月探査車「YAOKI」からの写真公開、日本の民間企業で初到達も走行ならず
2025年3月10日(月)12時1分 マイナビニュース
ダイモンは、同社が開発し米企業の月着陸船で月面へと運ばれた、小型探査車「YAOKI」から届いた写真を3月8日に公開。「日本の民間企業として初めて月面に到達し、稼働した月面探査車となった」と発表した。なお着陸船からは月面に降り立てず、単体での月面走行は断念した。
YAOKIを搭載した月着陸船「Nova-C」、通称「Athena」(アシーナ)は既報の通り2月27日(日本時間)に打ち上げられ、翌月7日(同)には月面軟着陸に成功。しかし着陸姿勢に問題があり、月面に横転した状態とされている。
これを受け、月着陸船を打ち上げた米Intuitive Machins(インテュイティヴ・マシーンズ)からは、着陸船の最大活動時間を考慮し各ペイロードへ、それぞれのミッションを着陸直後から短時間で遂行する指示が出された。
YAOKIは着陸から約5日後にアシーナを離れ、遠隔操作で月面を走行しながら写真を撮影し、地球に送信する予定だった。しかし、輸送時の格納ケース(デプロイヤー)を開閉するためのエネルギーが供給されなくなったため、ケース内部からの撮影を試み、写真撮影とリアルタイムに近い送信速度(1枚の受信時間75秒)での確認に成功。画像データが欠落するパケットロスもなく、クリアなデータを受け取れたという。
ダイモンは、YAOKI本体は全機能が正常に動作することを確認しており、予定していた全機能の動作を地上からオペレーションすることに成功。打上げから探査までの全工程で、YAOKIの温度を示すテレメトリーなどを正常に取得でき、重心データも確認できたという。
通信機能や電源については、2時間以上にわたりデータ送信に成功し、最終コマンド送信時点でYAOKIのバッテリー残量は4時間以上あることをオペレーションシステムにより確認。このほか、デプロイヤー内部で車輪を回せたことから、「分離されていれば月面走行は可能と推定だった」と説明している。
なお、インテュイティヴ・マシーンズによる2度目のミッション「IM-2」(Intuitive Machines-2)だが、着陸船の電源供給が尽きたとしてすべてのミッションを終了済み。インテュイティヴ・マシーンズでは「太陽の方向、ソーラーパネルの向き、クレーターの極端な低温」による影響でアシーナに充電できなかったためだと説明しており、チームはミッション全体で収集されたデータの評価を続けている。
アシーナが着陸を予定していたのは、月の南極の「ムートン山」(Mons Mouton)エリアのクレーター内だったが、予定地点から250メートル離れたところに着陸したことも分かっている。インテュイティヴ・マシーンズによれば、これは「これまでに達成された最南端の月面着陸」だったとのこと。
IM-2のこれまでの開発背景やIM-2ミッションのねらいについては、鳥嶋真也氏によるレポート記事を参照のこと。