「良くないこととはわかった上で」……増えるバッテリー火災、背景を分析した“清掃員芸人”の投稿に共感が集まる

2025年4月19日(土)12時37分 ITmedia NEWS

処分に困るリチウムイオン電池を使った製品の数々(画像はイメージです)

 太田プロダクション所属の漫才師として活動するかたわら清掃員としても働き、その経験を基に10冊以上の書籍を出版している“清掃員芸人”のマシンガンズ滝沢さん(@takizawa0914)が、自身のXアカウントで「膨らんだリチウムイオン電池も回収できるシステムを作らなければならない」と訴えた。清掃員は日々リチウムイオン電池に怯えながら、ごみの回収作業をしているという。
 投稿は、環境省が廃棄リチウムイオン電池について、自治体に対して膨らんだものも含め「すべて回収する」ように通知を出した4月15日のもの。滝沢さんは「(通知に)強制力はないので、リチウムイオン電池に関する問題が解決という訳にはいきませんが、明確化したのは大きな第一歩」と評価したうえで、清掃員が置かれている状況を説明した。
 長文の投稿には「ごみ清掃員として働いていると電子タバコやモバイルバッテリー、携帯扇風機がよく可燃ごみに混じっているので、身の危険を感じる」「僕の先輩芸人兼清掃員のタケウチパンダさんは不燃ごみを担当していて、二度、清掃車火災を出している」「他の清掃員もリチウムイオン電池に怯えながら回収をしている」。実際、環境省によると、近年は廃棄物処理施設やごみ収集車などでリチウムイオン電池に起因する火災が頻発しており、2023年度には全国で8543件発生したという。
●「困った人たちが良くないこととはわかったうえで」
 滝沢さんは、可燃ごみや不燃ごみにリチウムイオン電池が混ざる原因も推測している。
1)自治体により回収方法が異なり、場所によっては全く受け付けていない所がある。物によってはメーカーや量販店も受け付けない→困って可燃ごみの中に入れる
2)悪気はないが、バッテリーの外側はプラスチックなので、プラ資源に間違えて入れてしまう人がいる
3)劣化や衝撃で膨らんだモバイルバッテリーは量販店、回収協会、自治体でも回収できないと明記しているので、どこに捨てていいか分からない
 しかし、捨てられないからといって家に置いておけば「いつ火事になるかもしれない」という不安を抱えながら生活することになる。そして「困った人たちが良くないこととはわかったうえで、可燃ごみにわからないように入れる。現在、この構図になって、清掃車、処理場の火災につながっている」という。
 滝沢さんは、XでGoogleフォームを使ったアンケートのページを公開し、一般ユーザーからリチウムイオン電池に関して困ったこと、危険だと思ったエピソードなどを募っている。回答はすでに1000件を超えたといい、こうした分析にも信ぴょう性はありそうだ。
●消防署に回収ボックス? 赤松議員も反応
 滝沢さんが特に問題視しているのは、膨らんだり、破損したりした充電池と、海外製の粗悪な充電池だ。ネット通販などで「互換バッテリー」をうたい、純正品より安く売られてはいるものの中には、作りが粗雑なものもあり、これまでもたびたび問題視されてきた。例えば2020年にはNITE(製品評価技術基盤機構)が非純正バッテリーの安全性を調査したところ、各電池ブロックの電圧監視が不十分なものが見つかっている。
 これら充電池の扱いに困る人がいる一方で、リサイクル処理はコスト高。拠点回収を行ったとしても火災の危険がつきまとう。
 そこで滝沢さんは、水を使わない消火剤や、消火剤付きの耐火回収ボックスを提案。環境省に相談に行き、また自らコストを負担して実証実験も行っているという。
 こうした活動を日々SNSなどで発信していたところ、参議院議員で漫画家の赤松健さんの目にとまり、話をする機会があった。そして「そんないいアイデアはないから実現できるように動いてみる」と言ってもらったという。
 X上では滝沢さんの試みに賛同する人の他、「リチウムイオン電池が膨らんで困っています」「頑張ってもメーカーの問い合わせ口にそもそも辿り着けなかった」など、それぞれの苦労を語る人も多い。さらにはリチウムイオン電池の回収を行っている自治体などの情報も集まっているようだ。
 「もっと回収ができるようになったらいいのに、というみんなの声が、高まる機運につながると、企業も自治体も法律を作る国も無視できなくなる」と滝沢さん。今後は実証実験のための資金集めやリチウムイオン電池についての周知活動にも力を入れていくという。

ITmedia NEWS

「清掃員」をもっと詳しく

「清掃員」のニュース

「清掃員」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ