コロナ禁漁に縛られていた北朝鮮漁船、制限緩和で再び日本海へ

2023年1月5日(木)6時1分 デイリーNKジャパン

北朝鮮は、新型コロナウイルスのパンデミックが始まった2020年、国境封鎖と共に、漁船の出漁を禁止した。


これは「海水を通じてコロナが広がり、国内に持ち込まれかねない」という理由に加え、漁船が沖合で中国船と密輸を行っていることから、そこからコロナが持ち込まれることを恐れての措置と見られている。


これにより、国内で魚介類の価格が高騰。他の食料品や燃料の高騰を相まって、北朝鮮庶民を餓死寸前まで追い込んだ。当局は2021年下半期から部分的に漁船の出漁を認めるようになり、金正恩総書記がコロナとの戦いで「勝利宣言」をした昨年8月以降は、全面的に解除された。それにより、高騰していた魚介類の価格が下落していると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。


平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、平城市内の市場で売られている魚介類の価格がコロナ前と同等まで下落した。コロナ禍直前の2020年1月、ハタハタは1500〜2000北朝鮮ウォン、スケソウダラは2万北朝鮮ウォンで販売されていたが、最大非常防疫が宣言された翌月には、それぞれ1万6000〜1万8500北朝鮮ウォン、5万北朝鮮ウォンまで高騰したが、それが今では元の価格に戻った。(いずれも1キロの価格、1万北朝鮮ウォン=約170円)


咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋は、日本海に面した端川(タンチョン)市内の市場にカレイ、スケソウダラ、ハタハタ、ワカメなどが円滑に入荷しており、ほぼコロナ前の水準に戻ったと伝えた。


8月にコロナ対策が緩和されたことに加え、当局が水産事業所の運営を自主性に任せているのも大きいと、情報筋は指摘した。


咸鏡南道水産管理局傘下の端川市水産事業所の支配人たちは、コロナ対策の緩和と同時に、大型漁船を総動員して出漁させるようになった。


装備と資金、燃料が国から十分に供給されず、思うように出漁できていなかったが、トンジュ(金主、ニューリッチ)から資金を借りて設備を輸入し、燃料を買い込んで市場経済方式で国営漁船を運営できるようになった。これも各水産事業所の自主性に任せた結果だ。返済は現物支給で行われ、燃料の価格の2倍に相当する魚介類をトンジュに渡すという。


これにより、地元の市場では魚介類の価格が半額、またはそれ以下に下落した。


一部で餓死者を出すほど深刻だったコロナ禍の北朝鮮の食糧事情だが、ようやく沿岸部や都市部から解消に向かいつつあるようだ。



北朝鮮漁船の出漁が増えるとともに心配されるのは、日本の排他的経済水域での違法操業や、日本海沿岸への木造船の漂着だ。

デイリーNKジャパン

「緩和」をもっと詳しく

タグ

「緩和」のニュース

「緩和」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ