絶糧世帯に陥った北朝鮮の夫婦、養子を泣く泣く孤児院に送り返す
北朝鮮の食糧事情は、前年に収穫した作物が底をつく春から初夏にかけて最も深刻となり、麦やジャガイモの収穫が始まる夏に幾分ましになり、コメやトウモロコシの収穫が行われる秋には豊かな季節が到来する――というのが、例年の流れだった。
ところが、近年深刻化する自然災害などで、収穫量が年々減少。特に今年の場合は、コロナ対策としての貿易停止で、必要な営農資材が得られなかったことも重なりいっそう深刻な不作となった。秋になっても食糧難が解決する気配はない。
そんな中で、中国と国境を接する新義州(シニジュ)から悲しい情報が伝わってきた。
平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えたのは、新義州市内に住む40代夫婦の話だ。結婚から何年経っても2人の間には子どもができなかったため、2017年に愛育院(孤児院)から2歳の女の子を養子として迎え入れた。
なお、血縁を重要視する朝鮮の伝統的な価値観では、他人の子どもを養子に取ることはあまりない。夫婦がいかに子どもを望んでいたが垣間見える。
実際、夫婦は女の子を大切に育て、周りの人々は血のつながった子どもと思うほどだったという。
状況が一変したのは2020年。北朝鮮当局は、新型コロナウイルスの国内流入を防ぐために国境を封鎖し、貿易を停止した。貿易都市として北朝鮮の中では比較的豊かだった新義州は大不況となり、やがて食糧が不足し始めた。
そんな中、妻は今年5月、病気となり大手術を受けることとなった。北朝鮮では医療は無料ということになっているが、実際はワイロや薬代など様々な費用がかかる。これにより、一家の経済状況はさらに苦しくなった。
「最近のように何でも値上がりした状況で病気になれば、お金のない人はそのまま死ぬしかない。儲けのない状況で、有り金で病気を治療して生活も維持しようとすれば、深刻な生活苦に襲われる」(情報筋)
10月になってからは、1日に何も口にできない日が増え、やがて絶糧世帯(食べ物が底をついた世帯)となった。子どもも何も食べさせてもらえず、栄養失調になってしまった。
結局、夫婦は子どもを愛育院に返すという悲しい決断を強いられてしまった。それを知った地域住民は、現状を嘆きつつ、非常に残念がっているとのことだ。
生活苦で子どもを捨てるという選択をする親もいる中で、最後まで子どもを守ろうとしたが、泣く泣く手放さざるを得なかった心優しき夫婦。「子どもたちはわが国の宝」と言った、故金日成主席の言葉が虚しく響く。
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