金正恩の処刑命令を実行した「巨漢兵」たちの正体
北朝鮮国内にいるデイリーNKの軍高位情報筋によれば、北朝鮮は今年1月中旬、デモ鎮圧を任務とする大隊規模の護衛部隊を新設したという。
「41大隊」と命名された新部隊の編成は護衛司令部が主導し、優秀な人材900人余りを選抜。7個中隊編成で、平壌・牡丹峰(モランボン)区域の北塞洞(プクセドン)に本部を置いている。部隊にはすでに最新の装備が支給され、最小限の任務遂行に必要な準備を終えた状態だという。
護衛司令部は、北朝鮮における超エリート部隊であり、対象者は朝鮮労働党の組織指導部護衛総局、通称「5課」で選抜される。韓国紙・朝鮮日報が以前報じたところでは、金正恩総書記の第1線警護(身辺警護)は護衛司令部、第2線は国家保衛省と朝鮮人民軍保衛局、第3線の外郭警護は社会安全省(警察)が担当する。
金正恩氏は2015年8月にスッポン養殖工場を視察した際、現場の管理不備に激怒し、その場で支配人の処刑を命じた。脱北者で東亜日報記者のチュ・ソンハ氏が北朝鮮国内の噂として伝えたところでは、このとき金正恩氏が命令するや、電光石火の動きで支配人を連れ去ったのが、身長180センチをゆうに超える巨漢の護衛兵たちだったという。ちなみに、金正恩氏は自らが激怒したときの映像を公開している。
それにしても、北朝鮮がここへ来てデモ鎮圧部隊を新設したのはなぜなのか。
前出の情報筋によれば、北朝鮮ではこれまで、金日成主席と金正日総書記の遺体が安置された錦繍山(クムスサン)太陽宮殿に配置された護衛司令部傘下の2個大隊が、デモ鎮圧の任務を帯びていた。今回、デモ鎮圧の専門部隊が別途編成されたことについて情報筋は「目的を特化した部隊の設置により、騒乱やデモを速やかに鎮圧しようというもの」だとしながら、「新部隊は今後、革命の首脳部がある平壌での異常事態発生を抑止すべく、強大な権限を行使していくはず」と語っている。
北朝鮮国内では、長期にわたる経済制裁や新型コロナウイルス対策の国境封鎖により、慢性的な経済難がいっそう深刻化していると見られる。当局は、いずれ国民の不満が危険水域に達し、不測の事態に発展し得ると考えているのかもしれない。
それにしても皮肉なのは、同部隊新設を指示する最高司令官命令が、金正恩氏が「以民為天」――民を以て天と為す――というスローガンを掲げた朝鮮労働党第8回大会の直後に出されたということだ。同党のスローガンを額面通りに受け取る人はほとんどいないにせよ、言葉と正反対の行動には、呆れるよりもむしろ戦慄を覚える。
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