【レビュー】『007』『キングスマン』好きはたまらない!? いまこそ家族で観たい『スパイ in デンジャー』

2020年7月9日(木)17時0分 シネマカフェ

『スパイ in デンジャー』(C) 2020 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

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ウィル・スミスとトム・ホランドというビッグネームの声の共演もあり、『アイス・エイジ』シリーズで知られるブルースカイ・スタジオの最新作『スパイ in デンジャー』が久々に日本で(他社のアニメ作品と同様に)劇場公開されることを期待していたファンは多いはず。

全米では2019年のクリスマスシーズンに公開され、当初は5月22日(金)公開予定だった今作は、コロナ禍転じて福と成すということか、スタートしたばかりのディズニー公式動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」にて配信公開されることになった。

息つく暇もないスピード感ある展開にスパイ・アクションやガジェットが満載で、102分があっという間。もちろん映画館で楽しめたならベストだったとは思うが、配信だからこそ、大人も子どもも気軽に観てほしい魅力が詰まっている。

ウィル&トムホがイメージそのまま、アニメの姿に

何と言っても、最高にスタイリッシュなエリートスパイのランス・スターリングと、奇想天外なガジェットを開発する若き発明家ウォルター・ベケットが、アニメーションのキャラクターながら、もうウィルとトムホにしか見えないハマりっぷり。

ウィルといえば、実写版『アラジン』でも持ち前の軽妙なトークとウィットに富んだユーモアでジーニーに新たな魅力を加え、同作の大ヒットにひと役買ったが、今作では“ハトになっても”その魅力が全開。アニメーションの声を担当するのは、2004年のドリームワークス製作『シャーク・テイル』以来、約15年ぶりとはいえ、キャラクター設定やストーリーなど企画段階から関わっていただけある。


まるでウィルの分身のようなキャラクター:ランスがジェームズ・ボンドやイーサン・ハントさながらにカッコいいエージェントとして、しかも“アガる”ラップミュージックにノって活躍するのだから楽しくないわけがない。また、日本びいきのウィルだけに、冒頭を飾るミッションも“岩手県”のとある怪しい五重塔からスタート、「こんにちは」と日本語の挨拶も飛び出し、ヤクザのキムラ(マシ・オカ)と対決する。

一方、そのエリートスパイを、あろうことかハトの姿に変えてしまう珍薬を開発するウォルター役は、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のピーター・パーカー/スパイダーマンとしてお馴染みのトム。ヒーローにして天才科学者トニー・スターク/アイアンマンを師と仰ぐピーター同様、今作でもずば抜けた発想力と頭脳を持つものの、周囲からは“変人”と呼ばれてしまうキャラ。先日解禁されたインタビュー映像でも、また“スーパーナード”の役と照れくさそうに自己紹介していたトムが印象的だった。


彼が演じるウォルターは、15歳で世界最高レベルの名門マサチューセッツ工科大学(MIT)を卒業した超逸材だ。『007』でいえばQ、『ミッション:インポッシブル』シリーズではベンジーのように、ガジェット開発や技術担当としてハトになってしまったランスをサポートする。ありがちなキャラといえばそうだが、彼の実験室にはK-POPガールズグループの女王「TWICE」が流れ、作業の合間には韓流ドラマで涙する、という時流を読んだ(?)今時の若者である点が面白い。韓流ドラマはちょっとした伏線にもなっているので要チェック。

スパイ・アクション映画ファンも必見のワケ

この凸凹なコンビが世界中を巻き込むピンチを前にチームを組み、ドローン型のアサシンロボや巧みな変装ギミックを持つ強敵キリアン(ベン・メンデルソーン)に立ち向かっていく。2人の関係性は『コードネーム U.N.C.L.E.』のナポレオン・ソロとイリヤ・クリヤキンのように水と油で、『キングスマン』のハリーとエグジーのような師弟関係ともいえ、そんな彼らが次第にチームらしくなっていく点も見どころ。


その冒険の物語は、オープニングからして『ミッション:インポッシブル』のごとく導火線で幕を開け、タイトルバックのキャラクターのシルエットは60年代の『007』映画のよう。カーチェイスが白熱するあまり、車が階段を飛び跳ねるシーンもどこかで観たような…。

ウィル演じるランスがペン型ガジェットを手にすれば、『メン・イン・ブラック』のニューラライザーがつい浮かんでくるし、ターゲットを執拗に追い続けるドローンやヴェネチアを舞台にした大アクションはまるで『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』! そんなオマージュが随所にあり、さらにアニメーションだからこそ描けるスケール感や定石をくつがえす展開が味付けをする。


また、同じくブルースカイ・スタジオの『ブルー』シリーズでは絶滅危惧種のインコが主人公だったが、今回も細やかな観察やリサーチから生まれたであろうハトの習性や動きの描写はデフォルメされながらもリアルで、それをウィルが演じるからこそ余計にコミカル。そもそもハトはどんな街にも溶け込めるため、スパイの隠密行動には最適なのかも!?

これまで見たことのないスパイ・ガジェットが伝えるもの

有能なスパイゆえに、“群れない主義”だったランス。だが、ハトとなってしまっては“得意分野”がまるで違ってくる。優れたテック担当のウォルターが共にいて1つのチームとなり、ときにはその魅力で“ハト仲間”さえも惹きつけるからこそ、強敵に立ち向かうことができるのだ。


今作を、世代を問わず、できれば家族揃って観てほしいと思うのは、このランスとウォルターのようにそれぞれの違い、長所や弱みを受け入れることの大切さを描いているから。少年時代のウォルターが母親と語り合ったように、あくまでも平和的な技術で「世界を変える」という彼の科学者としての信念を通じて、寛容さや相互理解、連帯というテーマが浮かび上がってくるからだ。


目には目を、火には火を、拳には拳を…やられたらやり返し、暴力に対してさらなる暴力を重ねることは果たしてどうなのか? アロマを使った正直ガスやキラキラなラメと子猫の癒しのパウダーなど、天才発明家ウォルターが作り出す“人を傷つけない”ガジェットの数々は、例えば「Black Lives Matter」や香港の付箋の壁「レノン・ウォール」のような非暴力の抗議の拡散をも思い起こさせる。

『スパイ in デンジャー』は7月10日(金)よりディズニープラスにて独占公開。

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