F1技術解説イタリアGP編:ガスリー勝利に貢献したアルファタウリ・ホンダのマシンセッティング
F1第7戦ベルギーGP(スパ・フランコルシャン)と第8戦イタリアGP(モンツァ)は、パワーサーキットの双璧をなす存在とされる。しかしスパには中高速コーナーで構成されるセクター2があり、直線スピードとダウンフォースとの高いレベルの共存が求められる。
それに比べればモンツァは、レズモやパラボリカのような中高速コーナーがあるとはいえ、よりシンプルに最高速追求型のサーキットである。なので各チームは毎年、モンツァだけに使用する空力パッケージを投入する。アルファタウリ・ホンダも今回、前後ウイングがモンツァ仕様だった。
モンツァでのリヤウイングは、とにかくドラッグを減らして最高速を稼ぐことが大前提になる。そのためアルファタウリAT01の上部ウイングは、ベルギー仕様に比べてかなり薄くなっているだけでなく(黄色矢印参照)、両端に切り欠きが入った(赤矢印参照)。
マクラーレンやレッドブル・ホンダなどの他チームも、上部ウイングは同様にかなり薄くしている(黄色矢印参照)。
一方でリヤウイングにこれだけの変更を施すと、マシンの他の領域への影響は避けられない。特にディフューザーの効果が、減少する恐れがある。具体的にはディフューザーが巻き上げた後方気流が、このリヤウイング仕様では吸収が少なくなる。
その結果、ディフューザーによるダウンフォース量は減少してしまう。それを少しでも防ぐためには、車高を下げるのが一番効果的だ。しかし下げすぎると、モンツァの高い縁石を乗り越えた際に、フロアを損傷する恐れがある。その意味でもモンツァの高速セッティングは、一筋縄ではいかないのである。
論理的には、リヤウイングのダウンフォースを削った場合、フロントウイング側も同様に削る必要がある。空力的なバランスが、重要だからである。フロント側の食いつきが強すぎれば、当然ながらリヤが不安定なマシンになってしまう。そのためアルファタウリのエンジニアたちは、モンツァ仕様のフロントウイングでは上部フラップに写真のような形状変更を加えていた(黄色矢印参照)。フェラーリのフロントウイングの変更も、同じ意図である。
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