京府医大、1日9000歩のウォーキングが健康寿命の延伸につながると発表

2024年5月7日(火)15時21分 マイナビニュース

京都府立医科大(京府医大)は5月1日、健康寿命のAI指標を用いて1日の歩数と健康寿命の関係を明らかにし、健康寿命の延伸につながる1日のウォーキング目標歩数として9000歩、自覚的な健康状態を改善するための1日の歩数の目標値として1万1000歩を提唱したことを発表した。
同成果は、京府医大大学院 医学研究科 循環器内科学の西真宏助教、同・的場聖明教授、同・大学大学院 医学研究科 地域保健医療疫学の長光玲央助教、京都府 健康福祉部の共同研究チームによるもの。詳細は、医療とケアに関する情報学を扱う学術誌「BMJ Health & Care Informatics」に掲載された。
日本では現在、平均寿命の延伸だけでなく、健康寿命の延伸が大きな課題となっている。厚生労働省によれば、2022年の日本人の平均寿命は男性が81.05年、女性が87.09年であり、一方で健康寿命は、2019年時点で平均寿命よりも男性が8.73年、女性が12.06年短いことが発表されている。
そうした中、研究チームはAIや機械学習を用いたこれまでの研究で、疾病負荷を統合した「健康寿命の指標」(HCAL)を開発し、健康寿命に大きな影響を与える要因として、うつ病などの心の病気、腰痛や骨折などの筋骨格系の問題、脳神経疾患などがあることを明らかにしてきた。
健康寿命の延伸には、身体活動の増加が重要であり、中でも最も手軽にできる運動とされるのがウォーキング。近年のメタ解析(複数論文の統合解析)により、1日7200歩まで歩けば心血管病発症リスクが、1日8800歩まで歩けば死亡リスクが低下することが報告されている。しかし、1日の歩数と健康寿命の関係については詳細に調べられていなかったという。そこで今回の研究では、全国の国民生活基礎調査票と国民健康栄養調査票データをもとに、HCALを用いて1日の歩数と健康寿命の関係を解明し、健康寿命を延伸するための1日のウォーキング目標歩数を導出することにしたとする。
日本では国民生活基礎調査が行われており、年齢別の日常生活での活動制限(主指標)や自覚的な健康状態(副指標)を生命表に組み入れて、健康寿命が算出されている。今回の研究では、2019年全国の国民生活基礎調査票と国民健康栄養調査票の突合データのうち、成人4957人分のデータが用いられ、活動制限と自覚的な健康状態が主要評価項目、HCALが副次評価項目とされた。
まず、1日の歩数とHCALとの関係について、成人全体と65歳以上での調査が行われた。すると年齢に関わらず、1日の歩数が増加するに従いHCALも増加し、やがてフラットになることがわかり、性別による違いは見られなかったという。
次に、閾値推定の不確かさを最小化するため、「ブートストラップ法」を用いてデータが1000倍に増幅され、「多変量ロジスティック回帰モデル」を用いた解析が行われた。そして、先行研究で健康寿命の要因と確認されていたことから、年齢、性別、40種の傷病、そして1日の歩数が説明変数として設定された。その結果、1日の歩数が増加すると、活動制限の調整オッズが減少し、やがてフラットになることが確かめられたとする。さらに、隣り合う歩数間の調整オッズ比は、年齢に関わらず、1日9000歩に達するまでは統計的に有意だったとした。
また1日の歩数が増加すると、自覚的な不健康状態の調整オッズが減少し、やがてフラットになったという。調整オッズ比は、年齢に関わらず1日1万1000歩に達するまで統計的に有意な値が示されたとした。またこれらの結果は、年齢により変わることがないことも確認されたとしている。
今回の研究成果は、国や自治体の健康寿命延伸を目指した保健医療政策や個人の健康増進に貢献できることが考えられるという。なお、歩数が目標値に達しないとまったく健康面のプラス効果がないというわけではなく、一歩でも多く歩くことが、健康寿命を延伸し、心血管病の発症や死亡のリスクを減少させるとしている。ただし、目標値を超えて歩き過ぎても、それ以上の効果は期待できない点にも留意が必要とした。
今回開発されたHCALは、電子カルテや医療介護レセプトデータとの親和性も高く、研究やアプリケーションへの応用など、今後もさまざまな用途で用いられることが予想されるとしている。

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