「光る君へ」第三十四回「目覚め」一条天皇との関係に悩む中宮・彰子に訪れた変化の兆し【大河ドラマコラム】
2024年9月14日(土)10時28分 エンタメOVO
この回冒頭、大和の国司とのいさかいを発端に、都へ押し寄せてきた興福寺の僧侶たちが起こした騒動を避けるため、主人公・まひろ(吉高由里子)の提案によって一条天皇の元に避難した彰子。だがその際、相変わらず一条天皇への畏れからか、顔をまともに見ることができず、「顔をあげよ。そなたは朕の中宮である。こういうときこそ、胸を張っておらねばならぬ」と窘められる。このシーンの直前、彰子と敦康親王(渡邉櫂)の仲むつまじい様子を描いていたことが、より一条天皇との溝を際立たせる。
この様子については、彰子の父・藤原道長(柄本佑)から一条天皇との仲について尋ねられたまひろが、「おそれながら、中宮様の御心が、帝にお開きにならないと、前には進まぬと存じます」と語っている。
さらに前回、「帝がお読みになるものを、私も読みたい」と興味を示した彰子だが、この回、まひろの局を訪れ、「そなたの物語だが、面白さが分からぬ」と戸惑いを見せる。その一方で、一条天皇は「そなたの物語は、朕に真っすぐ語り掛けてくる」とまひろに告げ、2人の溝の深さはここでも際立つ。
こうして一条天皇との溝を埋められずにいた彰子だが、その関係に変化の兆しが訪れたのは、道長が開催した“曲水の宴”のとき。突然の雨に、宴を中断して屋内に避難した道長が、藤原斉信(金田哲)や藤原行成(渡辺大知)らと打ち解けた様子で会話する姿を隣室から見ていた彰子は、再開された宴の最中、まひろに「さっき、父上が心からお笑いになるのを見て、びっくりした」と打ち明ける。これにまひろが「殿御はみな、かわいいものでございます」と答えると、彰子はさらに「帝も?」と尋ねる。そしてまひろは、次のように答える。
「帝も殿御におわします。先ほどご覧になった公卿たちと、そんなにお変わりないように存じますが。帝のお顔をしっかりご覧になって、お話申し上げなされたらよろしいと存じます」
この言葉に、微妙にうなずくようなしぐさを見せる彰子。彰子の中で何らかの変化が起きた様子がうかがえた。それがどんなものなのか、まだはっきりしないが、次回予告では彰子が「お慕いしております」と感情をあらわにする今までにない姿も見られた。それがどのような展開の中で見られるのか、気になるところ。この一連の流れの中に、自然な形でまひろが関わりつつ進んでいく展開は、主人公らしい存在感もしっかり表れていて鮮やかだった。
さらにこの回ラストでは、道長が不吉な出来事が続く都の安寧と彰子の懐妊を願って吉野の金峰山に祈願に向かい、その留守の間、藤原伊周(三浦翔平)が何やら陰謀をたくらむ様子も見られた。その行方と併せ、変化の兆しが訪れた彰子の今後が気になる第三十四回だった。
(井上健一)