食用よりも防犯…犬を飼う人が増えた北朝鮮
フランスの女優、ブリジット・バルドーが、韓国のMBCラジオの電話インタビューで「韓国人は犬を食べるな」「文化ではなく野蛮だ」と主張を繰り広げた後で、キャスターの反論に激怒し、電話をガチャ切りするという一件が起きたのは2001年11月のこと。
それは逆に、犬肉が伝統的な食文化として持ち上げられる結果をもたらしたが、それから20年。文在寅大統領は先月27日、動物愛護団体の陳情を受けて、犬肉の食用禁止について慎重に検討すべきではないかと述べた。韓国人自らが犬を食べる文化を葬り去ろうとしているのだ。
一方の北朝鮮では、犬肉が重要なタンパク源として珍重されている。農耕用として使うため牛の屠畜が禁じられていることも影響しているだろうが、何よりも食糧供給が充分でない状態が長年続いていることが一番の理由だろう。
家で犬を家畜として育て、売りに出すのは当たり前の光景だが、犬を買う理由はそれだけではない。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、おりからの経済難で窃盗が多発し、食用ではなく防犯用として犬を飼う家が増えていることを伝えている。
南浦(ナムポ)市のある住民は、窃盗が増加し、人々は昼間に短時間、家を空けることすら恐れているほどだと伝えた。港口(ハング)区域で多発している手口は次のようなものだ。
犯人は、深夜に住民が寝静まった時間を狙い、鉄製の扉や窓をバールのようなものでこじ開け、住民のいる部屋に堂々と侵入。食糧、テレビ、自転車など金目のものを一切合切奪っていくという極めて大胆不敵な犯行を重ねている。
驚かされるのは、住民が犯行に全く気づかず、寝入っていたということだ。以前、平壌総合病院の建設現場で働く軍の兵士が、近隣の家に忍び込み、特殊ガスを撒いて家人を動けなくしてから窃盗に及ぶという事件が発生した。今回の事件を聞きつけた人々の間でも「寝ている人が起きないように何らかの薬を撒いて犯行に及んだのではないか」と噂されているという。
安全部(警察署)に通報しても、現場検証にやって来るだけだ。捜査はしているというものの、「泥棒を捕まえたという話はほとんど聞いたことがない」(情報筋)というのが実情。人々は、防犯も「自力更生」で行わざるを得ず、金持ちはシェパードを防犯用として飼い始めた。
メスのシェパードを飼っている家には、子犬を手に入れようとする人からの予約が数多く入る。どこから手に入れたのかは不明だとのことだが、軍や安全部で飼っている軍用犬の子犬を飼っている家もいるとのこと。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)の情報筋によれば、コロナと国境閉鎖の長期化そのものよりも、窃盗事件の増加が人々の心配事となっている。親戚や信じるに足る人を現金やトウモロコシで雇い入れて留守を守らせており、人民班(町内会)でも警備を行ってはいるが、老人や街頭女性(専業主婦)がほとんどで役に立たないと、現地の状況を伝えた。
最近では、石を入れたリュックで女性を殴りつけ、乗っていた自転車を奪う強盗事件が発生したが、犯人は一部始終を目撃していた人々により捕まったという。自転車は1台40万北朝鮮ウォン(約8800円)以上もするため狙われやすい。情報筋の友人も、職場に停めていた自転車が、昼食を取る間に鍵をペンチで切られ盗まれたという。
そんな状況でも安全部は役に立たず、「偉そうに振る舞い、住民を統制しいじめることは得意でも、社会的雰囲気を乱し、人々を奈落に陥れる泥棒は捕まえられない」と情報筋は批判した。
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