立命館大、息の吹きかけで隠れた文字が浮かび上がる表面微細加工技術を開発

2024年3月13日(水)19時32分 マイナビニュース

立命館大学は3月12日、息を吹きかけるだけで隠された文字が出現する材料表面を、高速かつ簡易的に製造する技術の開発に成功したと発表した。
同成果は、立命館大学大学院 理工学研究科の山﨑克真大学院生、同・辻淳喜大学院生、同・大学 理工学部の村田順二教授らの研究チームによるもの。詳細は、さまざまな分野のナノ/マイクロスケールに関する全般を扱う学術誌「Small methods」に掲載された。
現在、マイクロおよびナノスケールの微細パターンの加工には、写真の現像技術を応用したフォトリソグラフィが主要な技術として用いられている。しかし、同技術はフォトレジスト(加工したくない部分を保護する高分子膜)や特殊な装置を必要とするため、工程が複雑であることや加工コストが高いといった課題を抱えており、よりシンプルな微細パターニング技術が求められていた。
そこで研究チームは今回、「高分子電解質膜」(PEM)を用いた新規加工法により、シリコン表面に微細な酸化膜パターンを形成することを着想したという。なおPEMとは、燃料電池に利用されている、固体でありながら液体のようにイオンが電気伝導を担う機能性材料のこと。
表面に凹凸を施して作製されたPEMスタンプをシリコンに押し当てた状態で、シリコンと対向電極間に電圧を印加すると、PEMとシリコンの接触点において電気化学反応が生じる。その結果、スタンプを押したようにシリコン表面に微小な酸化膜のパターンを形成することが可能だ。
生成された酸化膜は高い親水性を有するため、吐息などの湿った空気にさらすと、酸化膜上にのみ微小な液滴(水滴)が瞬間的に形成され、虹色の構造色(CDやDVDなどの記録面に見られる、色素ではなく物理的な構造による発色)を呈する現象が確認されたという。
吐息を吹きかけるだけで瞬間的にできる微小液滴のサイズは、数μmで、酸化膜パターンの存在する場所に規則的に配列される。液滴はそのような小ささのため、数秒から十数秒の間で蒸発して消失してしまう。このような瞬間的に表れる微小液滴とそれに伴う構造色の発現は、情報の暗号化への応用が見込まれるとする。たとえば、PEMスタンプの一部に文字上の刻印を施し、それを用いてシリコン表面を加工した場合、吐息を吹きかけた時にのみ構造色に囲まれた文字を出現させることが可能。特殊な装置を用いることなく、文字の出現と消失を繰り返すことができるため、情報の暗号化や偽造防止技術への応用が期待できるという。
今回の研究では、PEMを用いた新規加工法により、レジストおよび特殊な装置が一切不要で、わずか数秒間の加工時間でマイクロおよびナノパターンの形成を可能にした。これにより、簡便で高速な微細パターンの形成が期待され、フォトリソグラフィに代表される現行の微細パターン加工技術が抱える工程の複雑さや高い加工コストなどの課題を解決できる可能性があるとしているほか、簡易的な方法で情報の隠匿や解読が可能であるため、情報セキュリティ分野への応用も期待できるとしている。

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