7年ぶりの博多座 中村勘九郎、中村七之助の兄弟で主役「六月博多座大歌舞伎」
2025年5月30日(金)13時12分 スポーツニッポン
6月4日から福岡市の博多座で「六月博多座大歌舞伎」が行われる。中村勘九郎(43)と中村七之助(42)の兄弟が7年ぶりに博多座で主役を張る。2人がともに舞台へ立つ演目に注目しながら、価格設定や中村屋を盛り上げる思いを語った。
7年ぶりの公演にかける思いは価格設定に表れている。例年の博多座歌舞伎公演より500円安いのだ。一番高いA席が1万6500円、安い席はC席の5500円。世間が感じる敷居の高さを何とかしたい出演者、劇場側の思いが一致。勘九郎は「劇場側の心意気に応えるためにも、お客さまに見に来て良かったと思える作品をやりたい」と自然と力が入っている。
12年に亡くなった父・勘三郎のもとで幼いころから2人は修業を積んできた。だからこそ、今でもお互いを思う気持ちは特別だ。勘九郎は「あうん、というか。語らずとも分かる関係性というのは兄弟だからではなく、同じ方向を向いた役者同士だからできる」と熱く言う。七之助も「長年、いろんな役で歩んできたからうれしい」と笑みを浮かべた。
2人が一緒に出る演目に注目した。昼の部の「福叶神恋噺(ふくかなうかみのこいばな)」は上方落語「貧乏神」を題材にした新作歌舞伎。昨年5月の初演が好評を得て再演される。七之助は「おびん」という貧乏神の役。「頭を空っぽにして見て」と呼びかけた。勘九郎は貧乏神の兄貴分にあたる「すかんぴん」を演じる。「みんなが避けるぐらい汚くやれたら」と腕まくりした。
夜の部は「怪談乳房榎」だ。幕末から明治にかけて活躍した落語家・三遊亭円朝がつくった怪談。勘九郎は父から学んだことで令和に語り継げている。自身の三役早替わりが見どころで「ただの着せ替えショーにしてはいけない」と意識する。着物とかつらをチェンジするため舞台裏へとにかく走る。大事なのは裏方さんとの呼吸だとし「40代になって初めてやるので半年ぐらい前からジムに通っています」と明かした。七之助は美貌の妻とされるお関を演じる。出番は少ないが「お芝居の肝になる」と語った。
父が亡くなって昨年十三回忌の節目を迎えた。コロナ禍の影響で一度離れた客足を呼び戻す作業を2人が中心となって引っ張っている。勘九郎は「中村屋を見に行けば間違いないと日々努力したい。来て良かったと思ってもらえる作品を続けていくことが一生の目標」と目を輝かせながら話した。決意は熱演に変える。(杉浦 友樹)