近代モータースポーツへのアンチテーゼか!? どこまでも油臭く泥臭い映画『フォードvsフェラーリ』選評
封切り初日に観てきました『フォードvsフェラーリ』。結論から申し上げると、モータースポーツファンの期待を裏切らない内容に仕上がっていると思いました。これまでモータースポーツを題材とした映画はどうしてもあらすじよりも、細部の仕上がりへ目がいき、そちらばかりが印象に残り、楽しめないことが多かったというのが個人的印象です。
ありがちなのが、主人公のドライバーとライバルがストレートで横並び、互いをにらみながら「クソ〜」とアクセルを踏み込むみたいなシーン。「レースなのにそこまではなんで全開にしてないの?」とどうしても突っ込んでしまいます。
ところが今回の「フォードvsフェラーリ」のバトルシーンでは、(横を見てはいるものの)ブレーキング競争の心理描写などもあり、ストーリーに没入したまま観続けることができました。
ストーリーの軸を成すのがクルマづくりで、その結果としてレースがあるとした世界観はマニア的には一番の見どころです。現実のレースではクルマづくりがレースから遠くなりつつある昨今、映画製作のプロがそこへ着目したことに勇気づけられました。
テスト走行シーンでは専門用語も平気でポンポン飛び出して、一般女性観客を置き去りにしていないのか心配するくらいです。
ドライバーがレースの主役ではありますが、道具であるレーシングカーづくりの競争がなければ深いストーリーとしては成立しません。その原点を改めて示してくれていることに、大きな意味を感じました。
レーシングカーのワンメイク化や標準化が進んでいくと、車両性能だけでなく車両特性も平準化されて、クルマごとのキャラクターが薄くなり、レース展開やシリーズ展開も単調になりがち。そうした危惧は、コストなどの現実を前にしてかき消されているのが現状で……。話が逸れました。
ストーリーのもうひとつのテーマは、現場とマネージメント間における意見の相違と確執。このあたりにもリアリティを感じました。どの組織でも、どのレーシングチームでも大なり小なり抱える問題であり普遍のテーマなのかもしれません。
全編に渡って、レース裏側の油臭く、泥臭い面白さにスポット当てており、「同じところをグルグル走って何が面白いの?」と冷ややかな友達や彼女を相手に、モータースポーツへの理解を促すには最適の映画だと思います。
細部で1カ所だけ疑問が湧いたのですが、それは1月31日発売のauto sport関連特集で確認したいと思います。映画内容とは関係なく、1960年代当時の写真でフォードGTの開発とル・マン24時間レースを振り返ります。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
日本では1月10日に公開された映画『フォードvsフェラーリ』。1月11日〜12日の2日間の興行収入ランキング(興行通信社発表)でランキング4位を獲得し、同週末に封切られた洋画のなかではトップにつけるなど話題に。また第92回アカデミー賞の作品賞を含む4部門でノミネートを受けている。
アカデミー賞主要5部門のひとつである作品賞にモータースポーツを題材とした映画がノミネートされたのは初めてのこと。『ジョーカー』や『パラサイト 半地下の家族』などの競合を相手に初の栄光を手にできるか。現地2月9日(日)に開催される第92回アカデミー賞授賞式にも注目だ。
「モータースポーツ」をもっと詳しく
「モータースポーツ」のニュース
-
【auto sport web/auto sport キャリア採用】一緒に仕事をしたい方、募集します5月22日16時37分
-
“300”との差別化を明確に。“250”は扱いやすさを追求した生活に必要なランクル/トヨタ・ランドクルーザー“250”試乗5月22日13時45分
-
『フェラーリ550GTSマラネロ(2004年)』国産3大ワークスに果敢に挑んだFRの跳ね馬【忘れがたき銘車たち】5月22日8時31分
-
日本自動車レース工業会(JMIA)は「人とくるまのテクノロジー展」に今年も出展します。5月21日13時16分
-
【ポイントランキング】2024年FIA F2第4戦イモラ終了時点5月20日10時26分
-
レッドブル育成ハジャルが今季2勝目飾る。マクラーレン育成ボルトレートが2位/FIA F2第4戦レース25月19日18時13分
-
北米ホンダがDE5型アキュラ・インテグラ・タイプSでパイクスピーク参戦。キャサリン・レッグと雲の上へ5月16日16時55分
-
宮田莉朋、F2イモラ戦へ。事前テストでのトップタイムは「自信に繋がった」/FIA F2第4戦プレビュー5月16日11時59分
-
レースの最新テクノロジーを紹介。WEBフォーラム『モータースポーツ技術と文化』が7月25日開催5月16日11時50分
-
マイアミで敗れたレッドブルF1「マクラーレンより遅かったのは事実」とマルコ。次戦イモラでアップデートを実施へ5月16日7時0分
スポーツニュースランキング
-
1「本気で言っているのか?」絶好調の今永昇太が米番組内で”新事実”を告白! 隠し持つ武器に米メディア衝撃「フェアな話ではない」 ココカラネクスト
-
2井上尚弥に止まぬ特大評価 リング誌の“ウシク1位”にメキシコ名伯楽が異論「イノウエはあまり騒がない。それでも十分偉大」 ココカラネクスト
-
3「全然似てない」大谷そっくりさんの相方・真“似”子夫人にツッコミ殺到!関係者が明かす正体 週刊女性PRIME
-
4批判殺到!どこ投げてんだよ…! 大谷翔平、まさかの盗塁で“異変”が起きた…!? 相手捕手のリアクションがヤバすぎる 「古田さんも思わず苦笑」「さすがに無謀w」 ABEMA TIMES
-
5JRA厩務員3労組ストライキ突入 ダービー出走馬の前日調整は順調に進む スポーツニッポン