『光る君へ』太閤・藤原道長(柄本佑)の最期に視聴者最注目 最終話画面注視データを分析

2024年12月19日(木)10時29分 マイナビニュース


●「生きることは…もうよい…」
テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、15日に放送されたNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合 毎週日曜20:00〜ほか)の最終話「物語の先に」の視聴者分析をまとめた。
○物語への興味を、生に執着するきっかけに
最も注目されたのは20時43〜45分で、注目度87.9%。太閤・藤原道長(柄本佑)の最期のシーンだ。
道長は死の床にあった。まひろ(吉高由里子)は以前、道長から褒美として賜った扇を手に、道長に新たな物語を読み聞かせようとその枕元にいた。「昔あるところに、三郎という男子がおりました」物語の主人公は幼い頃の道長のようだ。道長の目が大きく開いた。「兄が2人おりましたが、貧しい暮らしに耐えられず、2人とも家を飛び出してしまいました。父はすでに死んでおり、母1人子1人で暮らしていました」続きが気になるのか道長の目に少しの生気が戻る。「続きはまた明日」そこでまひろは語りをやめた。道長の物語への興味を、生に執着するきっかけとしたいからだ。道長はかすかにうなずいた。
次の日の夜。「三郎はこれまでに味わったことのない喜びを感じていました。散楽の者たちは都を出ていくことに決めました」道長は目を閉じて静かに聞いている。直秀(毎熊克哉)のことを思い出しているのだろうか。「続きはまた明日」道長はうなずいた。そしてまた次の日の夜。「雪か…」道長がつぶやく。あまりにも弱々しい声は、もはや別人のようだ。「お寒うございますか?」「生きることは…もうよい…」道長の言葉からは気力というものがまるで感じられなかった。まひろの頬に涙がながれた。道長はみずからの死期を悟っている。
まひろは涙と悲しみをこらえて、再び語り始める。「川のほとりで出会った娘は名を名乗らずに去って行きました」道長の興味を少しでも引かなければ。「三郎がそっと手を差し出すとなんと、その鳥が手のひらに乗ってきたのです」道長の顔を見ると、その目は閉じられていた。いつの間にか眠ってしまったようだ。「続きはまた明日」まひろは顔を近づけると道長の目がわずかに開いた。まひろは道長との永遠の別れがもうすぐそこまで近づいていると悟った。
さらに夜も更けたころ、月と雪が闇を照らす中、道長の嫡妻・源倫子(黒木華)が道長の寝室に入った。部屋には道長のほかに誰もいない。倫子は道長の左手が布団の外に出ていることに気づいた。その手は、小鳥が羽休めできるよう、甲を上に向けかたち作られている。倫子はその手を握ると、息をのんだ。まぶたを閉じた道長を見つめながら、両手でそっと布団に戻す。「殿…」道長はすでにこと切れていたのだ。朝方、まひろは自邸で筆をとっていたが、ふいに道長の声が聞こえた。「まひろ」まひろを呼ぶその声は、若かりしころの生気に満ちあふれた道長の声だった。まひろはその瞬間、道長がこの世から旅立っていったことを知った。
○「『千夜一夜物語』のようでグッときた」
注目された理由は、『光る君へ』の正真正銘のクライマックスに、視聴者の視線が「くぎづけ」となったに違いない。
まひろと道長の永遠の別れの時がとうとうやってきてしまった。1年をかけて丁寧に描かれてきた2人の50年間の軌跡がどのような終えんを迎えるのか、非常に多くの注目が集まった。
X(Twitter)では、「兄や甥を追い落とすように最高権力者となって、娘を道具にして地位を得たとささやかれた道長さまが、まひろちゃんと最期の時を過ごせたのは救いでしたね」「まひろが道長に語りかけるのが『千夜一夜物語』のようでグッときた」「まひろちゃんは最後の最後で道長さまではなく三郎くんと再開できたんだなって、物語を語る姿から感じました」「最初は紫式部と藤原道長が幼なじみで恋愛するなんて…と思っていたけど、毎週目が離せませんでした」と、2人の最後のシーンに感動したという多くの投稿が集まった。
実際の道長の最期は壮絶だったと伝わる。様々な合併症を引き起こし、目が見えず背中の腫れ物に苦しみ、厠にも行けず、苦しみながら亡くなったと記録が残っている。男性の平均寿命が33歳といわれていたこの時代で、62歳まで生きた道長はまずまずの長寿といえる。くしくも父・藤原兼家(段田安則)も62歳で亡くなった。夫婦とはなれなかったまひろと道長だったが、その絆は50年間、道長がこの世を去るまで続いた。川辺での偶然の出会いから始まった2人のストーリー。思い返せば様々な出来事があったが、ソウルメイトとして同じ時代を生きたまひろと道長の姿に、多くの視聴者が「くぎづけ」となった一年だったのではないだろうか。
●倫子がまひろに「殿に会ってやっておくれ」
2番目に注目されたのは20時32分で、注目度77.73%。倫子がまひろに、ただ死を待つだけの道長に会ってほしいと願うシーンだ。
「殿はもう、祈とうはいらぬ、生きることはもうよいと仰せなの。私が殿のために最後にできることは何かと考えていたらあなたの顔が浮かんだのよ」倫子からそう聞かされ、まひろは道長がまだかすかに生きていると知り、わずかだが気持ちを整理することができた。「北の方さまがお呼びでございます」と、百舌彦(本多力)がやってきたときには最悪の事態が頭をよぎったからだ。「殿に会ってやっておくれ。殿とあなたは、長い長いご縁でしょ。頼みます。どうか殿の魂をつなぎ止めておくれ」倫子がまひろに深く頭を下げた。
倫子は、夫とまひろが自分たちが出会うよりずっと前からのなじみであったことを、先日まひろから打ち明けられていた。そのことを聞かされた時は、さすがの倫子も嫉妬を覚えたが今はもう他に手段がない。道長の命を少しでも長くこの世に留めるためには、どうしても道長とまひろを会わせる必要があるのだ。倫子はさらに深く頭を垂れた。そんな倫子の決意がまひろの胸に強く響いた。まひろはうなずき、道長と会う決意を固めた。
○「最高権力者の嫡妻としての威厳あるお姿」
このシーンは、いよいよ大詰めをむかえる展開に、多くの視聴者のボルテージが高まったと考えられる。
死の淵にいる道長の延命のため、プライドをかなぐり捨ててまひろに道長と会ってほしいと願う一途な倫子に多くの共感が集まった。そして、刻一刻とせまるまひろと道長の今生の別れを視聴者は予感しながら、画面を注視したのではないだろうか。
SNSでは、「倫子さまが最後までかっこよかったところが、『光る君へ』で1番すきなところです」「倫子さまが道長くんの左手をそっと布団にもどす繊細な演出がなんともいえず好き」「心の底から愛する道長のために嫉妬もプライドも捨てて、まひろに頭を下げる倫子はすごい女性です」「1年間、高貴なお姫様の無邪気な愛らしさから、最高権力者の嫡妻としての威厳あるお姿までみせてくれた倫子さまが最高でした」といった、一途な賢母・倫子の生きざまに多くの称賛の声が上がった。
作中では「男の人生は妻で決まる」といったセリフが何度かあったが、倫子なくして道長の栄華はなかっただろう。倫子は四女・藤腹嬉子(瀧七海)と次女・藤原妍子(倉沢杏菜)に続き、道長にも先立たれたれたが、さらに1036(長元9)年には後一条天皇の中宮となった三女・威子も失ってしまう。1039(長暦3)年に出家し、その後、1053(天喜元)年に90歳で大往生を遂げた。そのなきがらは曾祖父である宇多天皇の建立した仁和寺に埋葬されたと伝わる。
黒木華演じる源倫子は、初登場時よりこれぞ平安貴族の姫とその外見と振る舞いが絶賛されてきた。まひろと道長の秘めた関係を知った時にどのような反応を見せるのか注目が集まっていたが、倫子は最後まで非常に優雅で度量の広い嫡妻として描かれた。そんな倫子は、『利家とまつ』のまつや、『功名が辻』の千代に並ぶ良妻と言っても過言ではない。
●2人になってしまったF4
3番目に注目されたシーンは20時49分で、注目度77.66%。2人になってしまったF4のシーンだ。
「道長と同じ日に逝くなんて行成(渡辺大知)は心底、道長にほれていたんだな。はは…」藤原公任(町田啓太)が手にしている盃に、往年の友である藤原斉信(はんにゃ.・金田哲)が酒を注ぐ。いつもであればここにいるはずの2人は今はもういない。そう、道長と行成だ。道長が逝ったその日の夜、行成も後を追うようにこの世を去った。行成にとって道長は、まさに人生そのものだったのだろう。夜から降っていた雪はもうやんでいた。
「あいつはまことに道長によく尽くしたよ」斉信は遠い昔に思いをはせる。「見し人の 亡くなりゆくを 聞くままに いとど深山 ぞさびしかりける」公任は2人をしのび歌を詠むと、「消え残る 頭の雪を 払いつつ 寂しき山を 思いやるかな」斉信も瞳をうるませ公任に続いた。2人は旅立った友の姿を胸に、手にした盃をささげた。あちらでも道長と行成は、主従の関係を結んでいるに違いないと。
○道長と行成を同時に失った公任と斉信に胸を痛める
ここは、2人が欠けたF4の姿に、視聴者の寂寥の念が集まったと考えられる。
いつも4人で仲よく酒を酌み交わしていた藤原のF4だが、同じ日に2人を失うことになった。若いころから苦楽をともにしてきた道長と行成を同時に失った公任と斉信の姿に、胸を痛めた視聴者は多かったのではないだろうか。
SNSでは、「公任さまと斉信さまが道長くんと行成くんを想って歌を詠むシーンが胸に響きました」「道長さま、行成くん。そして公任さまと斉信くん…泣いたなぁ、泣いたよ」「道長さまと行成くんは遠くへ行ってしまったけど、4人の友情は変わらないのが感じられてすてきでした」「道長さまと行成くんに歌を贈って献杯する公任さまと斉信さまが美しい。F4は永遠ですね」と、残されたF4の姿に心を打たれた視聴者のコメントが集まっている。
『光る君へ』の影響で、イケメンぞろいのF4はその知名度を全国区に押し上げた。特に町田啓太が演じる公任はすさまじい人気で、SNSを大いに盛り上げてくれた。すでに出家を果たした公任は、この後も政治に関わることはなかったが、有職故実と呼ばれる朝廷の儀式や風俗などを指導することはあったと伝わる。四納言の中では最後まで存命し、1041(長久2)年に76歳で亡くなった。斉信は出家することなく最後まで政に関わっていた。しかし、大臣任官がかなうことはなく、1035(長元8)年に病で苦しむことなく69歳で亡くなった。
清少納言は『枕草子』の中で、斉信を物語に登場するような当代きっての貴公子だと称賛している。これから半世紀くらいの間は、公任と斉信のパブリックイメージは町田と金田になるのではないだろうか。
●9人の人物がこの世を去る
最終話「物語の先に」では1020(寛仁4)年から1028(長元元)年の様子が描かれた。
太宰府から無事に帰還しつつましく余生を過ごすまひろと、とうとう死の床についた太閤・藤原道長を中心に、登場人物それぞれのその後が語られた。作中では8年という時間が流れ、前述の道長や藤原行成を含め9人の人物がこの世を去ることとなる。
道長の身内では、兄・藤原道綱(上地雄輔)が1020(寛仁4)年に、少しでいいから大臣をやってみたかったと、道長に職をねだる姿を最後に没した。その死はナレーションですら語られることはなかった。次いで、1025(万寿2)年に後朱雀天皇に入内した6女・藤原嬉子が親仁親王を出産した2日後に赤斑瘡(あかもがさ)で亡くなる様子が描かれ、さらに1027(万寿4)年には次女・藤原妍子、3男・藤原顕信(百瀬朔)とナレ死が続いた。
道長の後の左大臣・藤原顕光(宮川一朗太)は遡ること1021(治安元)年、ひっそりと(ナレーションもなしのパターン)亡くなっている。また、四納言がそろった宴の席では、1人老いを感じさせないふるまいを見せていた源俊賢(本田大輔)も1027(万寿4)年に亡くなっている。こちらもナレーションもなしのパターンだった。
道長と同年に没した人物としては、行成が注目されがちだが、同じ四納言である俊賢も実はこのタイミングで亡くなっていた。そしてもう1人、実はひっそりとこの世を去った人物がいる。それは乙丸(矢部太郎)の想い人・きぬ(蔵下穂波)。乙丸が仏像を彫っていたのはきぬの菩提を弔ってのことだった。乙丸がまひろに「どこまでもお供しとうございます」と訴えたのは、きぬを失ってしまったからだったのだ。
○なじみのない平安時代の認知度を高めた作品
注目度トップ3以外の見どころとしては、倫子に洗いざらい白状するまひろや、まひろが『源氏物語』の作者とは知らず、物語について熱く語る、後に『更級日記』で歴史に名を残す菅原孝標の娘・ちぐさ(吉柳咲良)が挙げられる。他に隠し事はないと聞かれ、娘・藤原賢子(南沙良)の父についても白状してしまうのではないかとヒヤヒヤした視聴者は多かったのではないだろうか。
当の賢子は母に似ず、恋愛マスターとしての才をいかんなく発揮している。その恋愛巧者ぶりは父とされる道長よりも、まひろの夫・藤原宣孝(佐々木蔵之介)のそれを受け継いでいるように思えるが、本当のことはまひろにしか分からない。
そして、確執を乗り越え、お互いの功績をたたえ笑い合うまひろとききょう(ファーストサマーウイカ)の姿も感慨深いものがあった。また、道長と行成の死を、涙を流しつつひとり『小右記』に書き記す藤原実資(ロバート・秋山竜次)、藤原北家御堂流の権力維持を最優先する太皇太后・藤原彰子(見上愛)も非常に印象的だった。
また、ラストシーンで登場した双寿丸(伊藤健太郎)は、関東で起きた「平忠常の乱」の鎮圧に向かったと思われる。双寿丸を見送ったまひろの「嵐が来るわ」というセリフで光る君へは締めくくられたが、このセリフで終わることは最初から決まっていたそうだから、第1話「約束の月」の開幕シーンでの安倍晴明のセリフ「雨が降るな」と対になっていると考えられる。
最後の最後まで話題に事欠かなかった『光る君へ』だが、現代人にはあまりなじみのなかった平安時代の認知度を高めたという意味で、とても意義のある大河ドラマだったのではないだろうか。来年の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』も、これまで取り上げられたことのない江戸時代中期の物語。きっと戦国や幕末にはない魅力に触れられることだろう。
REVISIO 独自開発した人体認識センサー搭載の調査機器を一般家庭のテレビに設置し、「テレビの前にいる人は誰で、その人が画面をきちんと見ているか」がわかる視聴データを取得。広告主・広告会社・放送局など国内累計200社以上のクライアントに視聴分析サービスを提供している。本記事で使用した指標「注目度」は、テレビの前にいる人のうち、画面に視線を向けていた人の割合を表したもので、シーンにくぎづけになっている度合いを示す。 この著者の記事一覧はこちら

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