山田祥平のニュース羅針盤 第486回 AIとヘルスケアの可能性は無限大、だけど欲しい「等身大のAI」
2025年4月22日(火)6時0分 マイナビニュース
日本マクニカがヘルスケア業界の関係者やパートナー向けに開催したイベント「NVIDIA ソブリン AI ヘルスケア Day with Macnica」に、NVIDIAのヘルスケア担当バイス プレジデントのキンバリー・パウエル氏が登壇した。
○NVIDIAが描く次世代ヘルスケア戦略
パウエル氏は、「AIと医療の未来:デジタルとフィジカルの融合」と題してプレゼンテーション、AIがデジタルとフィジカルの技術をシームレスに統合し、業界の重要な課題に対処することで医療にいかに変革をもたらしているかについて語った。
同氏はAIのヘルスケア分野における可能性が無限であることを強調、特に、デジタルヘルスエージェント、創薬、ロボティクスという3つの主要な分野での貢献を指摘する。
日本における課題も語られた。高齢化が進行中の日本においては、65歳以上が3人にひとりという割合に増加、それがヘルスケアにおいて大きな課題になっている。医療費も増加の一途をたどり、GDPの大きな割合を占めているともいう。また、医療従事者の不足も重要な問題だ。
AIエージェントが医療現場のワークフローを効率化し、創薬では新薬の発見プロセスをAIが加速し、AIによるロボット制御が医療や介護の分野を支援するなどで、さまざまな課題を解決するとパウエル氏はいう。
○患者の希望をAIがサポート、可能性は無限大
NVIDIAはこれまでも、そしてこれからもヘルスケア分野でのAI活用を積極的に推進、それぞれの分野に応じたさまざまなAIモデルを提供することで、これらの課題解決の道筋を提供する。パウエル氏はAIがヘルスケアの未来をどのように形作るかについて具体的な事例とともに熱弁し、その技術革新が医療現場にもたらす可能性は無限にあることを強調した。
確かにパウエル氏がいうように、AIがもたらす可能性は無限だ。それはまちがいない。人類が抱える課題として、病気を治すことは大事で、不治の病などがなくなることは夢でもある。だが、そもそも病気にならないためにはどうすればいいかをよく考えて実践することも重要だ。
パウエル氏が提示する医療の未来は素晴らしい。たとえ病気になっても希望が見える。今の勢いでAIが進化していけば、近い将来、自分自身が病む立場になったときにも、さまざまなAI支援で充実した治療が受けられることを確信した。
○日々使える「等身大のAI」の活用にも注目したい
だが、その前に、そもそも病気にならないためのAI利活用が提案されていればもっとよかったのにとも思う。
今は、スマートウォッチやバンドといったウェアラブルデバイスなどで、身体のバイタル情報を四六時中簡単に収集できるようにもなっている。医療機関の中には、これらのデバイスで収集したデータをもとに、医師がさまざまなアドバイスを提供する“ウォッチ外来”のような診療科ができたりもしている。
本当は、こうしたトレンドをAIで支援して加速するソリューションにも注目してほしかったところだ。市民にとって等身大のAIがあればと思う。
著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。■個人ブログ:山田祥平の No Smart, No Life この著者の記事一覧はこちら