山田祥平のニュース羅針盤 第484回 次期iPhoneの価格に影響? 関税がIT世界にもたらす懸念
2025年4月8日(火)6時0分 マイナビニュース
米・トランプ政権による関税政策が巷で大騒ぎの話題になっている。関税を払わせる米国にとっても深刻な事態を引き起こしそうな様子という論調だ。世界を破壊させる施策だともいわれている。
個人的には日常の買い物で貯めたポイントを自動追加で“ポイント運用”しているが、それはそれは悲惨な状況になっていたりする。政治も経済も門外漢ではあるが、そんなことでも、この騒ぎを実感する。
○関税が次期iPhoneの価格を直撃?
ITの業界にとっても影響は小さくない。たとえばITデバイスの多くは、中国、あるいは、ベトナムなどのアジア諸国で組み立てられて完成品となる。たとえ機器のメーカーが米国出自であったとしても、米国はそれを輸入する建て付けになる。つまり、貿易が欠かせないインフラとなっているわけだ。
ということは、米国出自の企業が自社製品を手にするために、これまでとは比較にならないくらいに高額な関税を支払わなければならなくなるわけだ。高くなった関税分を売価に転嫁して相殺しようとすると、極端には今までの価格が1.4倍になってもおかしくないという試算もあるといった報道も目にする。
米国の米国のための米国によるはずの関税が、結果として米国企業と米国民の消費生活を苦しめることになりかねない。この秋に発売されるであろう次のiPhone 17シリーズの価格が16シリーズの1.5倍になるとしたら、その売れ行きにも少なからず影響があるはずだ。
○Microsoftも50周年。四半世紀で変わるテクノロジー
普通の日本人が普通にインターネットにつながるデバイスを使い始めたのは、2000年頃だった。ドコモによるiモードがサービスインしたのはその前年の1999年だ。それによって一般市民が常時接続のインターネット環境を手に入れ、日常的に電子メールをやりとりするようになり、翌年以降は新しい当たり前として携帯電話で撮影した写真をやりとりするようになった。お正月のあけおめメールがヘビートラフィックとなって配信が遅延したのも今となってはなつかしい。
今はその時点からだいたい四半世紀。皮肉にも1975年に創業したMicrosoftは50周年、つまり半世紀目を迎える。四半世紀ごとに、次の四半世紀を左右する大きな何かが起こっている。
インターネットの商用利用が進み、世界中のコンピューターがひとつのネットワークで結ばれたとき、距離感のリセットが起こった。地球の裏側など、遠く離れた地点間でのコミュニケーションコストが大きく下落し、国をまたぐいろんなビジネスがはじまった。そこで動くのはモノではなくデータなのでインターネットは世界の経済に大きな影響をもたらした。
AI利活用の浸透により、言葉の壁もなくなろうとしている。完全ではないといいながらも、ネイティブではない外国語を一般の市民がやりとりするよりは、ずっと正確に言葉を把握できるようになっている。この調子では、小中高生の外国語を学ぶモチベーションがだだ下がりになって、かえってよくないのではないかと彼/彼女らの将来が心配になってくるくらいだ。
○ネット世界への影響を懸念、その先に転機はあるか
われわれは米国のすべてを知っているわけではない。米国にはたぐいまれな才能で世界を相手にビジネスを推し進めるIT長者が次々に生まれる一方で、出身州から一歩も出ずに、決して高くはない収入で地味に働きながらその人生を全うする人々もたくさんいる。政権への抗議活動も目立つが、そんな面をもつ米国全体が支えているのが現在のトランプ政権だ。ものづくりができる製造業の国に戻したいと考えているようにも見える。
これから世界はどうなるのだろうか。今回のトランプ関税騒ぎはインターネットの世界にも大きな影響を及ぼす可能性がある。この先どうなるんだろうと、心配することしかできないのがもどかしい。ただ、こういうときにはたいてい“コペルニクス的転回”が起こる。馬鹿にされるのはわかっているがそれを期待するしかない。
著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。■個人ブログ:山田祥平の No Smart, No Life この著者の記事一覧はこちら