元メルカリ幹部が挑むライドシェア事業、24年秋に大阪で開始「ドライバー数1万人へ」

2024年3月7日(木)15時30分 マイナビニュース

メルカリの日本事業を統括していた青柳直樹氏が立ち上げたライドシェアのスタートアップnewmo(ニューモ)は7日、2024年秋より大阪にてライドシェア事業を開始すると発表した。大阪市でタクシー事業を手掛ける岸和田交通グループの岸交と資本参加し、共同経営を通じてタクシーとライドシェア事業の双方を展開する。全国のタクシー会社との提携も進め、2026年3月末までにタクシー車両数3000台、ドライバー数1万人の確保、そして全国展開を目指す。
ニューモは2023年12月末までメルカリの日本事業を統括してきた青柳氏が1月に創業した。2月7日にライドシェア事業への参入、同16日にはメルカリなどから15億円の資金を調達したと発表した。
7日の事業戦略発表で青柳氏は「移動手段がないことで、やりたいことを諦めている人が多くいる。柔軟なライドシェア事業を通じて、『移動の負』の解消に留まらず、地域経済の活性化、さらには日本経済の活性化を目指していく」と意気込みを見せた。
吉村大阪府知事「日本型ライドシェアはライドシェアではない」
一般ドライバーが自家用車で乗客を有料で運ぶ「ライドシェア」が4月に日本で解禁される。「日本型ライドシェア」と呼ばれており、タクシーが不足する地域や時間帯に限定され、タクシー会社の管理下で運行するという条件付きの解禁だ。既存のタクシー事業者以外の参入を認めるかや、法整備などは議論が続けられており、政府は6月までに結論を出す予定。
背景にあるのは、タクシーの運転手不足だ。コロナ禍による働き手の減少やドライバーの高齢化などにより、ドライバー数が2009年以前の水準と比較し約4割(約15万人)減少している。タクシーだけでなくバスの運転手も「2024年問題」により、路線維持のための必要数12万9000人に対して3万6000人の不足が見込まれている。
大阪府も例外ではない。人手不足やドライバーの高齢化が深刻だ。大阪府によると、2011年から2023年までの12年間でタクシー運転手は約1万人減少し、ドライバーの約6割が60歳以上、約3割が70歳以上という状況だ(23年11月時点)。府民の9割がタクシーのつかまりにくさを実感している。
また、インバウンド(訪日外国人)の増加によりさらに需要が増している。2025年に開催予定の大阪・関西万博では約2800万人の来場者による交通需要増が見込まれており、タクシーの利用者数が1日あたり20%増加すると試算されている。1日あたり約5万2000人がタクシーを利用することになるという。
同説明会にゲストとして登壇した大阪府知事の吉村洋文氏は「政府が4月に解禁する日本型ライドシェアは、私に言わせればライドシェアではない。単なるタクシーの規制緩和だ。新しい自由で柔軟な移動手段が必要だ」と述べた。
タクシー・ライドシェアのハイブリットモデルを展開
2024年秋に大阪府内で事業展開を目指すニューモは、タクシーとライドシェアのハイブリットモデルで供給を拡大していく考えだ。配車アプリや運行管理システムを開発すると同時に、タクシー事業者と資本提携を通じてライドシェアだけでなく、タクシー車両も活用する。ドライバーの供給主体として各配車アプリにも配車する。
利用者は、専用のアプリを通じてタクシーとライドシェアのどちらかを選択できる。またドライバーのプロフィールを事前に確認でき、女性ドライバー、ベビーカー対応、外国語対応、電気自動車(EV)など、個人のニーズに合わせた車両を選択できる。
また「ライドシェアでは乗客だけでなくドライバーも利用者になる」(青柳氏)という考えのもと、ライドシェアドライバーが安心して働ける仕組みも構築する。例えば、ライドシェアドライバー向けの安全運転講習の実施や事故対応、SOS機能など安心して働ける機能を整備する。需要に応じた報酬(ダイナミックプライシング)の適用も検討しており、「女性や若年層を中心にライドシェアドライバーの裾野を広げていく」と青柳氏。
ドライバーの登録時には金融機関水準の本人確認を行う。最新のeKYC(オンライン本人確認)に加えて、事故歴、違反歴、犯罪歴などを確認する。使用する車両についても厳格な要件の審査を登録時だけでなく定期審査を実施する予定だ。
ライドシェア事業に適した損害保険の構築も進める。ニューモは7日、大手損害保険3社と各社個別に業務提携を締結した。「既存のタクシー向けの保険や個人の任意保険でカバーするには限界がある」(青柳氏)とし、ライドシェア開始までにサービス提供によるリスクと保険を含めた対応策を洗い出す。事故発生時の対人・対物賠償や人身損害、車両に関する補償などを検討していく。
「OSAKAモデル」から展開、25年度内に全国へ
ニューモと資本提携し岸交は、大阪府内にてタクシー会社を複数持つ岸和田交通グループの1社で、大阪市域交通圏にて車両40台、ドライバー60名を抱えている。年々減少するタクシー運転手の不足を補うため、5年以上前から日本におけるライドシェアの可能性を模索していたという。
一方で、コロナ禍での需要の落ち込みに伴うグループ全体の売上減少などもあり、個社でライドシェア導入に向けたアプリ・システム開発やドライバーの採用などを進めることが難しいという課題があった。
青柳氏は、「すべてのタクシー会社の経営者がライドシェアに反対しているわけでない。ビジネスチャンスと捉えている会社もある。『断固反対』という1つの声だけでなく、さまざまな声があることを知ってほしい」と訴えた。
両社は共同経営を通じて、24年秋よりライドシェア事業を開始する。ニューモは岸交に対して出資するだけでなく(出資金額・比率は非公開)、タクシー業務の運行管理DX化やライドシェア導入に向けた技術支援・ドライバー採用支援を行う。岸交は車両やタクシードライバー、運行管理のノウハウ、営業権などを活用し、タクシー事業とライドシェア事業の双方を展開していく。
ニューモは今回の提携のような、近隣エリアに複数のグループ会社を持ち、かつ、ライドシェアへの参入を検討しているタクシー事業者に対し、グループ傘下の1社に資本参加してライドシェアを推進していくモデルを「OSAKAモデル」と位置付け、まずは大阪府内での同モデルの展開を進める考えだ。
今後は提携を検討したい全国のタクシー事業者を募集し、各地にてタクシー事業者とのパートナーシップを通じたライドシェア事業の提供を目指す。複数社経営をしていない事業者も対象にしていく。
「2026年3月末までにドライバー数を1万人までに拡大させたい。1万人だけではタクシーやバスのドライバー不足をすべて埋めることはできないが、意味のある第一歩になるはず。追加の投資やそのための資金調達も積極的に行い、便利で自由な移動を実現させていく」(青柳氏)

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