金正恩は米大学生が「歯がズレて死亡」した理由を知っている
米バージニア大学生のオットー・ワームビアさん(当時22歳)が北朝鮮に長期拘束された後、昏睡状態で解放され、その直後に死亡した問題を巡りトランプ米大統領が非難を浴びている。
米朝対話の「危機」に
トランプ氏はハノイでの米朝首脳会談でこの問題に言及。すると金正恩党委員長が「この件を非常によく知っているが、後になって知ったのだ」と語ったと明かし、「私はその言葉をそのまま受け入れる」と述べていた。これに、米国の世論が反発。さらにはワームビアさんの両親が非難の声を上げたのだ。
筆者はこの問題が、いずれ米朝関係に暗い影を落とす可能性を以前から指摘してきた。
米ワシントンDCの連邦地裁はすでに、ワームビアさんが北朝鮮から拷問を受けていたことを認定している。
その有力な証拠のひとつは、2014年からワームビアさんの歯の治療に当たっていたタッド・ウイリアムス博士が同地裁に提出した複数の写真だ。その写真とは、北朝鮮で拘束される以前に撮られた、ワームビアさんの下の歯が見える顔写真とX線写真、そして死亡後の検視の際に撮影された頭蓋骨のスキャン画像の3枚だ。
たしかにこれらを見比べると、拘束前のワームビアさんの歯並びはきれいなのに、スキャン画像では下の中央の歯2本が歯列の内側へ大幅に移動していることがわかる。
連邦地裁はこうした証拠を根拠に、ワームビアさんの両親が起こした損害賠償請求訴訟で、北朝鮮に対し5億0100万ドル(約552億円)の支払いを命じている。つまり、この問題は法的な解決が求められているのであり、トランプ氏が金正恩氏の言葉を「受け入れた」らそれでいいという風にはいかないのだ。
そもそも、北朝鮮の絶対的な独裁者が、こうした問題について「知らなかった」といったからと言って、簡単に信じるわけにはいかないのだ。発生当時はまだしも現在ならば、ワームビアさんの身に何が起きたかをすべて知っていて当たり前だ。
米国は、法と世論の国だ。いかに強力な大統領であろうと、それを踏みにじることができないのは、トランプ氏の「ロシア疑惑」を見ても明らかだ。
それでも、トランプ氏がこの問題についてもう少し上手く言及していれば、傷はまだ浅くて済んだかも知れない。しかしこのような展開になると、非核化の脇に追いやられていた北朝鮮の人権問題に、改めて焦点が当たりかねない。
そうなったら、それがさらに重い足かせになり、米朝首脳の直接対話が今まで以上に難しくなるかもしれない。
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