「Xperia ファン感謝イベント」に潜入 Xperia 1 VIIに「すごい」の声、ソニーが“ファン”との交流を継続する理由
2025年5月19日(月)6時5分 ITmedia Mobile
「Xperia ファン感謝イベント」にて展示されたハイエンドモデル「Xperia 1 VII」
会場となったのは東京都渋谷区の「TRUNK BY SHOTO GALLERY」で、当日は当選した70人が参加。Xperiaの開発者が最新機能を紹介し、来場者が実際に体験できる機会を設けるなど、日頃は一般の人が聞けない話を聞ける貴重なイベントだった。
●プロモーション動画はナレーション込みで分かりやすく、体験と1to1でのコミュニケーションを重視
まずソニーが会場で流したのは、ハイエンドモデル「Xperia 1 VII」のプロモーション動画だ。来場者の多くは動画が投影されたスクリーンを真剣なまなざしで視聴し、中には手持ちのXperiaとどう違うのかを早速見比べながら動画を見ていた人もいた。
動画の内容を文字に起こすと、「本物だけが生み出せる感動がある。一瞬の美しさが永遠の記憶にカメラ、音に込められた思いまで、耳元で響き渡るオーディオ、太陽の下でも全てが色鮮やかなディスプレイ。そのリアルが感情を直撃する」というもの。
プロモーションビデオは過去のモデルでも制作されているが、Xperia 1 VIIのプロモーション動画では、「撮る・見る・聴く」という3つの体験に重視していることを、スペックや専門用語を用いずに表現した。
従来の「映像と音楽のみで魅せる」形式の動画とは異なり、Xperia 1 VIIの動画にはあえてナレーションが挿入されている。この点からも、より明快かつ直接的な訴求を意図していることがうかがえる。
続いて、ソニー モバイルコミュニケーションズ事業部 副事業部長 太田和也氏が登壇し、「好きを極めたい人々に、想像を超えたエクスペリエンスを」というブランドビジョンを掲げていることや、Xperiaというブランド名称について「体験=Experienceと、ラテン語で場所=IA」を組み合わせたものだと紹介した。
来場者70人全員が参加できたXperia 1 VIIの体験ツアーはファンイベントのメインで、先に挙げたプロモーション動画の内容をさらに深掘りできた。
実機の外観を確認でき、実際に操作できる実機展示コーナーでは、2022年発売の「Xperia 1 IV」以来、約3年ぶりに復活したパープルが注目の的になっていた。先代の「Xperia 1 VI」のスカーレットと見比べて、ライティングのもとで色味がどう異なるのかを熱心に確かめている人もいた。
●カメラとオーディオの実力を体験 「すごい」との反応も
カメラの体験コーナーでは、カメラを構えておくだけで、広い画角となる「引きの画」と被写体にクローズアップする「寄りの画」を同時に記録できるオートフレーミングという新機能や、超広角カメラのセンサーサイズの拡大などの説明を丁寧に聞くことができた。
ソニーは、センサーサイズがXperia 1 VIから2.1倍に大型化したことだけでなく、「光の取り込み量が多くなり、より明るい写真を撮影できるようになった」と具体的なメリットを紹介し、フルサイズ(センサーのデジタルカメラ)に迫るような暗所性能だとアピール。
Xperia 1 VIIで撮影したみなとみらいの夜景も作例として示し、大画面のモニターでもノイズが少なく、ダイナミックレンジも広く確保されていることを確認できた。画質チューニングやαシリーズで培ったイメージング技術を活用し、「見たままを自然に表現する」ことを非常に重視しているとも説明した。
説明の直後、Xperiaのカメラアプリを起動して「写真モード」で超広角カメラ(0.7x)を選択し、暗所での撮影を体験してみると、「塗り絵っぽさや本来の色味と懸け離れる過度な誇張を避け、色の再現性についても自然に見えるよう設計されていること」がうかがえた。
実際に新旧と世代の異なるXperiaで撮り比べている人もおり、Xperia 1 VIIの撮影性能に「すごい」と発言し、驚きを隠せない人もいた。
他にも、LとRのどちらからもユーザーへダイレクトに音を届けるフルステージステレオスピーカー、ウォークマンのハイエンドモデル「NW-WM1ZM2」(ソニーストア価格は44万円)と同じ高音質部品を採用して有線イヤフォンでもリアリティーのある音を聴けること、背面の照度センサーによりディスプレイの明るさや色域、色温度が場所ごとに適した表示となることなど、体験を通じて丁寧に理解を深めることができた。
●なぜいまソニーが「ファンとのつながり」に注力しているのか
このように、Xperia ファン感謝イベントはとにかく体験重視のイベントで、一般の人にとってはメディアの人間以上に貴重な機会なのではないだろうか。カタログやスペックだけでは分からないことを実感できるため、筆者としてもこのようなイベントは重要だと感じた。
ソニー モバイルマーケティング部門 マーケティングコミュニケーション部 統括部長の湯原真司氏は、Xperia ファン感謝イベントは「いまソニーが注力している取り組みの1つだ」と打ち明けた。加えて、本文の冒頭でも触れた通り、日本でのXperia発売15周年を記念したものでもあり、今後の開催はないのか? とも感じてしまったが、ソニーはこうした機会を可能な限り作りたいそうだ。
ソニーが今回、ファンイベントを開催する理由の1つにマーケティング手法が挙げられる。商品を売っていくためのシェアマーケティング(市場シェアの拡大)から、今後は「カスタマーマーケティングを重視していく方向性だ」(湯原氏)という。
カスタマーマーケティングとは既存の顧客に向けたアプローチを重視する手法で、「2024年までソニーマーケティングの会長を務めた粂川滋氏によって、カスタマーマーマーケティングの考え方がソニーの社内でも浸透している」と湯原氏は語る。
湯原氏は、マーケティング手法をシフトする中で、「新規顧客を獲得することを全く無視するわけにはいかない」としつつも、「既存の顧客にいかにXperiaを気に入ってもらい、再購入(リピート)していただくかを重視している」とも話す。
「現在、Xperiaを購入しているお客さまの半分以上が既存顧客というサイクルになっており、既存の顧客をいかにしてつなぎとめるか、何度も継続して購入してもらうことがテーマになっている」(湯原氏)
それゆえ、日本での発売から15年も続いているXperiaブランドや商品性をファンに向けて丁寧に説明し、さらにはソニーで商品企画に携わるチームとファンの関係性を深めていく「ファン エンゲージメント」にも直結しているようだ。「まずはファンの方々に上質な体験や情報を適切なタイミングで届けていくことを強く意識している」と湯原氏は続ける。
●ファンとの交流を「丁寧」に、ソニーが用意した会話のきっかけ
特に意識しているのは、こうしたイベントを通じて、「ファンの声を聞く」ことだという。実は今回のXperia ファン感謝イベントも「ファンの声を聞くのが最大の目的だ」と湯原氏。ファンの声をただ聞くだけではなく、「次の商品やサービスに反映し、さらにイベントなどでファンからのフィードバックを得る」と、サイクル化していく考えも示す。
イベントの開催を機にファンが増え、SNSなどで口コミが広がれば、「確かにいいね。自分も使ってみよう、買ってみよう」という動機にもなり、「その共感が広がれば、Xperiaファンの方々の喜びにつながる」(湯原氏)という。このいわゆるサイクル化は、「われわれが1年ほど前から強く意識している」ことでもあるそうだ。
湯原氏は「私たちがファンとのエンゲージメントを深め、かつXperiaファンの方々の経験を他のユーザーに広げていく場を提供する。このファンエンゲージメントプラットフォームを構築していくことが現在の私たちの意識であり、その代表的なものが今日のイベントだ」と開催の狙いを話す。
ファンとの交流を「丁寧」に行っている点も、ファンとのつながりを意識してのことだろう。湯原氏は会話のきっかけになったネームプレートを例にこう語る。「今回は事前に実施したアンケートをもとに、お客さまのハンドルネームとこれまでご使用の機種名をプリントしたネームプレートを準備した」(湯原氏)
「ちなみに、われわれソニー側の人間もそれぞれが担当している業務や思い入れのある機種名を記載したネームプレートを持参した。これだけで会話が進むし、実際に私は3人の方と会話し盛り上がった。このような(お客さまとの会話の)きっかけを多く用意した」(湯原氏)
湯原氏は「今回のイベントには約70人のお客さまが来場しているが、その半数以上と直接対話できる関係を築けているのは、日本のメーカーにとって大きな強みだ」と胸を張り、「自信を持ってXperiaを拡げていくアクティビティーにもなる」と続ける。
同様のイベントは日本国内のみならず、海外でも展開しており、「台湾では2日前にも同様の発表イベントを開催した」そうだ。「台湾での発表イベントではファンの方々にお集まりいただき、製品体験の機会を提供したところ、非常に好評だった。その際には、日本のエンジニアと企画担当のマネジメントレベルの2人が直接お客さまの接客を行った。こうした活動を日本国内だけでなく、海外でも積極的に実施していこうと考えている」(湯原氏)
●過去のイベントからどうアップデートしたのか イベントは今後も開催へ
湯原氏はこれまでスペシャルイベントとして開催していた体験会からアップデートした内容も語る。
「以前はスペシャルイベントとして新商品体験会を開催しており、新商品を展示し、体験コーナーを設けて自由にご覧いただく形式だったが、今回はツアー形式での体験とし、開発企画担当者と直接話しながら体験していただけるようにした。少人数ごとのユニットに分かれて、製品を体験しながら、それを開発した担当者と直接会話できるようにした」(湯原氏)
「さまざまな『おもてなし』を用意した点も今回のイベントの重要なポイントだという。「懇親会では和やかな雰囲気の中、立食ビュッフェ形式でお食事を楽しめるようにした他、Xperiaファンの方々が喜ぶようなお土産(ノベルティー)も用意した」(湯原氏)
ソニーはイベントの存在や交流の場があることを周知することも兼ねて、5月15日のXperia ファン感謝イベントの模様をレポートし、特設サイトで21日に公開する。「急ピッチで準備を進めており、お客さまからの反響やご意見、そしてそれらを今後の開発に生かしたいと考えている点なども共有したい。また、キャストの声についても、いい意見だけでなく、『ここはもっとこうしてほしかった』という率直な意見も当然載せる」(湯原氏)
今日のXperia ファン感謝イベントは今日で終わりではない——。湯原氏はこのようなイベントを今回限りではなく、継続していく考えで、第2弾の開催時期としては2025年9月頃としており、東京だけでなく日本国内の他の場所でも実施する。例えば、ヘッドフォンに興味を持ってもらい、スマートフォンをXperiaにしてもらう、という流れを作るべく、Xperia以外のソニー製品でも同様のイベントを実施していくという。