蔦重と孫兵衛。かつてのよきビジネスパートナーだった2人は、あうんの呼吸で春町を耕書堂に移らせることに成功し、過去のわだかまりも水に流すことができた。さらに孫兵衛は、蔦重に『塩売文太物語』の版木を贈るが、これは蔦重にとって思い入れの深いシロモノだった。
SNSでは、「鱗形屋さんと蔦重、わだかまりが解けただけでなく、そんな縁があったなんて…こっちも泣けてきたよ」「今でも初めて自分で買った漫画とかCDとかゲームとかって思い出に残るもんね」といった、2人をつなぐメモリアルアイテムにコメントが寄せられている。
きょう25日に放送される第20話「寝惚けて候」では、蔦重が『菊寿草』の作者である大田南畝を訪ねる。一方、幕府では一橋治済(生田斗真)の長男・豊千代を次期将軍とする動きが出てくる。
REVISIO 独自開発した人体認識センサー搭載の調査機器を一般家庭のテレビに設置し、「テレビの前にいる人は誰で、その人が画面をきちんと見ているか」がわかる視聴データを取得。広告主・広告会社・放送局など国内累計200社以上のクライアントに視聴分析サービスを提供している。本記事で使用した指標「注目度」は、テレビの前にいる人のうち、画面に視線を向けていた人の割合を表したもので、シーンにくぎづけになっている度合いを示す。 この著者の記事一覧はこちら

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