【インタビュー】夏帆、「私にしか演じられない役」を経て受け入れた“ありのままの自分”

10月10日(木)12時0分 シネマカフェ

夏帆『ブルーアワーにぶっ飛ばす』/photo:Jumpei Yamada

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ありのままの自分を受け入れることは、簡単なようで難しい。理想もありプライドもある。女優の夏帆は、最新作映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』の撮影を通して、少し自分のことを「認めてもいいのかな」と受け入れられるようになったという——。

いままでで一番やりたいと思えた役

本作で夏帆さんが演じた砂田は、自称・売れっ子CMディレクターで、理解ある優しい夫もおり、字面的には満ち足りた人生のように感じられるが、その実は、自らを偽り“大人”のふりをして負の感情を溜め込み、心は荒れすさんでいる。どうにかしたくても、日常は止まらない。ときばかり過ぎていく焦り、葛藤——「このままでいいのか」。

「この映画は、時間に対する向き合い方を描いている作品でもあります。私自身、10代のころから仕事をしていて、時が過ぎていくなかで、周囲がどんどん変化していくのに、そこに気持ちが追いつけないと感じることもありました。それでも時間は流れていくし、生きていかなければならない。立ち止まることも必要ですが、立ち止まったままでいると、いつの間にか自分だけ置いてけぼりになってしまう。砂田にもそういう葛藤があり、演じていて共感する部分は多かったです」。


いまの夏帆さんの気持ちにリンクするキャラクター、そして世界観。メガホンをとった女流監督・箱田優子は、脚本のほかに、どういうことを映画にしたいのか、なぜ夏帆さんにオファーをしたのかを手紙にしたためた。夏帆さんは「その手紙を読んで腑に落ちました」と語ると「いままで一番やりたいと思えた役に出会えた」と出演を熱望した。

本作では、大きな出来事や事件が起こるわけではない。言ってみれば、砂田が地元に帰って、そして戻ってくる物語。狭い範囲で砂田は揺れ動き、ビフォアーアフターの心の動きも繊細だ。どのシーンも、しっかり砂田に向き合い、丁寧に感情を表現することが求められる。それだけに、些細なことでも常に箱田監督と共有し、一緒に役を作っていく感覚を味わえたことは夏帆さんにとって、かけがえのない現場体験だったという。「一緒に走ってゴールに向かっていく作業は、非常に心地よく楽しかった」と笑顔を見せる。


シム・ウンギョンはすごい女優
なかなか感情を開放できない砂田に、常にインパクトを与える存在が、シム・ウンギョンさん演じる清浦だ。ある意味で、砂田とは真逆の立ち位置で、物語を大きく動かす役割を演じる。

「ウンギョンちゃんとはお芝居のことはあまり話をしなかったのですが、共演してすごい女優さんだなと思いました。感受性が豊かで、役への理解度も深い。自由で伸びやかなのですが、ただ自由にやっているわけでもなく、そこにはしっかりとした計算もあるんです」。


母国語ではないセリフ回しであるにも関わらず、瞬発力のある演技も、夏帆さんを驚かせた。「アドリブもバンバン入れてくるんです。それが物語のなかでしっかり活きているので、私自身もウンギョンちゃんの立ち振る舞いに乗せられる部分がありました。繊細さと大胆さのバランスもすごい」と称賛の言葉が止まらない。


ありのままの自分を受け入れる
そんなウンギョンさん演じる清浦が、砂田の言動に「そういうのダサいっすよ」と発言するシーンがある。しかし、そのダサさを笑い飛ばし「最高!」と肯定できることが、人生を豊かにすることもある。

「つい最近までどうしても理想を高く持ってしまい、そこにたどり着けない自分を受け入れられなかったのですが、どうやったってできないことはある。それをダサいと思わずに、受け入れられるようになることで、見えてくることはあると思います。ここ1年ぐらいでやっとそういう考え方になってきました」。


こうした夏帆さん自身の考え方の変化に大きな影響を与えたのが本作との出会いだ。完成披露試写会で夏帆さんは「いまの等身大の自分が出ている」と話す一方で「いまの私がこれなんだ」と落ち込んでしまったというエピソードを話していた。しかし「この作品と出会ってから、うまくできない自分を受け入れようと思い始めたんです。もちろんグチグチと言ってしまうこともありますが、違う視点で物事を見れば見えてくるものも変わってくるし、意外と楽しめるのかなと」と考えが変わった。いままでは自分のことが「嫌いだった」というが、最近は「まあまあ、頑張っているんじゃないかな」と心を開放できているという。


それもこれも、いままでやってきたことの積み重ねによって「心からやりたいと思える作品」に出会えたことで、夏帆さんが進んできた道が「間違っていなかったんだ」と思えたことが大きいようだ。「女優の仕事をするなかで、いろいろ悔しいことも辛い思いもしてきましたし、『果たしてこっちでいいのかな』と迷うことはいっぱいありました。でも諦めずに続けたからこそ、この作品に出合えた。この仕事を続けてよかったなと思えることは幸せなことです」。

無駄な武装がなくなり、よりシンプルに…30代に入るのが楽しみ!
「20代後半に差し掛かった私にしか演じられない役」と砂田というキャラクターを位置づけた夏帆さん。それだけに「この作品を終えて、次のステージにいかなければいけない」というプレッシャーもひしひしと感じている。積み重ねることでしか、次に続かないということは、10年以上の経験のなかで敏感に感じ取っている。


「私は怠け癖があるので、日々怠らずに向き合っていかなければいけないですね」と苦笑いを浮かべていたが、30代、40代と“年齢を重ねる”ことは怖さもあるが「20代前半までは、無駄なもので武装をしていたのですが、いまはシンプルになってきました。自分で言うのはどうかと思いますが、肩の力が抜けてきた感じがして、30代に入るのが楽しみなんです。もっと自由になる気がして…」と未来に思いを馳せる。

“年をとる”という言葉にはマイナスなイメージを持つ人が多いかもしれないが、夏帆さんを見ていると“年を重ねる”ことには、大いなる希望が感じられる。

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