カレー沢薫の時流漂流 第286回 パルワールドが世を改めて悩ませた模倣の線引きとゲームの面白さ

2024年2月12日(月)13時13分 マイナビニュース

長らくソシャゲばかりでコンシューマーゲームに手を出していなかったのだが、去年末久々にニンテンドー Switchソフトの「ドラクエモンスターズ3」を買ってプレイしている。
何故突然やる気になったかというと「主人公のピサロの顔が良かったから」以外の理由はない。
しかし、私は今までドラクエモンスターズシリーズをプレイしたことがない、そのシステムにあまり魅力を感じたことがなかったからだ。
そんなユーザーが「キャラの顔が良い」というだけでDLC含め、いきなり1万近い金を出しているのだ。
ちなみに私は今までロボットアニメにも全く興味がなかったのだが、今話題の「勇気爆発バーンブレイバーン」に関しては「ブレイバーンが気持ち悪すぎる」という感想が気になりすぎて、つい見てしまったし、おそらく続きも見るだろう。
このコンテンツが溢れまくりな世の中、まず「1話だけでも見させる」ことが難しく、さらに金を出させるのは至難の業だ。
そんなユーザーの300トンあるケツを持ち上げ、溶接された財布をこじ開けるためには、強烈に興味を引く一点突破が必要になってくる。
一度見させてしまえば惰性で続きも見てくれたり、続きが気になって課金してくれる者もあらわれる。
また「最初はキャラ目当てではじめたがゲームも面白い」や「この気持ち悪さが一体どこに着地するのか小生的には最終的にブレイバーンが他の男に搭乗されるNTR希望です」など、他の点でも評価が広がったりするものである。
逆に「良作だが、良作であることが知られるところまでいけずに終わる」というコンテンツもたくさんあるし、一点突破部分以外に見る所がない出オチなものもある。
ちなみにドラクエモンスターズ3はすでに世間が評価している通り、ストーリー部分が非常に薄く、キャラ目当てでプレイした者にとっては若干物足りなかったが、自分の人生に比べればかなり濃かったし、許せない話というわけでもなかった。
それにモンスターズシリーズは初めてプレイしたが、モンスターを捕まえて合体させてさらに強いモンスターを作るシステムは思ったより面白かった。
ところで、このモンスターを捕まえてモンスターを戦わせるという形式は、ポケモンを思わせるな、とも思った。
しかし、それからほどなくして「ポケモンを思わせる」どころではないゲームが発売し、話題をかっさらうことになる。
これに比べれば、ドラクエモンスターズがポケモンに似ているというのは「お前の顔は目と鼻と口があるから石原さとみのパクリだ」と言われるレベルの暴論と化してくる。
○楽しんだり批判したり、とにかくパルワールドで踊らにゃ損々?
そのゲームとは、すでにご存じの方も多いと思うが「パルワールド」である。
このゲームも最初は「ポケモンに似すぎ」という一点突破で瞬く間に有名になったのだが、すでに全世界で数百万本とか数千万本とか、とにかくたくさんダウンロードされており、ポケモンに似ているというわけではなく「実際に面白い」という評価にもなっている。
しかし、ポケモンに似ているというのは揺るぎない事実であり、発売当初から「任天堂法務部が黙っていないぞ」と、任天堂法務部以上に黙ることができない人たちが声高に叫ぶ事態となっていた。
これに対し、任天堂は要約するに「1月に発売した他社のゲームについて多くの問い合わせをいただいているが、当社はポケモンのいかなる利用も許諾しておらず、調査して適切な対応を取っていく」と声明を出している。
これを「任天堂法務部が本気を出してきた」と取る人もいたが、「こっちで何とかすることだから、部外者がイチイチ電凸してくるな、むしろそれが一番俺たちの業務を妨害している」という、任天堂法務部無双期待勢に対するやんわりとした苦言であると読み解く人も多かった。
確かに、我々は憤懣やるかたない事件を目にすると、すぐに「処せ」「何故これを処さぬのだ」と感情で言ってしまうが、法律はそう単純なものではない。
特にパルワールドは確かにポケモンに酷似するキャラが出て来るが、著作権的にこれを訴えて勝てる見込みは少ないとみる専門家もおり、任天堂法務部が優秀であるからこそ、そうすぐに動けるものではないのかもしれない。
それ以前に任天堂は「2024年1月発売のゲーム」と言っているだけで、「パルワールド」とは一言も言っていない。
よって、もしかしたらこれは「龍が如く8」のことを指しているのでは、という新説を提唱する解析班も現れた。
龍が如くは、ポケモンと同様世界的に人気のあるシリーズだが、龍が如くは反社の世界をテーマにしたゲームであり、ある意味ポケモンの世界観とは対極をなしている。
しかし龍が如くはコメディやパロディ要素も強く、本編に関係ないサブクエストやミニゲームにも非常に力を入れている。
今回の龍が如く8では、「スジモン」を集めて戦わせる「スジモンバトル」が搭載されており、さらに島を自分好みに開拓できる「ドンドコ島」というのもあり、ユーザーの間では「あつまれごくどうの森」という愛称で親しまれているようだ。
確かに「1月発売のゲームでポケモンに似ている」という条件に当てはまっており、ポケモンだけではなく、他の任天堂製品までパクっているとしたら、ある意味パルワールドよりも重罪である。
ただ、龍が如く側はこれを「パロディ」としてやっているだろうし、もしかしたらパルワールドとてそのつもりでやっているのかもしれない。
○トールキン財団がホビットとミスリル禁止したとかしないとか
パクリとパロディの線引きは難しく、ゲームシステムも全くどのゲームにも被らないゲームを作ることは困難であり、システムでいえば「レベルを上げるという概念を用いたゲームは最初にそれをやったゲームのパクリだから全て差し止め」となれば、ドラクエですらこの世から消える可能性がある。
かといってゲームのシステムは模倣し放題となると、斬新なインディーズゲームのシステムを大企業が流用して大作を作るなどの行為が横行してしまうので、何らかの対策は必要だろう。
だが、これだけ話題になったことにより、ポケモンをほぼやったことがない私ですら、逆に「パルワールドをやってみるか」という気になってしまっている。
今パルワールドがこれだけ売れているのはゲームがおもしろいからだろうが、「まず話題にのぼることが大切」であることを改めて学んだ。

マイナビニュース

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