1年で大幅進化した「Insta360 X5」先行レビュー センサー大型化と新映像エンジンの実力を“X4”と比較した

2025年4月22日(火)22時5分 ITmedia PC USER

幾何学的な外装となった「Insta360 X5」

 2024年4月に旧モデルのInsta360 X4が発売されてから約1年、早くも「Insta360 X5」が登場しました。いまや360度の全天球カメラカテゴリーで、もっとも注目されているシリーズの最新作です。
 気になるお値段ですが、日本では8万4800円(税込)からとなっております。円相場の兼ね合いもあるでしょうが、年々高くなってきましたねえ。とはいえ、これはコロナ禍以降のデジカメ全体にいえること。
 新たに全天球カメラを求めるのであれば、最新こそ最良ゆえ、今買うべきベストなモデルとなりますが、Insta360 X4などの旧モデルを持っている方は買い替えるかどうか悩むところでしょう。
 そこでInsta360 X4との比較を踏まえながら、Insta360 X5の先行レビューをお届けしましょう。簡単にまとめると「買い替えても満足できる! センサーサイズ大型化が効いてる!」なのですが。
●サイズ/重さはあまり変わらないが、スペックは段違い
 Insta360 X5における最大のトピックは、新型センサーの導入です。ボディーサイズはほぼ同じでありながら、Insta360 X4が1/2インチのセンサーを搭載していたのに対し、Insta360 X5は1/1.28インチ、つまり144%も大きいセンサーを組み込んできました。
 センサーサイズの大型化による好影響はみなさんご存じだと思いますが、メーカーとしても自信があるのでしょう。「13.5ストップのダイナミックレンジを実現した」とアピールしています。筆者の知る限り、コンシューマー向け全天球カメラで、ダイナミックレンジの数値を公開するのは初めてのはず。
 映像エンジンの刷新もInsta360 X5の大きなセールスポイントとなっている模様です。以前から使われてきたであろう5nmのAIチップに加えて、ノイズリダクションと画像処理のための「デュアル・プロ・イメージング・チップ」を組み込んできました。
 メーカーサイドに確認したわけではありませんが、“デュアル”ということは、前後のカメラセンサーが出力するそれぞれの映像信号を1枚ずつ処理する回路を導入したものと考えられます。
 Insta360 X4と比較した、その他のアップデートポイントも見てみましょう。
 映像そのものの最高画質は8K/30fpsと同等ですが、HDR撮影時の最高画質が5.7K/30fps→5.7K/60fpsとなりました。また、外観がスリット状のパネルから幾何学的な形状に変化しています。連続撮影時間が135分→180分と大幅に伸びているので、放熱効果も高くなったのでしょう。
 本体の防水性能も耐えられる水深が10m→15mと向上しました。キープコンセプトな形状ですが、内部構造を含め大幅に進化しています。
●レンズが傷ついても交換できるオプションが登場
 構造の変化といえば、本体側のレンズもユーザーの手によって交換することが可能になりました。
 オプションとして用意される「Replacement Lens Kit」に付属するのは、交換用レンズと、レンズのロックを外すグリップツール、レンズカバーを外すヘラ、そしてブロワー、ブラシ、ワイプや手袋など盛りだくさんです。
 交換用レンズが1枚だけとなっているので、別途交換用レンズ単体でも販売してくれるのだろうと期待します。
 ユーザーによるレンズの交換ソリューションを新たに提供してきた背景を考えると、Insta360 Xシリーズの手ブレ補正効果が強力なこと、水平維持の映像を作りやすいことなど、全天球カメラの個性を生かしてアクションカムとして使うユーザーが増えてきたと考えられますね。
 以前までは本体に付属してきたレンズガードですが、今回は別売りオプションとなりました。画質を優先するのであればレンズガードを装着しない方が良いわけで。
 Replacement Lens Kitを提供することで、破損したときにレンズを交換するのか、常時レンズを保護するのか、運用スタイルをユーザーに選んでもらうという意識がありそうです。
●鮮やかでクッキリ。たった1年でこれだけ画質が変わるとは
 スペックの数値の違いは分かりました。では実際に、Insta360 X5とInsta360 X4にどれほどの画質差があるのかをチェックしてみましょう。
 まずは、8K/30fpsで撮影してみたところ、この時点でかなりの違いが確認できます。まずは空の様子をチェックすると、Insta360 X5はダイナミックレンジが広く、雲の形状の違いもしっかりと見て取ることができます。
 シャープネスを強めに効かせているという印象はありますが、木々や建物のエッジをくっきりと見せています。センサーと映像エンジンが共にスペックアップしたことで、日中でも明瞭さを高めることができるようになったのでしょう。
 続いてInsta360 X4の8K/30fps映像を見ると、わずかに輝度を高めていることも影響してか、空は白飛びしているエリアが広く、細部の描写もモヤッとしています。Insta360 X4が発売された当初は十分な戦力となる映像が撮れると感じたものですが、比べてみると差は明らかです。
 高画質化が進んだ全天球カメラは、平面映像として出力して使うケースが増えてきました。ここでは8K/30fpsの映像を平面の4K動画としてエクスポートしてみましたが、Insta360 X5はダイナミックレンジの広さが効いています。
 Insta360 X4の映像を見ると、細部の解像感やダイナミックレンジがInsta360 X5に劣っていることが分かります。でも360度映像ほど、その差は気にならないという印象を受けますね。
●360度のスローモーション動画を撮るなら新型一択
 スローモーションの映像品質に違いはあるでしょうか。Insta360 X5/X4共に、4K/100fpsで撮った映像を25fps(4倍スロー)に変換してみました。
 スローモーションならではの映像の動きのインパクトが強く、通常の映像ほど世代差は感じません。ところがスティッチエリアに視点を動かしてみると、Insta360 X5の方がきれいに前後センサーの映像をつなげています。
 特にInsta360 X5側の映像なら右に置いたInsta360 X4を、Insta360 X4側の映像なら左にあるInsta360 X5の部分をチェックしてみてください。これは新型の映像エンジンによる効果でしょう。
●夜景映像も大型センサーと新型映像エンジンの性能が生きている
 夜間時の撮影においても、Insta360 X5はそのハードウェアスペックを最大限に生かしているようです。
 新たに搭載されたPureVideoモードは、夜間/暗所撮影時のノイズを大幅に低減してくれます。オート設定のままだとかなり明るめに仕上げてきますが、もっと暗い映像にしたい場合はEV設定を-1.0くらいにすればOKです。
 通常の動画モードでも撮ってみました。ノイズが残ってしまい、ザワザワとした印象を受けます。
 対してInsta360 X4の夜景映像はいかがでしょうか。8K/30fpsで記録すると暗くてよく分からない上に、ノイズも盛大に乗っています。
 実は夜間/暗所撮影時は、5.7K/30fpsでの撮影をおすすめするといったメッセージが表示されます。そのモードで撮ってみると、解像感は劣るもののノイズの抑制が上手で好印象ですが、PureVideoモードで撮影したInsta360 X5の映像にはかないません。
●アクションシーンにもチャレンジしたくなる高画質全天球カメラ
 写真を撮るデジカメは、画質の進化スピードが一段落してきており、手軽に呼び出せるLUTボタンなどのUI改善、クラウド連携など、ユーザビリティーの進化が目立ってきました。
 しかし、全天球カメラにおいては画質向上がまだまだ止まりません。2024年にInsta360 X4が登場した時には「ポケットサイズで十分な画質を持っている」と感じたものですが、Insta360 X5はそのときの感動を大きく超えてきました。
 Insta360 X4だけではありません。解像度は低いけどセンサーサイズが大きく、自然な夜景表現が可能だった「Insta360 ONE RS 1インチ360度版」よりも、明らかに夜景撮影時の品質が高いです。補正前提の画作りではあるものの、スマートフォンやタブレット、XRヘッドセットで見るものだとしたら、Insta360 X5の画質の方が明らかに優れています。
 従来機種を愛機としていた方も、Insta360 X5を体験してしまうと買い替えたくなるでしょう。
 またユーザーによるレンズ交換が可能になった点も見逃せません。万が一の事態となってもレンズの傷やヒビを無くすことができるなら、バイクや自転車に一脚を固定して、ツーリング/サイクリング中の動画を撮りたくなること間違いありません。
(製品協力:Insta360)

ITmedia PC USER

「進化」をもっと詳しく

「進化」のニュース

「進化」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ