日本のアニメ、海外で今人気なのは? ソニーG傘下「クランチロール」責任者に聞く

2024年3月10日(日)16時0分 マイナビニュース

米Crunchyroll(クランチロール)は200以上の国と地域で、日本のアニメやマンガを中心にそろえるコンテンツ配信のプラットフォームを展開しています。3月2日には東京では2回目となる「クランチロール・アニメアワード」を開催しました。同社のチーフ・コンテンツ・オフィサーである末平アサ氏に、クランチロールの取り組みと日本のアニメへの期待を聞きました。
ソニーグループのアニメ配信サービス「クランチロール」とは
クランチロールはソニーグループ傘下で米国に本社を置くソニー・ピクチャーズエンタテインメントと、 ソニー・ミュージックエンタテインメントの子会社であるアニプレックスの両社が独自に運営する合弁企業です。日本の人気アニメ作品を中心にコンテンツを取りそろえる定額制ストリーミングサービスが、世界200以上の国と地域に向けてコンテンツを配信しています。残念ながら日本にはクランチロールのサービスが提供されていません。
2006年に立ち上げたWebサイトによるサービスが以後順調に成長を続けて、2024年1月には有料サービスの登録会員数が1,300万人を超えました。
同社が主催するイベント「クランチロール・アニメアワード」は今年が開催7回目。2022年までは毎年米国で行われてきましたが、2023年から東京で開催しています。
末平氏が「いまソニーグループが総力を挙げて取り組んでいるイベント」であると語るクランチロール・アニメアワードの模様は、YouTubeとTwitchで開催当日にライブ配信が行われました。クランチロールのサイトではアーカイブ視聴もできます。
『呪術廻戦』がアニメアワードを受賞
2024年のアワードにはクランチロールを含む5つの配信サービスから、30を超えるアニメスタジオによる50以上のTVアニメ作品と劇場版作品が選出されました。日本語オリジナルキャスト、並びに世界各地域で配信される吹き替えを担当する合計50人以上の声優もノミネートしました。
各候補に対して、世界のアニメファンが1月18日から1月28日までの間にクランチロール・アニメアワードのWebサイトから投票しました。2024年の「Anime of the Year」に輝いた作品は『呪術廻戦 第2期(懐玉・玉折)』。末平氏によると、2023年の投票数は1,800万以上でしたが、2024年は3,400万以上に増えたそうです。昨年日本で開催したことでクランチロール・アニメアワードの知名度が上がり、認知も拡大した手応えを末平氏も実感しているといいます。
現在、日本からアクセスできない配信サービスの名前を冠するアワードを、なぜ東京で開催するのでしょうか。アニメの本場である日本で開催することで、海外に向けて日本のアニメやアワードの認知を拡大することのほかに、もうひとつ大きな理由がある、と末平氏は語っています。
「海外マーケットの広がりとともに大きくなった、世界中のファンの声を直接日本のアニメクリエイターに届けたいと考えたからです。表彰式には多くの日本のクリエイターに参加いただきました。作品だけでなく、クリエイターの活躍にもスポットライトを当てることでアニメ業界がさらに活性化して大きくなると期待しています。音楽にはグラミー賞、映画にはアカデミー賞があります。クランチロール・アニメアワードをアニメーション業界の発展に資する賞として育てることが私たちの目標です」
“リアルな今の日本”反映したアニメが海外でヒット
これは筆者の感覚ですが、これまで海外で人気が出る日本のアニメといえば東洋的なエッセンスを含んだアクションものや、完全にSF・ファンタジーに振り切った作品が多い印象があります。現在の日本が物語の舞台になっていたり、日本人の文化や生活がリアルに反映されている作品も、今は海外で受け入れられるのでしょうか。末平氏に聞いてみました。
「確かに『ニンジャ・サムライ・バンパイアものが鉄板ネタ』と言われていた時代もありました。現在は配信プラットフォームが世界中に普及したおかげで、海外でも日本のさまざまなアニメ作品が視聴できるようになりました。ファンも多様なアニメを求めるようになった今は、これを作ればカタいというジャンルもなくなったと思います」
たとえば「高校野球」がテーマだったり、「日本の田舎」が舞台になっていたり、海外のアニメファンにはすぐに伝わりにくい日本の礼節やロケーションが色濃く反映される作品もヒットすることがあるのでしょうか。
「やはり日本独特の文化がすぐになじみにくいところもあるかもしれませんが、今はさまざまな作品で、さまざまな視点から日本の文化をより深く知ることができます。日本語があまりわからなくても、好きなキャラクターの名台詞を覚えているアニメファンも大勢います。昔は海外の映画で日本の文化や人、生活がステレオタイプ的なフィルターをかけて表現されることもありましたが、今は日本のアニメが日本の今を正しく伝える役割を担っていると思います。アニメ関連のグッズ販売はとても好調です。また、日本アニメの“聖地巡礼”を楽しむ海外のアニメファンが増えているとも聞きます」
日本のアニメを世界に広げるクランチロールの取り組み
アニメアワードの開催も含めて、今後クランチロールは世界にアニメファンを増やすために、どのような取り組みに力を入れていくのでしょうか? 末平氏は次のように答えています。
「クランチロールのプラットフォームは年々成長を続けています。世界中にアニメファンが増えるほど、ダイバーシティ(多様性)にも目を向けなければなりません。世界中でヒットすることが確約されているジャンルやテーマもありません。それぞれの地域や文化に応じて人気が出る作品は異なっています。私たちは運営するプラットフォームなどから得たデータをていねいに解析しながら、今後のコンテンツ制作や地域ごとにも異なるファンの好みを把握することに注力していきます」
クランチロールは単独でのアニメ作品は作っていませんが、日本のクリエイターに海外ファンのニーズを伝えられる立場から、最近では制作委員会の中に加わることもよくあるといいます。
また、今回のクランチロール・アニメアワードでは賞を発表するプレゼンテーターとして、アメリカのほかにもインドや南米などから著名なアーティストやインフルエンサーを“各国・地域の代表”として招くことで、世界のアニメファンが集まる祭典に一体感を演出したとしています。
これから海外でクランチロールの知名度が上がるにつれ、日本でもクランチロールの名前を耳にする機会が増えそうです。
著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら

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