生理研など、引き伸ばされても細胞同士がバラバラにならない仕組みを解明

2024年3月27日(水)6時30分 マイナビニュース

生理学研究所(生理研)、東京都立大学(都立大)、基礎生物学研究所(基礎生物研)の3者は3月25日、ほ乳類に3種類ある細胞同士を密着させる構造の1つである「密着結合」は、これまで細胞に力がかかった際に細胞同士の接着を保つ際の役割が不明だったが、接着を維持するために重要であることを明らかにしたと共同で発表した。
同成果は、生理研の古瀬幹夫教授、同・大谷哲久助教(現・都立大 理学研究科 生命科学専攻 准教授)、同・Thanh Phuong Nguyen大学院生、基礎生物研の藤森俊彦教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、「Journal of Cell Biology」に掲載された。
ヒトは、数十兆個ともいわれる膨大な数の細胞で構成されている。ヒトに限らず動物は皆、日々身体を動かしており、呼吸するだけでも胸部や腹部が膨張と収縮を繰り返しており、数多くの細胞に力が加わっている。また、何かにぶつかったり倒れたりといったアクシデントで外力が身体に加わることもあるが、もちろん限度はあるものの、簡単に身体を構成する細胞がバラバラになってしまうことはない。この細胞同士の接着は、ヒトを含めた多細胞動物の成り立ちを理解する上で重要な、根本的な問題だという。
細胞同士を接着させる構造として、ほ乳類では主に、「密着結合」、「接着結合」、「デスモソーム」の3種類が知られている。このうち、接着結合とデスモソームは力を受けた際に細胞がバラバラにならないように保つのに重要であることがわかっているが、密着結合が力を受けた際にどのような役割を果たしているのかは不明だったとする。
密着結合の役割がこれまで解明されてこなかった理由の1つとして、接着結合やデスモソームといった接着構造の形成に影響を与えずに、密着結合のみを特異的かつ完全に不活性化することが難しかったためだという。そうした中で、密着結合の膜タンパク質である「クローディン」と「JAM-A」を欠失した細胞を作成し、これらの膜タンパク質が密着結合の形成に必要不可欠であること、接着結合やデスモソームの形成には影響を与えないことを解明してきたのが研究チーム。
しかし今回、クローディンとJAM-Aを欠失した細胞を詳しく観察したところ、予想外なことにところどころ接着構造が断片化して崩壊している部位が観察されたという。これは、クローディンとJAM-Aを欠失した細胞において、密着結合以外の接着結合やデスモソームといった接着構造が一度は形成されるものの、その後、何らかの理由で、それらの接着構造が一部崩壊している可能性を示唆しているとした。そこで研究チームは今回、その異常の原因を探るために、接着構造を蛍光タンパクによって可視化し、生きた細胞内で接着構造が壊れる様子を顕微鏡下で観察することにしたとする。
観察の結果、正常細胞では、細胞が変形した時にも細胞同士の接着構造が途切れないのに対し、クローディンとJAM-Aを欠失した細胞では、細胞が偶発的に引き伸ばされた際に細胞同士の接着が壊れてしまうことが判明。そこで、細胞のひずみ(変形率)の測定が行われ、クローディンとJAM-Aを欠失した細胞では、細胞のひずみがある一定のしきい値を超えると細胞同士の接着が壊れてしまうことが明らかにされた。これらの結果から、密着結合の膜タンパク質が、力に対する抵抗性に必要であることが突き止められたのである。
さらに、研究チームは密着結合に存在するタンパク質で、力を受けるとその構造を変化させるメカノセンサ(力を感知するタンパク質)である「ZO-1」にも注目。超解像顕微鏡を用いた解析から、クローディンとJAM-Aを欠失した細胞では力を受けた際のZO-1の分子構造の変化が不十分で、細胞同士の接着も著しく脆弱(ぜいじゃく)になることが判明したのである。
生理研の古瀬教授は今回の研究成果に対し、今後、さまざまな接着構造がどのように連携してヒトの身体をつなぎ合わせているか、また一旦壊れてしまった細胞同士の接着がどのようにして修復されるのかを理解することにつながると期待されるとしている。

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