「復旧するにも設備がない」北朝鮮の事故駆逐艦に悲観的な現地住民

2025年5月31日(土)5時2分 デイリーNKジャパン

進水に失敗して横倒しになった北朝鮮の新造駆逐艦の復旧作業が「遅れ気味」であると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。


北朝鮮国営の朝鮮中央通信は23日、排水と艦首分離による均衡回復に2〜3日、舷側の復旧に10日余りを要するという、事故調査グループの見解を伝えている。北朝鮮当局は、すでに朝鮮労働党軍需工業部の副部長と造船所支配人らを拘束している。仮に、艦の復旧が大幅に遅れたり、完全に失敗したりすれば、関係者に対する大量粛清につながりかねない状況だ。


RFAによれば、米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)の北朝鮮専門メディア「ビヨンド・パラレル」は26日に撮影された衛星写真に基づき、「浸水した海水を除去し、約10日以内に船主を分離するという目標は楽観的だが、艦を進水前の状態に復元することは難しい」としたうえで、「艦を垂直に立てた後、電線や装備の交換、塩水による腐食除去など、相当な作業が必要だ」と分析している。


一方、韓国の予備役海軍大佐であるチェ·イル潜水艦研究所長はRFAに対し、6月下旬に開かれる党中央委員会総会までに、駆逐艦を水に正常に浮かべるなどの作業は終えられるかもしれないが、駆逐艦を完成品レベルの状態にできるかどうかについては具体的な予測が難しいと述べている。


しかし、現地住民の予想はより悲観的だ。咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋はRFAに対し、「国内の新聞や放送では『事故はあったが被害は大きくない』と報じられ、現在復旧作業が進行中だとしているが、実際は簡単ではない」と語ったうえで、「横倒しになった艦を起こすには大型クレーンが必要だが、この造船所にはそのような設備がない」と話した。


「海上クレーンを使うこともできるが、艦が倒れている造船所の埠頭は狭く、複数のクレーン船を配置するのが非常に困難だ。しかも、造船所の埠頭は海と直接つながっておらず、狭い水路を経て陸地奥深くに位置しているため、巨大なクレーン船を(いかにして)現場まで持ってくるかが問題だ」と付け加えた。そのため、造船所の埠頭へと通じる狭い水路を拡張する作業が進められているとのことだ。


この見立てが正しければ、大量粛清の可能性はいよいよ高まってくる。



なお、この造船所は、1937年に設立された「清津造船鉄工所」と「咸北造船鉄工」が、朝鮮戦争後に旧ソ連からの援助で復旧、統合、拡大されたものだ。日本海に流れ込む輸城川(スソンチョン)河口付近の潟湖を締め切り、一部を埋め立ててドックとしているが、外海に出る部分は潟湖であった当時の地形がそのまま残されており、航路が狭くなっていることが衛星写真からも確認できる。

デイリーNKジャパン

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