テレビ屋の声 第94回 『クイズタイムリープ』生山太智氏、六大学野球副主将からテレビマンに…100本ノックの企画書に込める「スポーツへの恩返し」

2024年12月27日(金)6時0分 マイナビニュース


●第1弾は「思っていた以上の反響」
注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて“テレビ屋”と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。今回の“テレビ屋”は、日本テレビ系バラエティ特番『クイズタイムリープ』(29日22:00〜)企画・演出の生山太智氏だ。
“現代の出演者(タイムリーパー)”がAI技術を駆使して『クイズ世界は SHOW by ショーバイ!!』『マジカル頭脳パワー!!』といった名クイズ番組にタイムリープし、“放送当時のスタジオ出演者”に挑む同番組は、最新技術とノスタルジーの融合が大きな話題となり、8月に放送された第1弾がギャラクシー賞の月間賞を受賞。生山氏はスポーツ局の所属ながら、入社1年目から積極的にバラエティの企画を出し続けているが、そこにはどんな思いが込められているのか——。
○全寮制生活唯一の娯楽だったテレビ
——当連載に前回登場した放送作家の町田裕章さんが「自分やってる番組以外で今年見て面白いなと思ったのが、日テレの『クイズタイムリープ』ですね。5年前でも5年後でもできない今の時代にしか作れないバラエティって感じですごく好みの番組でした」とおっしゃっていました。
めちゃくちゃありがたいですね。『サンバリュ』というトライアル枠でギャラクシー賞(月間賞)を頂いたり、佐久間(宣行)さんがYouTubeで話してくれたり、藤井健太郎さんもツイートしてくれたりと、業界の先輩方たちから褒めていただく機会があったので、それに関しては思っていた以上の反響でした。
——今回の第2弾の収録後に劇団ひとりさんに話を聞いたら、第1弾の放送後、他局のスタッフさんに「あれどうやって撮ったの?」とすごい聞かれたとおっしゃってました。
ひとりさんは、第2弾の収録前に楽屋に挨拶しに行ったら、「ちょっと座ってよ。こんな反響があったよ」と教えてくれましたし、せいやさん(霜降り明星)や(ファーストサマー)ウイカさんもX(Twitter)で感想を投稿してくれて、演者の方々が前のめりにやってくれる姿を見ると、すごくうれしいです。
——生山さんに以前取材した際、明治大学の野球部で3年生時に大学日本一に輝いたことを伺いましたが、なぜテレビ業界を目指したのですか?
小学校から野球を始めていたのでテレビと触れる時間が比較的短くて、大学も全寮制だったんですが、その中での唯一の娯楽がテレビだったんです。朝5時から練習が始まるんですけど、昼の食堂にテレビがあって、いつも日テレがついていました。なのでそこで『ヒルナンデス!』を見て、午後練から夜間練までの間は『news every.』を見ていましたね。上級生になると自分の部屋にテレビが置けるので、疲れていて寝る前の30分しか見られないんですけど、そこで『月曜から夜ふかし』とか『(世界の果てまで)イッテQ!』とか、選りすぐりの番組を見て寝落ちしてました(笑)
そんな生活を送っていたのですが、卒業後にプロを目指すか、就職するかという迷いの時期があるんです。大学でも副キャプテンをやっていたのですが、間近でプロに声をかけてもらう選手を見ると自分は無理だなと思って。社会人野球に進んで都市対抗に出てからプロを目指すという道もあったのですが、就活という決断をしました。そこで、昔から巨人が好きで、野球中継をやってるテレビが自分が野球を始めるきっかけでしたし、『Going! Sports&News』の「亀梨和也ホームランプロジェクト」という亀梨さんがホームランを打つための極意を学ぶ企画があって、それを見て自分の練習を取り入れたりしていたので、スポーツの魅力や情報を伝えられるマスメディアという仕事をしてみたいと思ってテレビ業界を目指しました。
——六大学野球でバリバリやっていて、テレビ局に入った人はなかなかいないのではないでしょうか。パッと思い浮かぶのはフジテレビアナウンサーのヤマケン(山本賢太アナ)くらいです。
明治の3つ上に、フジテレビでバラエティをやってる大村昂平さんという方がいますが、結構まれだと思います。
——入社されて、早速志望通りのスポーツ局に配属されました。
最初は中継ではなく、ニュース班で『Going!』をやっていました。野球選手ネタの3分くらいのVTRを作らせてもらったのがスタートです。
——大学時代に映像編集とか、全然やってこなかったわけですよね。
全くやっていなかったので、本当にゼロからのスタートでした。明治からプロになった中で、中日の柳裕也選手やDeNAの佐野恵太選手が1年上だったので、そういうコネを使って密着させてもらう企画が最初は多かったと思います(笑)
○“昭和スタイル”で企画書を出しまくる
——1年目から、積極的に企画書を出していたのですか?
そうですね。『Going!』の企画書と編成に出す単発枠の企画書を、自分の中でノルマを決めて、1年目には編成に100本くらい出したと思います。明治の野球部って、球拾いとか草むしりとかもやる昭和スタイルだったんですよ。社会ってそういうものだと思っていたので、まずは「生山」という珍しい名字と名前を一致させるかが勝負だと。「生山ってめちゃくちゃ企画書出してくるな」と思わせておいて、フィードバックをもらいに行って「お前が生山か」って覚えてもらう作戦で、質より量を重視していました。
——やはりスポーツバラエティの企画を出すことが多かったのですか?
日テレにはスポーツバラエティの番組が比較的少ないなと思っていて、チャンスがあると思ったんです。この感覚は野球部の時から一緒で、ショートを守れる人が多いからセカンドも守れることをアピールするとか、組織の中で手薄なところにチャンスがあるという感覚で。
それと、スポーツ中継は好きな人しか見ないじゃないですか。でも、昔から『とんねるずのスポーツ王は俺だ!!』(テレビ朝日)とか、野球部はみんな見ていてスポーツを始めるきっかけをもらったので、そういう番組をやりたいと思って、スポーツバラエティの企画書をたくさん出していたんです。
——スポーツの間口を広げたいという思いからなんですね。
それと、大学スポーツの素晴らしさを体感したからこそ、メジャーにしたいという思いもあります。アメリカはすごく盛り上がっていますが、日本は文化として根付いていないので『Going!』のニュース項目でも落ちるんです。入社1年目のマイナーな自分がマイナーな競技を売り込んでも絶対取り上げてくれないから、そのためには自分の名前を売らなければいけない。名前を売るためには地上波で自分が企画した番組をやらなきゃいけないという逆算ですね。
——大谷翔平さんのマンダラシートのように、戦略を立てていたんですね。
結構そういうのが好きなんです。大学の野球部では、スポーツ推薦、付属校、一般入試と属性が分かれて、スポーツ推薦は『熱闘甲子園』(ABCテレビ)で取り上げられたような有名選手が来るので最初から練習に入れるんですけど、僕は付属校で球拾いから。これが悔しかったので、プロレベルの4年生の分析をめちゃくちゃして、2年生から試合に出してもらえるようになりました。そうやって、どうやったら自分が組織の一番底からレギュラーになれるかと考えるクセがついていると思います。
●スポーツ局出身のレジェンドDからの助言
——その努力が実って、入社3年目で『究極のスポーツ大戦! ブーストイ★スタジアム』(※)が通りました。
(※)…最新テクノロジーを駆使したスポーツ用具を使用した芸能人がアスリートと対決する番組。21年4月3日放送。
野球に育ててもらったので、野球の企画が通ったのが良かった反面、番組作りの難しさを痛感しました。今振り返ると、先輩たちのように番組の終盤までどう見せるかをロジカルに考える感覚がなくて、自分が面白いと思って見せたいものをつないでいくというやり方をしていたんです。そういう反省もあったのですが、やっぱり打席に立たないと見えない景色というのがすごくあるなと思ったので、あのタイミングで番組をやらせてもらえたことは、自分の中で大きかったです。
——最初は企画書で編成にご自身の名前を売っていましたが、番組になって放送されることで局内に名前が広がりますよね。
とはいえ土曜日の夕方の放送で見ていない人もいると思ったので、いろんな人にOAの映像データをメールで送っていました。当時の自分のフルスイングのフォームを見てもらう感覚で、めちゃくちゃ聞きに行きましたね。そうした中で、制作の大先輩のトシさん(高橋利之氏=『行列のできる相談所』など)にもフィードバックをもらいました。
——高橋さんとは面識があったのですか?
研修の時にちょっと挨拶していただいたのですが、『ブーストイ★スタジアム』の後に企画が通った『スポーツ漫画みてぇな話』(※)という番組がその前から放送されていて、その初回の後に電話を頂いたんです。「全部漫画にする発想はなかった。俺が3年目の時にできたかって言われたら絶対できてないからすげえわ」ってまず褒めていただいた後に、「俺らってテレビ屋だから、やっぱり抜け(決め)は映像だな」と言われて、当時3年目の自分には理解が追いつかなかったんですが、今見るとその通りだと思いますね。
(※)…スポーツ選手の知られざる「漫画みてぇな」エピソードを完全漫画化して紹介する番組。
——高橋さんはスポーツ局出身だったと思いますが、そこでシンパシーを感じる部分があるのでしょうか?
そう感じていただいていたらありがたいです。ただ、最初は急に知らない番号から「高橋です」ってかかってきて、どこの高橋さんか分からなくて(笑)。話しぶりが先輩っぽいなと思って、野球部にも先輩に高橋さんがたくさんいるのですが、話してるうちに「トシさんだ!」となって。それから、自分の番組がOAされると毎回電話を頂いています。収録にもいらっしゃって、『タイムリープ』の第1弾のときにも来てくださいました。すごい先輩がいつも気にかけてくれて本当にありがたいです。
——フィードバックをくれる高橋さんのほかに、バラエティの番組作りというのを教えてくれた方はどなたになりますか?
安島(隆、『たりないふたり』など)さんですね。最初に企画を出しまくっていた頃、それを選ぶ側の編成部の班長だったのですが、その後スポーツ局に異動されてきた初日に飛び込みで「いろいろ教えてください!」とお願いして、2日目から企画会議を一緒にやらせてもらいました。
それから2年くらい、レギュラーの『news zero』の企画をはじめ結構アドバイスを頂いて、『燃えろ!番狂わせスタジアム』(23年3月26日放送)という番組を一緒にやらせてもらったのですが、構成の決め方のロジックとか、具体的な話の運び方とかがちょっと衝撃で。安島さんの作り方を学べたのは、入社して7年の間ですごく大きかったです。
●第2弾は「放送当時の出演者との会話」を強化
——そして、『クイズタイムリープ』を企画されました。
スポーツ局が作るバラエティは名場面を紹介するアーカイブ番組が多いのですが、中にいると過去の映像を使っても「アーカイブ番組」と意識しないで作っているフシがあるんです。
——たしかに、スポーツの過去の映像は、選手一人ひとりに許諾を取ることもないですから。
そこで、「スポーツでもアーカイブに頼らない番組を作りたい」という思いで考えたアイデアが“タイムリープ”です。最初は過去vs今のスポーツ対戦ができないかと考えていました。
——そこからジャンルをクイズ番組にすることで『クイズタイムリープ』が成立しました。第1弾が8月に放送された後、すぐに第2弾が決まりましたよね。
OAが終わった翌週に、編成から「年末にやってほしいので、企画書をください」と言われて、プライム帯で放送するにあたってのアップデートをいろいろ盛り込んで提出しました。この番組は各局でできる技術でもあるので、早めに2回目をやっておこうという狙いがあるのではないかと推測しています(笑)
——どのようなアップデートを行っているのでしょうか。
制作に没頭してると、クイズと向き合わなきゃいけないし、当時の解答者との競い合いを大事にしていたのですが、反響を見ていると、「当時の出演者と会話してる!」と驚かれる感想がすごく多かったんです。前回マイナビニュースさんに取材していただいた時もそこを面白がってくださったので、やはり、「過去の出演者との共演など、タイムリープ自体を面白がることに間違いはないな…」と確信に変わりました。そこで、当時の出演者さんとの会話のラリーを可能にする形にしました。
——劇団ひとりさんは、前回は自分の言葉をパズルのようにパートにはめていく感じだったのに対し、今回はそこがフリーにできたとおっしゃっていました。
前回は当時の出演者とやり取りできる部分が限られていて、まるでドラマを撮るような感じになっていたので、そこのストレスを解消するのは今回かなり頑張ったポイントです。
——そうした部分においては、先輩からアドバイスをもらったのですか?
そうですね。安島さんとともに、番組作りを教えてもらっているのが『高校生クイズ』などクイズ番組をずっとやられている河野(雄平)さんなのですが、演者さんのストレスを少なくしながら、当時の出演者との会話をどうやって増築させるかという2本立ての課題のアドバイスをすごくもらって、収録までいろいろ考えていました。
その中で、クロマキーのスタジオに当時の出演者の方のパネルを用意して、演者さんの気持ちを上げる工夫をしたり、当時の司会者は未来を知らないので、「YouTuberのふくらPです」と自己紹介したら「YouTuber? 何かの生き物ですか?」って聞いたり、そうした楽しませ方も用意しました。
○「間違いを楽しむ」から「正解を面白がる」へ…クイズトレンドの変化
——前回は『クイズ世界は SHOW by ショーバイ!!』が登場したものの名物の「ミリオンスロット」がありませんでしたが、今回は導入されましたね。
五味(一男、『SHOW by ショーバイ!!』総合演出)さんから「ミリオンスロット」のこだわりをお聞きしたので、今回はぜひ使いたいと思いました。
前回も取り入れたかったのですが、流れの中で必然性がなかったので断念したんです。今回は年末ですし「懐かしいな」と思ってもらえるように、ミリオンスロットが必要になるストーリー作りを準備して入れさせてもらいました。
——これはどこかの放送回のミリオンスロットの画を切り抜いて使っているのですか?
新しく作ったほうが速いので、作りました(笑)。アーカイブ映像から「◯◯萬」の画面をそれぞれキャプチャしてスロットのシステムを作って、演者さんが押したタイミングでサブコン(副調整室)で押すという形です。
——ちゃんとガチのスロットになっているわけですね。ほかにも進化している点は、いかがでしょうか。
前回は1時間番組で今回は2時間なので、現代の出演者をチーム分けして長尺の団体戦にしました。それと、CGの規模感もアップしています。前回は、合成するのにウエストショットがやりやすいということで基本的に解答席に座る形にしたのですが、『アメリカ横断ウルトラクイズ』の後楽園球場での「◯×クイズ」というロケにも挑戦しています。
ロケにも応用できると、クイズ以外でもスポーツ対決だったり、それこそロケ番組だったりに落とし込めると思ったので、ここはどうしても頑張りたいなと思って技術チームとも入念な打ち合わせをして挑戦しました。
——収録を拝見した時点では仕上がりのイメージが湧かなかったので、放送上でどうなっているのか楽しみです。このように編集が一つの肝になる番組ですが、一番大変な作業は何ですか?
当時の解答者との会話を見せるために、アーカイブ素材から横の人に話しかけているシーンのベストを、ものすごく探しました(笑)
——それは大変ですね! AI音声で会話するのではなく。
より生身な肉声で行けると思ったところは、まずそこを頑張ろうと思っているんです。ただ、当時は解答者同士のトークのカットが短くて…。だからなかなか見つからなくて大変です(笑)
そういう作業をして感じたのは、新しく収録した映像も、過去のアーカイブと同じ素材の一つだということなんです。通常の番組収録は、ある程度決まった順番で決まったものを撮るという形だと思うのですが、『クイズタイムリープ』は収録も素材集めという認識。その集めた素材の中で新しい料理を作っていくという感覚が、この番組は新しいなと思って編集を進めています。
——今回は現代の出演者に、阿部亮平さんやふくらPさんなど、各局のクイズ番組で活躍する人たちが参加していますが、彼らが苦戦しているシーンが意外でした。
五味さんとミーティングさせていただいた時に、今は「正解を面白がる」クイズが増えてきている一方で、当時は「間違いを楽しむ作り方をしていた」というお話を聞いたんです。だから、いい意味で制作側と演者さんの“対決”で、誤答の面白さを引き出すことを大事にしようと思って作りました。そのため、今のクイズ番組で活躍される皆さんにとって、その違いの難しさがあったのかもしれないです。
——30年でクイズの文化が変わっているのが分かるというのも面白いですね。今回は、当時の解答者(レジェンドカード)の方がタイムリープして、過去の自分に声をかける場面もありますが、あそこは少しジーンとくるものがありました。
ベースとしては「懐かしい」があるのですが、仕上がりが「新鮮」になるようにするのをすごく意識しています。懐かしさはアーカイブ素材から出てくるので、仕上がりの新鮮さをどう注入していくかというのも、第2弾のテーマでした。そうした点で、今の自分と過去の自分が対戦するというところも意識したところですね。
——そして今回の収録ではミラクルが起こりましたね。
はい、サブコンの全員が立ち上がりました(笑)。河野さんには「入念な準備をしたからこそ奇跡が起こるんだ」と言っていただき、苦労が報われたと思いました。このミラクルはぜひ楽しみにしていただきたいです。
●バラエティ制作所属では思いつかない発想
——今後こういう番組を作っていきたいというものはありますか?
企画を考える時に、「今のテレビにしかできない番組」というのをいつも考えていて『クイズタイムリープ』も採択していただいて放送までできたのですが、やっぱりYouTubeや配信では不可能な、テレビの規模感でしかできないものを作っていきたいです。「テレビっていいな」と思ってくれる学生さんや10代の人たちを増やすことが、自分たちの使命だと思うんです。テレビ屋として、番組作りは自分好みの「作品」ではなく、多くの人に見てもらう「商品」にしなきゃいけないと思っているので、「テレビでしかできない商品をお届けする」ということに、忠実に頑張っていきたいと思います。
——やはりスポーツをテーマにしたバラエティ番組は、これからも作っていきたいという気持ちでしょうか。
そうですね、スポーツへの恩返しをしたいという思いはすごくあるので。スポーツ色100%の番組だとスポーツ好きの人しか見ないというのがあるので、今回の『クイズタイムリープ』ではできませんでしたが、バラエティチックな番組にスポーツ選手を呼んで、知らなかった競技を知ってもらうきっかけにしたいというのも、常に思っています。
——町田さんが、『アメトーーク!』の加地倫三さん(テレビ朝日)や、『VS嵐』の萬匠祐基さん(フジテレビ)など、スポーツ局出身で面白いバラエティを作る方が多い印象があるとおっしゃっていたのですが、ご自身としてはいかがですか?
もしかしたらですが、同期とかと話していて気づいたのは、バラエティ番組をフラットに見られているというのがあるのかもしれないですね。『クイズタイムリープ』は編成の方に、「バラエティ制作にいたら、許諾とか難しいと思って絶対無理だと思うから、こんな企画は思いつかない」と言われたんです。でも、自分がまだバラエティを視聴者感覚で見られる上に、スポーツ中継をやってる中で「このシステムを使えばできるかもしれない」と出した企画でした。ほかにも制作現場からしたら現実離れした企画書をいっぱい出していると思うのですが、そこはスポーツ局にいて良かったと思いますね。
それとスポーツに携わっていると、観戦してる人が「ここにこれだけ興味があるのか」とリアルに体感できるので、世の中の熱を敏感に感じ取るというのも意識しています。
○「面白い」の判断基準の感覚を視聴者と同じに
——ご自身が影響を受けた番組を1本挙げるとすると、何でしょうか?
僕、『水曜日のダウンタウン』(TBS)がめちゃくちゃ好きなんですよ。結構ド真ん中なものが好きで。それは、安島さんや河野さんと話していて、テレビを作る人はクリエイターだからこそ、好きな作品にも自分の色があったりするんですけど、トシさん(高橋利之氏)は自分の好きなもののド真ん中が視聴者のド真ん中にあるというんです。つまり、面白いという判断基準の感覚が視聴者寄りだと。だから自分の感覚もそうなることで、自分の面白いジャッジがマスに届くんじゃないかと思って、個人視聴率5%超える番組を全部見るようにしています。
そうやって見ていると、『水曜日のダウンタウン』ってやっぱりめちゃくちゃ面白い。(演出の)藤井健太郎さんにお会いしたことはないんですけど、皮肉なところがあって、悪の部分もうまく料理していて、スポーツ中継で根詰めた時、何か1本見ようとなったら『水ダウ』を選んでいます。これだけ若者が面白さに反応する番組をいつか作りたいなと、すごく思いますね。
——いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”を伺いたいのですが…
先ほどから名前を出させてもらっている安島さんです。スポーツ局で一緒になった初日に飛び込んだら、先ほどのトシさんの話から、安島さんは「昔の自分は、自分の面白いと世間の面白いが一致していないことに気づいた瞬間があったから、これを一致させる手法は生山に教えられると思う」と言ったんです。まずそれを後輩に言えることがすごいなと思ったのと、トシさんが“感覚”の方であるのに対して、安島さんはロジカルに説明して、日本語を操ってる感じがあるんですよ。
それはスタッフに対しても、「この人に落とし込むには、これくらいの話し方じゃないとダメだな」とか「この人には感覚で言っても伝わるな」とか、相手に合わせるんですよね。自分のクリエイティブな表現としての演出とともに、スタッフを演出する力もあるので、そこの日本語力を培われたルーツみたいなものがあれば聞いてみたいです。
次回の“テレビ屋”は…
元日本テレビ・安島隆氏

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