東奔西走キャッシュレス 第70回 中小事業者は2%以下に、クレジットカード決済手数料引き下げの影響は
2024年12月13日(金)18時13分 マイナビニュース
●キャッシュレス決済の手数料をめぐる近年の状況
中小事業者がキャッシュレス化を進める際、その障害になってきたのが「加盟店手数料(決済手数料)」の問題です。この問題に対して経済産業省は、2019年10月からキャッシュレス・消費者還元事業を推し進め、さらに2回に渡るマイナポイント事業も実施。店舗側の端末導入に補助金を出すなどの取り組みを進めていました。
その結果、日本のキャッシュレス決済比率は2023年に39.3%に達しました。「2025年までに4割」という目標の達成は間違いなく、これをさらに拡大することが次の目標となるでしょう。
そうした中で、決済事業者各社が中小企業向けの決済手数料を値下げする動きを加速しています。今回はそんな各社の動きをまとめてみました。
○キャッシュレス決済の手数料をめぐる近年の状況
2019年のキャッシュレス・消費者還元事業では、加盟店に対して国が2/3、決済事業者が1/3を補助することで決済端末の無償提供が行われ、さらに加盟店手数料の1/3が国から補助されました。この時、加盟店手数料は「3.25%以下」に引き下げることが条件だったため、加盟店にとってはおおむね2.16%程度になっていたようです。
当時、この2%強の手数料であればキャッシュレス化ができるという加盟店の声もあり、手数料が2%を下回ればキャッシュレス化が一気に加速する可能性も感じられました。還元事業実施後の2021年から2022年にかけては、こうした加盟店手数料に関わるクレジットカード業界のコスト構造の分析が進み、手数料率の引き下げに向けた検討も進められました。
その後、2022年11月にはクレジットカードのインターチェンジフィーが公表され、2023年6月にはクレジットカードの加盟店手数料の配分率を国際ブランド(JCB)が公開しました。こうした取り組みの中で、公正取引委員会も「クレジットカードの取引に関する実態調査」を公開するなど、国の取り組みも続けられてきています。
以前は業種などによって加盟店手数料が異なるという不透明な面もありましたが、mPOS事業者などは3.25%程度の固定の手数料で展開され、中小店舗などではこうした手数料率も広まっています。
その間、利用拡大を目指したPayPayなどのQRコード決済陣営が加盟店手数料の無料化でシェアを拡大。しかし2021年10月からPayPayも2.18%の手数料を徴収するようになりました(月額2,178円の「PayPayマイストア ライトプラン」に加入すると1.76%)。
コード決済各社がクレジットカードと同様に手数料を設定したことで、複数の決済手段を加盟店に提供する決済代行業者では、おおむねどの決済手段も3%前後の構造になっています。
●各社が中小事業者向けの手数料を2%台に引き下げ
○各社が中小事業者向けの手数料を2%台に引き下げ
こうした流れの中で2024年、各社が中小事業者向けの手数料の引き下げを進めています。
Squareは11月からVisa/Mastercardで手数料を2.5%に引き下げました。同社はさらに2025年1月21日から、JCBやアメリカン・エキスプレスなどの手数料も2.5%に引き下げます。対面のみで年間キャッシュレス決済額3,000万円以下などの条件はあり、新料金プランの加入が必要ですが、条件を満たすのであれば手数料は2.5%に下がります。
STORESは、12月からSTORES決済の「中小支援プラン」(月額3,300円)で、Visa/Mastercardで1.98%、JCB/アメリカン・エキスプレスなどは2.38%の手数料としています。このプランの場合、19,800円の決済端末が無償、月額4,950円のSTORESレジベーシックプランも無料になるため、3,300円が単純に追加コストとなるわけでもないようです。
リクルートのAirペイでは12月2日から手数料を3.24%から2.48%に引き下げる「決済手数料ディスカウントプログラム」を提供。Visa/Mastercard/JCB/アメリカン・エキスプレスなど、クレジットカード全ブランドが対象という点は強み。決済金額の条件が、各ブランドで年間1,000万円以下または2,000万円以下となっていますが、審査に通れば月額固定費0円は変わらず、単純に手数料が下がります。
三井住友カードは11月1日以降に新たにキャッシュレス決済を導入した場合で、一定の条件を満たせば「stera tap」「stera pack」におけるVisa/Mastercardの手数料が1.98%になります。
「stera pack」は月額3,300円、手数料2.70%(Visa/Mastercard、JCBなどは3.24%)でサービスを提供。これに「スモールビジネスプラン」が追加され、年間2,500万円以下などの条件でVisa/Mastercardが1.98%、JCBなどが2.48%になります。また利用料6 か月間実質0円の「stera packスタートキャンペーン」も用意されます。
スマートフォンを決済端末として利用する「stera tap」でも、Visa/Mastercardが1.98%、JCBなどが2.48%となります。
ダイニーは、飲食店向け決済サービス「ダイニーキャッシュレス」で、一定の条件を満たせば手数料が最大1.888%になる「個店プランを提供。Visa/Mastercard/JCB/Dinersが対象で、年間2,000万円以下(Visa)、1,000万円以下(その他)といった条件があります。
楽天ペイメントは、楽天らしく「最強プラン」と銘打って、12月から「楽天ペイ」実店舗決済において手数料を2.20%に引き下げ。QRコード決済の楽天ペイ、クレジットカードのVisa/Mastercard/JCB/Diners/Discoverの手数料を3.24%から2.20%にします。
月額2,200円(25年12月まで無料)のスタンダードプランと月額0円のライトプランがあり、スタンダードだと手数料2.20%になり、ライトプランでも上記決済手段なら2.48%になります。それ以外は3.24%などとなっています。
スタンダードのキャンペーンは1年ですが、2年以上プランを利用しないと違約金が発生するといった注意点もあります。いずれのプランでも、現在は決済端末の0円キャンペーンを実施中です。
こうした各社の取り組みで、中小店舗や個店のキャッシュレス化がさらに進むのでしょうか。もちろん、決済手数料だけがキャッシュレス化を阻む要因ではありませんが、こうした取り組みに加え、2025年は大阪・関西万博も控えており、この1年の動向が注目されます。
小山安博 こやまやすひろ マイナビニュースの編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。最近は決済に関する取材に力を入れる。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、PC、スマートフォン……たいてい何か新しいものを欲しがっている。 この著者の記事一覧はこちら