JAXA、EarthCARE衛星(はくりゅう)による初のシナジー画像を公開
マイナビニュース2024年10月7日(月)7時15分
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月4日、2024年5月に打ち上げた日本と欧州宇宙機関(ESA)が共同で進めている雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星(はくりゅう)の運用状況に関する説明会を開催。4つのセンサのうち、JAXAのレーダーとESAのLiDARの画像を組み合わせた初のシナジー画像の公開などを行った。
EarthCAREは、雲・エアロゾルの分布や鉛直構造、大気上端における放射収支エネルギーを全地球的に観測することで、数値気候モデルの改良に必要なデータを継続的に収集し、気候変動予測の精度向上に貢献することを目的としたミッション。日本が開発した「雲プロファイリングレーダ(CPR)」とESAが開発した「大気LiDAR(ATLID)」、「多波長イメージャ(MSI)」、「広帯域放射収支計(BBR)」という4つの観測センサを搭載した観測衛星であり、これら4つのセンサを単体、ならびに複数同期(シナジー)させた観測を行うことができるという特徴がある。
2024年5月28日(いずれも世界標準時)に打ち上げられた後、CPR主反射鏡の展開を翌29日に実施。30日にはESAのクリティカルフェーズを終了したほか、6月11日には衛星バスの初期機能確認を完了。6月12日よりCPR観測モードに移行し、6月27日に初画像を公開。その後、9月20日にCPRの初期機能・性能の確認完了を経て、検証チームへのデータ配布が開始された。また、ESA側のセンサについても、7月から8月にかけて取得画像の公開が行われている。
現在、初期校正検証運用の段階にあり、情報通信研究機構(NICT)により、CPRの取得データから誤差を減らし、より正確になる様に校正作業が2024年12月/2025年1月まで進められる予定(ESAのセンサはESA側で校正が進められる)。この初期校正運用の完了が確認された後、JAXAでは2024年12月より、ESAでは2025年1月より、定常運用へ移行する予定としている。
高精度な測定を実現するうえで重要となる校正
はくりゅうは現在、2024年末までの予定でレーダーの性能評価とし、想定通りの電力で送信できているか、正しいレベルで受信できているか、想定通りのビーム形成ができているか、を確かめるための外部校正が進められている。
また、今後も定期的に外部校正を行うことで装置の健全性と経年変化を知ることができるようになるほか、将来の新たな衛星計画に向けたノウハウの蓄積にもつながることが期待されている。
その外部校正は、地上に設置した3台の能動型校正器(Active Radar Calibrator:ARC)にて、CPRの電波を受信。一定の遅延をかけてEarthCAREに送り返し、遅延を受けた電波をCPR側で受信することで、正しい電力で送電できているのかをARC、CPRの両方で把握することができるようになり、精度を保つことが可能となる。こうした外部校正について、情報通信研究機構(NICT)の研究チームでは、2025年3月までは月2回の頻度で校正を行う予定としているほか、ミッション期間が終わる2027年6月までは月1回の校正の実施を行う予定としており、こうした取り組みを通じ、水平距離の最大誤差0.0041度で測定を行い、衛星速度混入を校正することで、精度1.3m/sを目指すとしている。
高精度観測で実現されるシナジー観測
はくりゅうの最大の特長は4つの観測装置から得られたデータを複合的に組み合わせた情報をプロダクトとして提供できるという点。CPR、ATLID、MSI、BBRの4種類の観測センサが1台の衛星に搭載されるのは世界初だという。これら4種類の観測センサは同期して観測することが可能なため、観測時における対象の場所と時間が4つのセンサともにほぼ一致した観測データとして同時に取得し、シナジーを発揮することができる。
今回、JAXAが初公開したシナジー画像は、2024年8月28日の午前2時(日本標準時)に観測した台風10号を観測したもの。水平方向は分解能500mというMSIによる約150kmほどの観測幅だが、高さ方向については高度15kmよりも高い部分はATLIDのみが観測できる領域で、15km~2.5km程度の範囲はCPR/ATLID両方が観測可能、そしてそれよりも下の台風本体の雲の部分がCPRのみでの観測となり、2つを組み合わせることで高精度な観測を実現したとする。
また、2014年に打ち上げられ、現在も観測を続けている「全球降水観測(GPM)主衛星」には二周波降水レーダ(DPR)が搭載されているが、この台風10号に対して、DPRでも観測をはくりゅうと5分程度の誤差で観測を実施しており、2機の衛星が取得した画像を重ね合わせたところ、同じ雨雲の中の雨と雨になる前の雪の付近まではDPR、その上の雲部分をCPRで観測できていることも確認。雲から雨までの包括的な観測が可能であることも示されたとしており、JAXAでは、今後もはくりゅうのシナジー観測により、気候変動メカニズムの解明、気候モデルの検証・改良、気象や大気環境の予測改善に貢献していきたいとしている。
特に、CPR/ATLIDのシナジー画像のみならず、エアロゾルに関するシナジー観測や、大気の放射に関するシナジー観測なども実施していく予定としており、これら新たなシナジー観測についても準備が整った段階で公開していくとしている。
EarthCAREは、雲・エアロゾルの分布や鉛直構造、大気上端における放射収支エネルギーを全地球的に観測することで、数値気候モデルの改良に必要なデータを継続的に収集し、気候変動予測の精度向上に貢献することを目的としたミッション。日本が開発した「雲プロファイリングレーダ(CPR)」とESAが開発した「大気LiDAR(ATLID)」、「多波長イメージャ(MSI)」、「広帯域放射収支計(BBR)」という4つの観測センサを搭載した観測衛星であり、これら4つのセンサを単体、ならびに複数同期(シナジー)させた観測を行うことができるという特徴がある。
2024年5月28日(いずれも世界標準時)に打ち上げられた後、CPR主反射鏡の展開を翌29日に実施。30日にはESAのクリティカルフェーズを終了したほか、6月11日には衛星バスの初期機能確認を完了。6月12日よりCPR観測モードに移行し、6月27日に初画像を公開。その後、9月20日にCPRの初期機能・性能の確認完了を経て、検証チームへのデータ配布が開始された。また、ESA側のセンサについても、7月から8月にかけて取得画像の公開が行われている。
現在、初期校正検証運用の段階にあり、情報通信研究機構(NICT)により、CPRの取得データから誤差を減らし、より正確になる様に校正作業が2024年12月/2025年1月まで進められる予定(ESAのセンサはESA側で校正が進められる)。この初期校正運用の完了が確認された後、JAXAでは2024年12月より、ESAでは2025年1月より、定常運用へ移行する予定としている。
高精度な測定を実現するうえで重要となる校正
はくりゅうは現在、2024年末までの予定でレーダーの性能評価とし、想定通りの電力で送信できているか、正しいレベルで受信できているか、想定通りのビーム形成ができているか、を確かめるための外部校正が進められている。
また、今後も定期的に外部校正を行うことで装置の健全性と経年変化を知ることができるようになるほか、将来の新たな衛星計画に向けたノウハウの蓄積にもつながることが期待されている。
その外部校正は、地上に設置した3台の能動型校正器(Active Radar Calibrator:ARC)にて、CPRの電波を受信。一定の遅延をかけてEarthCAREに送り返し、遅延を受けた電波をCPR側で受信することで、正しい電力で送電できているのかをARC、CPRの両方で把握することができるようになり、精度を保つことが可能となる。こうした外部校正について、情報通信研究機構(NICT)の研究チームでは、2025年3月までは月2回の頻度で校正を行う予定としているほか、ミッション期間が終わる2027年6月までは月1回の校正の実施を行う予定としており、こうした取り組みを通じ、水平距離の最大誤差0.0041度で測定を行い、衛星速度混入を校正することで、精度1.3m/sを目指すとしている。
高精度観測で実現されるシナジー観測
はくりゅうの最大の特長は4つの観測装置から得られたデータを複合的に組み合わせた情報をプロダクトとして提供できるという点。CPR、ATLID、MSI、BBRの4種類の観測センサが1台の衛星に搭載されるのは世界初だという。これら4種類の観測センサは同期して観測することが可能なため、観測時における対象の場所と時間が4つのセンサともにほぼ一致した観測データとして同時に取得し、シナジーを発揮することができる。
今回、JAXAが初公開したシナジー画像は、2024年8月28日の午前2時(日本標準時)に観測した台風10号を観測したもの。水平方向は分解能500mというMSIによる約150kmほどの観測幅だが、高さ方向については高度15kmよりも高い部分はATLIDのみが観測できる領域で、15km~2.5km程度の範囲はCPR/ATLID両方が観測可能、そしてそれよりも下の台風本体の雲の部分がCPRのみでの観測となり、2つを組み合わせることで高精度な観測を実現したとする。
また、2014年に打ち上げられ、現在も観測を続けている「全球降水観測(GPM)主衛星」には二周波降水レーダ(DPR)が搭載されているが、この台風10号に対して、DPRでも観測をはくりゅうと5分程度の誤差で観測を実施しており、2機の衛星が取得した画像を重ね合わせたところ、同じ雨雲の中の雨と雨になる前の雪の付近まではDPR、その上の雲部分をCPRで観測できていることも確認。雲から雨までの包括的な観測が可能であることも示されたとしており、JAXAでは、今後もはくりゅうのシナジー観測により、気候変動メカニズムの解明、気候モデルの検証・改良、気象や大気環境の予測改善に貢献していきたいとしている。
特に、CPR/ATLIDのシナジー画像のみならず、エアロゾルに関するシナジー観測や、大気の放射に関するシナジー観測なども実施していく予定としており、これら新たなシナジー観測についても準備が整った段階で公開していくとしている。
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