アマゾンとアップルの決算、明暗分かれる結果に

2023年8月9日(水)16時0分 JBpress

 1社のテクノロジー大手が、成長停滞から脱却する一方で、もう1社は足踏み状態だと、米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じている。これは米アマゾン・ドット・コムと米アップルのことである。


アマゾンとアップル、これまでの業績

 同紙によれば、アマゾンとアップルは一見、共通点がないように思われるが、いくつか似ている点がある。両社とも成長を続けるためには大量の商品やサービスを販売し、収益を上げる必要がある。

 2社は合計で年間9200億ドル(約131兆3900億円)の収益を生み出し、 その金額規模で世界の最も大きな企業6社に入る。しかしそれ故に、今後大幅な成長を遂げることが困難になっている。

 アマゾンは2023年1〜3月期までの6四半期のうち5四半期で売上高の前年同期比伸び率が1桁台にとどまった。同社の売上高は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による需要急増以前でも平均20%台半ばの伸び率で推移していたので、これは大幅な減速と言える。アップルは、23年1〜3月期と22年10〜12月期にいずれも減収だった。


2社、23年4〜6月期で明暗

 しかし23年8月3日に両社が発表した決算ではいくつかの違いが示された。アマゾンの23年4〜6月期決算は売上高が前年同期比11%増の1343億8300万ドル(約19兆1900億円)だった。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、この伸び率は市場予測の9%を上回った。売上高は、クラウド事業「Amazon Web Services(AWS)」を含む全事業部門で市場予測を上回った。さらに大きな驚きだったのは、営業利益が76億8100万ドル(約1兆1000億円)で、前年同期の2.3倍となり、アナリスト予想の58%増を大きく上回ったことだ。

 一方、アップルは依然低迷したままだという。アップルの23年4〜6月期決算は売上高が817億9700万ドル(約11兆6800億円)で、前年同期から1%減少した。売上高は、アプリ・音楽・動画配信などのサービス事業が回復したことで、市場予測をわずかに上回った。しかし主力「iPhone」は予測を下回った。アップルは23年7〜9月期の売上高も引き続き減少すると見込んでいる。もしそうなれば、2001年以来の4四半期連続減収となる。

 これに対し、米アマゾンは明るい見通しを示した。同社は23年7〜9月期の売上高について、前年同期比9〜13%増の1380億〜1430億ドル(約19兆7100億〜20兆4200億円)を見込んでいる。また、営業利益は55億〜85億ドル(前年同期は25億ドル)となる見通しだ。

 今回の決算発表を受け、アマゾンの株価は8月3日の米株式市場の時間外取引で一時約10%上昇した。アップルの株価は同日の時間外取引で約2%下落した。


アップルとアマゾン、今後の業績

 アップルの今後の業績の行方は、23年9月下旬に発売される予定の新型iPhoneにかかっているとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。23年9月末までの同社23会計年度通期のiPhoneの売上高は前年度比2%減少するとアナリストらは予想している。一方で、23年10月から始まる24会計年度通期におけるiPhone売上高は前年度比6%増加するとみている。これは消費者によるiPhone買い替えサイクルの改善が期待されるからだという。

 ただし、同社が23年6月に発表したゴーグル型ヘッドマウントディスプレー(HMD)「Apple Vision Pro(ビジョンプロ)」については、投資家からあまり期待されていないと同紙は報じている。アップルは、米国での発売を24年初頭から、それ以外の国は24年後半としているが、詳細については明らかになっていない。また、3499ドル(約50万円)という価格は、マスマーケットのヒット商品にはなりにくいと考えられているという。

 アマゾンの23年4〜6月期の純損益は67億5000万ドル(約9640億円)の黒字(前年同期は20億2800万ドルの赤字)だった。就任から2年を迎えたアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)はコスト削減・抑制策を推し進めており、その効果が表れた。コロナ禍の電子商取引(EC)需要増で増やしたフルフィルメントセンターなどの物流施設は、22年に過剰になり、同社の利益を圧迫した。しかし、そうした問題も解決しつつある。

 一方、前述したクラウド事業AWSの23年4〜6月期における売上高は、前年同期比12%増の221億4000万ドル(約3兆1600億円)にとどまった。同事業の増収率はこれまでで最も低く、3四半期連続で過去最低の伸びを記録した。ただ、ジャシーCEOは決算説明会で、「AWSの成長は、顧客がコストの最適化から新しいワークロードの展開に移行し始めたことにより安定化した」と述べた。株式市場では、生成AI(人工知能)による需要増で、クラウド事業の成長減速に歯止めがかかったと受け止められた。

筆者:小久保 重信

JBpress

「アマゾン」をもっと詳しく

「アマゾン」のニュース

「アマゾン」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ