【決算深読み】バルミューダ決算 Q1赤字も「最速での黒字化」目指す寺尾社長の目論見

2024年5月15日(水)0時11分 マイナビニュース

バルミューダは、2024年度第1四半期(2024年1月〜3月)業績を発表した。
売上高は前年同期比1.9%減の23億5900万円、営業利益が前年同期4億1600万円の赤字から改善したものの、2億3600万円の赤字。経常利益は前年同期の3億5400万円の赤字から、1億6000万円の赤字へと改善。当期純利益は前年同期11億4400万円の赤字から、1億6000万円の赤字へと、大きく赤字幅が縮小した。
同社では、第1四半期の赤字は織り込み済であったが、バルミューダの寺尾玄社長は、「新製品の投入やリニューアル製品の投入により、国内は増収に転じ、全体での売上高は前年並を確保した。また、黒字化施策の効果により、営業損失は大きく改善している。円安が進行しており、これがネガティブに効いているが、売上総利益率は前年同期を上回っている。固定費の圧縮も進んでいる。通期黒字化に向けて順調なスタートを切ったと判断している」と総括した。
為替予約の実施による為替差益の計上や、前年同期には携帯電話事業の終息に伴う特別損失があったことの反動があり、最終赤字幅が大きく改善していることは、数値上では明るい材料といえる。
「バルミューダにとって、重要な経営指標のひとつが売上総利益率であるが、前年同期は31.1%であったものが、31.3%となっている。ほぼ同じ水準であるが、前提となっている為替レートが、前年同期は132円であったのに対して、今期は149円となっている。原価の見直しや、販売価格施策が効いていることの表れであり、円安への耐性がだいぶついている」と、経営体質が強化されていることを強調した。
2024年度通期の見通しは据え置き、「最速での黒字化」目指す
第1四半期のカテゴリー別の売上高は、キッチン関連が前年比17.6%増の18億7900万円、空調関連は同26.1%減の3億4000万円となった。また、国内事業の売上高は前年比8.8%増の18億9000万円となったが、韓国では32.7%減の2億1400万円、北米では7.6%減の1億900億円と、マイナス成長になった。韓国では、前年同期に炊飯器の投入があったことの反動がマイナスに影響しているという。
一方、2024年度通期(2024年1月〜12月)の業績見通しは、前回公表値を据え置き、売上高は前年比1.4%増の132億円、営業利益が1億5000万円と黒字転換を見込むほか、経常利益は1億5000万円、当期純利益は1億円と、いずれも黒字転換を計画している。
「2023年度は、円安やコロナの影響、成長戦略の見直しなどにより、収支バランスが取れていない状況だった。収支バランスを取り戻し、2024年度は、なんとしてでも、通期で黒字化する計画である。その姿勢に変更はない。厳しい環境下でも、持続的に成長可能な事業基盤を確立する」と意欲をみせた。
同社では、投入した新製品の販売効果が期待できる第2四半期に、営業黒字化を見込んでいる。
バルミューダは、急激な円安の影響、コロナ禍での巣ごもり需要の反動、携帯端末事業からの撤退という3つの要素によって、2023年度は20億7100万円という大幅な最終赤字を計上した。
「大幅な赤字からの最速での黒字化」(バルミューダの寺尾社長)に向けた改善施策として取り組んでいるのが、「売上総利益率の改善」、「固定費の圧縮」、「家電カテゴリー製品の積極的な展開」の3点である。
「売上総利益率の改善」では、先にも触れたように、円安が進展するなかでも、売上総利益率が微増したという成果があがっている。
「製造コストの低減、価格の改定に加えて、コスト構造を適正にした新製品の投入が効果につながっている」とする。
2つめの「固定費の圧縮」では、組織や人員体制の再構築により、人件費を圧縮。前年比で1億1100万円を削減した成果があがっている。2022年12月には213人の社員数だったものが、2024年3月には145人へと大幅に縮小。「経営方針の変更や、製品の集中などに伴った人員の最適化を行った。そのほかの観点からも固定費の削減に取り組んでいるところだ」という。
3つめの「家電カテゴリー製品の積極的な展開」では、2024年2月にトースターの新たなラインアップとしてReBakerを投入。また、2024年4月には、バルミューダの成長の原点となった扇風機のGreenFanの新製品として、GreenFan Studioを発売。電気ケトルであるThe Potでは新色を発売している。
また、海外市場における製品ラインアップの拡充も進めているという。2024年1月には、韓国市場向けに、The Toaste ProおよびThe Plate Proを出荷。第2四半期には韓国市場向けにGreenFan Studioを投入したり、中国市場向けにオーブンレンジのThe Rangeを投入したりといったことを計画している。
「下期には、日本市場において、複数の新製品の投入を予定している。これらの新製品は、現在の為替レートに耐えうるコスト構造になっており、2024年度の黒字化に向けて、大きな力になる」と述べた。
バルミューダの強みを再び、海外拡大にも意欲
寺尾社長は、モノづくりの考え方についても言及した。
「これまでは1ジャンルで1製品という戦略だったが、トースターでは、新たにReBakerを追加し、ラインアップを増やした。従来の戦略では強い足場がつくれないという課題を感じていたが、レギュラーモデルと上位モデル、価格帯が低いモデルといったように縦軸を持つことで、特定のジャンルにおいて、強いポジションを作る戦略に踏み出している。トースターでの新たなラインアップ戦略はうまく機能していると考えている。いままではひとつのジャンルの製品を出したら、横に飛んだり、斜めに飛んだりしていたが、縦という軸での製品を用意していくことになる」としたほか、「形状やデザインのほか、特許を持っている部品を直接模倣されることもある。とくに海外では大規模に模倣されている例もある。ただ、バルミューダは、家電における優れたデザインの先駆者だと自負しており、その影響で、家電市場全体でデザインが良くなってきたことも感じる。それらの製品がバルミューダの製品よりも低価格で販売されている現状がある。これは、バルミューダの収益性にネガティブな影響があるかもしれないが、我々は、これを超えて販売力を維持しなくてはならない。それができていないという反省がある」とも述べた。
また、サブスクリプションやレンタル、リファービッシュ品などの新たな売り方や、提供方法について、社内では検討していることを明かしながら、「バルミューダが得意とするキッチン家電は、機能保証や衛生上の観点から、相性が悪い部分もある。可能性は追いたいが、よりよい価値をどう提供していくかという観点での検討を進めていくことになる」と述べるに留めた。
そして確かに、寺尾社長が強調するように、第1四半期の売上総利益率の指標を見ても、バルミューダの円安への耐性が高まっていることがわかる。
その一方で、海外ビジネスの拡大にも意欲をみせる。
「海外で作って、日本で販売するというビジネスが大半を占める体制では、円安の影響が大きいが、海外で作って、海外で売れば影響は少なくなる。海外展開の強化についても、準備も進めているところである。従来から取り組んできた韓国に加えて、2023年後半からは東南アジアでの販売を開始しており、想定通りに立ち上がっている。また、今後の大きなターゲットとして捉えているのは米国市場である。先日も米国に行ってきたが、米国のお客様と強い関係を作っていけるという可能性も感じている。米国は、とくに強化していきたい市場であり、今月から実行していきたい。努力のしどころである」と述べた。
かねてから寺尾社長は、「バルミューダの強みは、アイデア、デザイン、エンジニアリングの力である」と語ってきた。業績悪化によって、それらの強みが前面に打ち出しにくい時期が続いたが、投入している製品そのものには、バルミューダらしいものが相次いでいるのは確かだ。
バルミューダの経営体質の強化が、バルミューダの強みを前面に打ち出すことができる構造の再構築につながり、それがバルミューダのブランド価値を再び高めることに直結するはずだ。

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