金正恩氏の側近は韓国で「民間人殺害」を謝罪するか

2018年2月25日(日)10時46分 デイリーNKジャパン

平昌冬季五輪の閉会式に参加するため、朝鮮労働党の金英哲(キム・ヨンチョル)副委員長を団長とする北朝鮮の高位級代表団が、きょう25日から訪韓する。


金正恩党委員長の側近のひとりである金英哲氏は、北朝鮮の対韓国政策を統括する党統一戦線部長を務める一方、特殊工作機関・偵察総局のトップも歴任した人物だ。2010年3月に起きた韓国海軍の哨戒艦「天安」撃沈事件と、同年11月に起きた韓国・延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件は、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)と金英哲氏の指揮下にあった偵察総局が主導したものだとされている。


そして「天安」撃沈では46人の韓国軍兵士が、延坪島砲撃では民間人2人と同軍兵士2人が犠牲になっている。


そのため、金英哲氏の訪韓に対しては、犠牲者の遺族や保守政党・団体から強い反発が出ている。その他の多くの韓国国民にとっても、気持ちの良いものではなかろう。先に訪韓した金正恩党委員長の妹・金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長による文字通りの「微笑み外交」は、韓国社会から概ね好印象を持たれた。


下手をすると、その効果を無にしてしまいかねないのが、金英哲氏の訪韓なのだ。金正恩氏はいったい、何を考えているのだろうか。韓国国民をあっと言わせる手土産でも、金英哲氏に持たせているのだろうか。


そのように想像を巡らせてみると、思い浮かぶのは「遺憾表明」だ。つまりは韓国に対する謝罪である。


北朝鮮は、「天安」撃沈については「自作自演だ」などとして、現在までシラを切り続けている。だから、金英哲氏がこれについて何か言うことはないだろう。一方、北朝鮮は毎年11月になると、「延坪島砲撃戦の勝利」を記念する行事を開いている。


実は、「天安」撃沈と延坪島砲撃に至るまでには、いくつかの伏線があった。1999年の第1延坪海戦と2002年の第2延坪海戦、さらに2009年の大青(テチョン)海戦である。南北の警備艇が激突したこれらの戦闘で、北朝鮮は続けざまに敗北。大量の戦死者を出していた。


それに対する報復が、この2つの事件なのだ。


北朝鮮は「天安」撃沈については、何らかの理由で関与を否定しているが、延坪島砲撃については、一連の戦闘を勝利で締めくくったものとして誇っているのだ。延坪島砲撃においても北朝鮮は韓国から局地的な反撃を受け、韓国側を上回る戦死者を出したとの情報もある。それが事実であっても、国土を先制攻撃された韓国が大規模な報復に出られなかったため、北朝鮮にとっては政治的な勝利であるというわけだ。


というわけで、勝利した戦闘について「遺憾の意」を表明することは、金正恩氏にとっても心理的なハードルが低いのではなかろうか。とりわけ延坪島砲撃での民間人の犠牲に対して頭を下げることは、対韓国のイメージ戦略としても悪くはない。


ともあれ、韓国は「天安」撃沈に対する報復として、2010年5月24日に「5.24措置」と呼ばれる独自制裁を発動している。これを解除させずには、金正恩氏が「新年の辞」で表明した南北関係の改善が大きく進むことはない。


金英哲氏は、文在寅大統領と会うことになっている。その場で金正恩氏は、どのような「爆弾」を炸裂させるのだろうか。

デイリーNKジャパン

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