レッドブル・ホンダ密着:予選では総合力で完敗も、決勝に向け先頭を確保。対照的だったフェルスタッペンとハミルトン
2021年F1第14戦イタリアGPのスプリント予選後、紙媒体のメディアが取材するためのミックスゾーンはちょっと混乱していた。通常、ここにはスプリント予選をトップ3でフィニッシュした3人のドライバー以外はすべて顔を出さなければならない。
しかし、チームがZoomなどのインターネット会議システムで会見を開く場合は、必ずしもミックスゾーンに来なくてもいい。
だが、今回のスプリント予選ではルイス・ハミルトン(メルセデス)が4番手に終わったため、多くのイギリスメディアがミックスゾーンに集まっていた。にもかかわらず、ハミルトンはほかの全ドライバーがレーシングスーツのままミックスゾーンに来るなか、先に着替えを済ませ、かなり遅れてテレビ局のクルーが待つミックスゾーンに姿を現した。そして、テレビ局の取材を終えると、「ルイス、ルイス」と呼び止めるイギリスメディアの声が聞こえないかのように足早にモーターホームへと消えていった。
これに対して、スプリント予選で2番手に入ったマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、テレビ局の取材の後、行う必要がない紙媒体用のミックスゾーンにも足を運び、記者たちの取材に応じていた。
そこで筆者はフェルスタッペンに、あることを尋ねることにした。それはなぜ前戦オランダGPで完勝したレッドブル・ホンダがイタリアGPの金曜日の予選ではメルセデスの後塵を拝したのかについてだ。しかも、レッドブルの関係者はそれは既定事実であるかのように驚いてはいないことだ。それはオランダGPで優勝した後のクリスチャン・ホーナー代表の次のようなコメントが如実に物語っている。
「モンツァとソチはメルセデスが得意とするコースで、彼らが優位に立つことが予想される。そのため次の2レースは、ダメージを最小限に抑え、マシンからできる限りの力を引き出すことが重要だ」
モンツァとソチには長いストレートがある。さらにモンツァはエンジンの全開率がほかのサーキットに比べて飛び抜けて高い。ホーナーのこの言葉を聞いた者のなかには、エンジン性能でメルセデスのほうが優位に立っていることが、その理由だと考える者もいるかもしれない。
しかしそれならば、なぜ6月にポール・リカールで行われたフランスGPでレッドブル・ホンダはメルセデスに勝てたのか。そのことをフェルスタッペンに質問すると、フェルスタッペンは少し間をおいて、こう答えた。
「僕たちのローダウンフォースパッケージはフランスGPではメルセデスよりもよかった。でも、メルセデスはフランスGPで僕たちに完敗した後、ローダウンフォースパッケージのコンセプトを変更してきたんだ。それでこのモンツァでは彼らの方が前にいる」
つまり、イタリアGPの予選でレッドブル・ホンダがメルセデスを上回れなかったのは、エンジンパワーだけが理由ではなく、空力パッケージを含めた車体全体の総合力が、このモンツァではメルセデスに対して力負けしていたからだった。
そして、そのことを取材を受ける義務もない場所で冷静に答えてくれたフェルスタッペン。それはスプリント予選を2番手で終え、スプリント予選勝者のバルテリ・ボッタス(メルセデス)のグリッドペナルティによって、日曜日のレースをポールポジションからスタートする余裕がそうさせたのか。
いずれにしても、スプリント予選を終えた後のフェルスタッペンとハミルトンはあまりにも対照的だったのが印象的だった土曜日のモンツァだった。
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