モバイルSuicaが「Suicaグリーン券券売機」に対応しないのはなぜ? JR東日本に聞いた

2024年4月20日(土)10時5分 ITmedia Mobile

3月14日から、JR東日本の首都圏普通列車用グリーン券の対象駅(熱海駅と伊東線各駅を除く)から、JR東海エリアの駅を着駅とするSuicaグリーン券を購入できるようになりました。しかし、モバイルSuicaでは買えません

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 先日、「モバイルSuica」や「モバイルPASMO」について、誤解しがちな部分を解説する記事を掲載しました。
 すると、特にモバイルSuicaについて「カードタイプ(Suicaカード)ならできることが、モバイルSuicaだとできないじゃないか」という声が複数寄せられました。モバイルSuicaにしかできないことがあるのと同様に、Suicaカードにしかできないこともあるのです。
 せっかくなので、皆さん(と私)がモバイルSuicaに抱いている疑問を、JR東日本(東日本旅客鉄道)のコーポレート・コミュニケーション部門(広報担当)に聞いてみることにしました。今回は、首都圏で運行されている普通列車のグリーン車に乗るために必要な「モバイルSuicaグリーン券」に関する疑問です。
●おことわり
・記事中の「モバイルSuica」「モバイルPASMO」「モバイルICOCA」は、特記のない限りApple Pay(iPhone/Apple Watch)のSuica/PASMO/ICOCAも含みます
・記事中のやりとりは、文脈の変わらない範囲で体裁を整えています
●函南〜沼津間を着駅とする「Suicaグリーン券」を買えないのはなぜ?
 3月14日、首都圏の普通列車用グリーン券の料金体系が変更されました。この際に、東海道線のうちJR東海(東海旅客鉄道)が管轄する3駅(函南駅/三島駅/沼津駅)を“着駅”とするSuicaグリーン券を購入できるようになりました(※1)。
(※1)熱海〜沼津間のみ乗車する場合(JR東海管轄の駅相互間のみ利用する場合)は、Suicaグリーン券を利用できません。熱海駅の自動券売機か、全国の「みどりの窓口」で紙のグリーン券を購入してください(函南駅/三島駅/沼津駅にもみどりの窓口はあります)
 しかし、函南駅/三島駅/沼津駅を着駅とするSuicaグリーン券は、モバイルSuicaでは買えません。Suicaカード、PASMOカード、Kitaca、TOICAのいずれかを用意した上で、普通列車用グリーン券の対象区間内の駅にある自動券売機か、駅のホームにある「Suicaグリーン券券売機」で購入しなければなりません(この券売機も後で取り上げます)。
 なぜ、モバイルSuicaでは函南駅/三島駅/沼津駅を着駅とするSuicaグリーン券を買えないのか——JR東日本に聞いてみましょう。
—— Suicaグリーン券について、JR東海管内の函南〜沼津間を着駅とする場合にモバイルSuicaで購入できないのはなぜですか。
JR東日本 SuicaエリアとTOICAエリアをまたがったSuicaグリーン券のご利用については、カードタイプのSuicaとは異なった技術やサービスの課題整理が必要となります。また、普通列車グリーン車でJR東日本とJR東海をまたがってご利用いただくお客さまの流動や直通する列車の本数などを鑑みて、モバイルSuicaでの対応は見送ることとしました。
 JR東日本エリアとJR東海エリアをまたがって運転される東海道線(上野東京ライン)の列車は1日に7往復で、そのうちグリーン車を連結しているのは6往復です。しかも、沼津発のグリーン車連結列車は朝(5時〜8時台)に集中しており、夕方/夜間には設定がありません。
 本数が少ないゆえに、モバイルSuicaに対応させるコストを捻出できないということなのでしょう。
 なお、函南駅/三島駅/沼津駅から熱海駅を超えて、JR東日本の首都圏普通列車用グリーン券対象駅(伊東線の各駅を除く)で降車する場合は、グリーンアテンダントに申し出ればモバイルSuicaでもSuicaグリーン券と同額のグリーン券を購入できます。その際は、函南駅/三島駅/沼津駅からの乗車券を必ず提示してください。
 そうなると「じゃあ、ホームにあるSuicaグリーン券券売機をモバイルSuicaに対応させれば買えるようになるんじゃない?」って考えますよね。私もそう思います。なぜできないのでしょうか?
●モバイルSuicaが「Suicaグリーン券券売機」に対応しないのはなぜ?
 Suicaグリーン券券売機は、グリーン車の連結された普通列車が停まる駅のホームに設置されています(一部を除く)。現在設置されている券売機は(記憶が間違っていなければ)2世代目で、ICカードリーダーがトレイ式になっています。
 「トレイ式なら、モバイルSuicaを入れたスマホも置けるじゃん」って思いますよね。しかし、モバイルSuicaの入ったスマホを置くと「このカードはお取り扱いできません」というメッセージと共に取り扱いを拒絶されます(モバイルPASMOも同様です)。
 スマホを置ける設計になっているにも関わらず、なぜSuicaグリーン券券売機はモバイルSuicaを拒絶するのか——JR東日本に聞いてみましょう。
—— 普通列車グリーン車の運行区間にある「Suicaグリーン券券売機」について、カードタイプのSuicaしか使えなくて困ることがあります。モバイルSuicaの場合、通信環境が不安定だとすぐに購入できないこともあるからです。モバイルSuica(の入ったスマホ)が置ける構造なのに、なぜ明示的にモバイルSuicaを排除するのでしょうか。
JR東日本 Suicaグリーン券をSuicaグリーン券売機で購入する場合、SF(※2)決済となり、SuicaのSF残高から料金が差し引かれるのに対して、モバイルSuicaアプリから購入する場合は会員情報にひも付いたクレジットカード(※3)か、Google ウォレット/Apple Payにひも付いたクレジットカードでの決済となります。 Suicaグリーン券売機でモバイルSuicaを利用できないようにしているのは、アプリ購入時と券売機購入時で払い戻し処理が異なるためです。券売機の混雑を防ぐ観点からも、モバイルSuicaをご利用のお客さまにはアプリでの購入をお願いしています。
(※2)Stored Fare:カードにチャージされた残高(電子マネー残高)(※3)クレジットカードのブランドが付いたデビットカードやプリペイドカードを含む(以下同様)
 モバイルSuicaアプリでは、Suicaグリーン券を含む各種チケットはクレジットカードで購入し、払い戻しもクレジットカードに対する返金処理で行う仕組みとなっています。これに電子マネー残高での返金機能を追加するとなると、アプリはもちろんシステム(サーバ)側にも改修が必要です。モバイルPASMOの場合は、それに加えてアプリ自体がSuicaグリーン券の利用を想定していません。
 そのような事情から、Suicaグリーン券券売機ではモバイルSuicaやモバイルPASMOを“あえて”はじいているようです。
 次回は、モバイルSuica定期券で「エリアをまたぐ定期券」を買えない問題について尋ねます。

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