【親子でめぐる登録有形文化財】母を思って…現SMBC日興証券創業者・遠山元一が建てた大邸宅へ<美術館・博物館編3>
リセマム2017年12月20日(水)17時15分
高崎経済大学地域科学研究所特命教授、NPO産業観光学習館専務理事の佐滝剛弘氏による「登録有形文化財」Web上ショートトリップ。11月は「学び舎編」として、原則無料で見学できるキャンパス内の文化財を4か所紹介した。12月は、親子で行きたい首都圏の美術館や博物館を取り上げている。
美術館・博物館編では、第1回で東京都世田谷区にある「五島美術館」、第2回で神奈川県鎌倉市にある「鎌倉文学館」を取り上げた。第3回にあたる今回は、埼玉県比企郡にある「遠山記念館」を紹介する。
「登録有形文化財」って何?
基礎からわかる!親子でめぐる登録有形文化財
<学び舎編>の一覧
第1回 東京大学
第2回 学習院大学
第3回 横浜国立大学
第4回 国際基督教大学
川島町の宝物…遠山記念館
埼玉県比企郡の川島(かわじま)町と聞いて、どのあたりにある自治体かすぐに地図が思い浮かぶ人は、そんなに多くないかもしれません。鉄道が四通八達している埼玉県であるにも関わらず、町域にまったく鉄路が通っていないことも街の知名度があまり高くない理由のひとつでしょう。
そんな川島町の宝物ともいえる美術館を、登録有形文化財のリストの中に見つけることができます。「遠山記念館」です。
ここは、大手証券会社である日興証券(現在はSMBC日興証券)の創業者遠山元一(とおやま げんいち)が、苦労した母のために昭和初期に生家を立て直した邸宅で、彼の死後は、彼が収集した美術品とともに一般公開されている私設の美術館です。邸宅の総建坪は400坪を越え、東棟・中棟・西棟の3棟の住居と長屋門、外塀、茶室、土蔵などあわせて13件の建物が登録有形文化財となっています。
遠山元一は、この地に豪農の長男として生まれましたが、父親の放蕩で生家は没落。高等小学校を卒業してすぐに日本橋の商店に丁稚奉公に出ました。その後も体を壊すなど苦労の連続でしたが、のちに会社を立ち上げ、母親のために故郷に大邸宅を建てました。
東棟は生家に似せた豪農の造り、中棟は来客をもてなす書院造り、西棟は母のための数寄屋造りを基本とし、それぞれが渡り廊下で繋がっています。当時手に入る最高の材料を惜しげもなく使って建てられた住宅は、近代和風建築の最高峰と言ってよく、遠山の遺志により、1970年から一般公開されるようになりました。
遠山が収集した1万点を超える美術工芸品を公開する美術館も素晴らしく、切断されて諸家に分蔵されたことで知られる「佐竹本三十六歌仙絵(さたけぼんさんじゅうろっかせんえまき)」のうちの1枚をはじめ、所蔵する6点は国の重要文化財で、これらも展示されています。なお、「佐竹本三十六歌仙絵」のうちの「清原元輔像(きよはらのもとすけぞう)」は、美術館・博物館編第1回で取り上げた「五島美術館」や東京国立博物館などにも収蔵されています。邸宅に接するこの美術館は、2017年12月20日現在、改修のため閉館中ですが、2018年4月1日にはリニューアルオープンの予定とのことです。
また、主屋の前に広がる四季折々の庭園も見ごたえがあります。武蔵野の田園風景の中に忽然と現れる大邸宅と、その誕生にいたるひとりの実業家の成功までの物語、じっくりと時間をかけて味わいたい登録有形文化財です。
川越駅(JR・東武)、本川越駅(西武)、あるいはJR桶川駅からバスに乗り、最寄りのバス停から少々歩く必要があり、公共交通機関の利便性は良いとはいえませんが、それだけに一度は思い切って訪れたいところといえます。なお、マイカーなら、圏央道川島インターチェンジから10分もかからず便利です。
次回は、神奈川県小田原市の「美術館・博物館編その4:松永記念館」をご紹介します。
遠山記念館
場所:埼玉県比企郡川島町白井沼675
開館時間:10:00~16:30(入館は16:00まで)
休館日:月曜日(祝日の場合、翌日休館)
※年末年始、展示替えのための休日あり
入館料:大人700円、学生(高校・大学)500円
※中学生以下は無料
※障害者手帳提示で200円割引
※美術館休館中の入館料は大人500円、学生(高校・大学)300円
---
地域の歴史や文化と深く結びつき、築50年以上の歴史的建造物や施設が登録される国の登録有形文化財。民家や病院、工場、駅舎、市庁舎などさまざまな建物や施設1万1千件が登録されている。その多様性や活用法など登録有形文化財の概要を、本連載著者である佐滝剛弘氏が豊富な写真とともにわかりやすく伝える一般書「登録有形文化財 保存と活用からみえる新たな地域のすがた」(勁草書房)が、2017年10月に刊行された。新聞書評欄はもちろん、各専門誌でも好評だ。子ども、保護者にぴったりな“新発見連続”の一冊。
美術館・博物館編では、第1回で東京都世田谷区にある「五島美術館」、第2回で神奈川県鎌倉市にある「鎌倉文学館」を取り上げた。第3回にあたる今回は、埼玉県比企郡にある「遠山記念館」を紹介する。
「登録有形文化財」って何?
基礎からわかる!親子でめぐる登録有形文化財
<学び舎編>の一覧
第1回 東京大学
第2回 学習院大学
第3回 横浜国立大学
第4回 国際基督教大学
川島町の宝物…遠山記念館
埼玉県比企郡の川島(かわじま)町と聞いて、どのあたりにある自治体かすぐに地図が思い浮かぶ人は、そんなに多くないかもしれません。鉄道が四通八達している埼玉県であるにも関わらず、町域にまったく鉄路が通っていないことも街の知名度があまり高くない理由のひとつでしょう。
そんな川島町の宝物ともいえる美術館を、登録有形文化財のリストの中に見つけることができます。「遠山記念館」です。
ここは、大手証券会社である日興証券(現在はSMBC日興証券)の創業者遠山元一(とおやま げんいち)が、苦労した母のために昭和初期に生家を立て直した邸宅で、彼の死後は、彼が収集した美術品とともに一般公開されている私設の美術館です。邸宅の総建坪は400坪を越え、東棟・中棟・西棟の3棟の住居と長屋門、外塀、茶室、土蔵などあわせて13件の建物が登録有形文化財となっています。
遠山元一は、この地に豪農の長男として生まれましたが、父親の放蕩で生家は没落。高等小学校を卒業してすぐに日本橋の商店に丁稚奉公に出ました。その後も体を壊すなど苦労の連続でしたが、のちに会社を立ち上げ、母親のために故郷に大邸宅を建てました。
東棟は生家に似せた豪農の造り、中棟は来客をもてなす書院造り、西棟は母のための数寄屋造りを基本とし、それぞれが渡り廊下で繋がっています。当時手に入る最高の材料を惜しげもなく使って建てられた住宅は、近代和風建築の最高峰と言ってよく、遠山の遺志により、1970年から一般公開されるようになりました。
遠山が収集した1万点を超える美術工芸品を公開する美術館も素晴らしく、切断されて諸家に分蔵されたことで知られる「佐竹本三十六歌仙絵(さたけぼんさんじゅうろっかせんえまき)」のうちの1枚をはじめ、所蔵する6点は国の重要文化財で、これらも展示されています。なお、「佐竹本三十六歌仙絵」のうちの「清原元輔像(きよはらのもとすけぞう)」は、美術館・博物館編第1回で取り上げた「五島美術館」や東京国立博物館などにも収蔵されています。邸宅に接するこの美術館は、2017年12月20日現在、改修のため閉館中ですが、2018年4月1日にはリニューアルオープンの予定とのことです。
また、主屋の前に広がる四季折々の庭園も見ごたえがあります。武蔵野の田園風景の中に忽然と現れる大邸宅と、その誕生にいたるひとりの実業家の成功までの物語、じっくりと時間をかけて味わいたい登録有形文化財です。
川越駅(JR・東武)、本川越駅(西武)、あるいはJR桶川駅からバスに乗り、最寄りのバス停から少々歩く必要があり、公共交通機関の利便性は良いとはいえませんが、それだけに一度は思い切って訪れたいところといえます。なお、マイカーなら、圏央道川島インターチェンジから10分もかからず便利です。
次回は、神奈川県小田原市の「美術館・博物館編その4:松永記念館」をご紹介します。
遠山記念館
場所:埼玉県比企郡川島町白井沼675
開館時間:10:00~16:30(入館は16:00まで)
休館日:月曜日(祝日の場合、翌日休館)
※年末年始、展示替えのための休日あり
入館料:大人700円、学生(高校・大学)500円
※中学生以下は無料
※障害者手帳提示で200円割引
※美術館休館中の入館料は大人500円、学生(高校・大学)300円
---
地域の歴史や文化と深く結びつき、築50年以上の歴史的建造物や施設が登録される国の登録有形文化財。民家や病院、工場、駅舎、市庁舎などさまざまな建物や施設1万1千件が登録されている。その多様性や活用法など登録有形文化財の概要を、本連載著者である佐滝剛弘氏が豊富な写真とともにわかりやすく伝える一般書「登録有形文化財 保存と活用からみえる新たな地域のすがた」(勁草書房)が、2017年10月に刊行された。新聞書評欄はもちろん、各専門誌でも好評だ。子ども、保護者にぴったりな“新発見連続”の一冊。
Copyright (c) 2017 IID, Inc. All rights reserved.
「登録有形文化財」をもっと詳しく
「登録有形文化財」のニュース
-
旧八十五銀本店が複合施設に 埼玉・川越、築100年超5月10日17時27分
-
【三養荘】1日1室限定!〜古き良き日本の風情を愛でる 〜登録有形文化財のお部屋で昔懐かしい夏のおもひで4月2日19時16分
-
会員制旅行サービス「ReNX」に北海道の登録有形文化財「小樽貴賓館」が登場3月31日11時46分
-
伝統の“一度注ぎ”生ビールと本格和食。『和食ビヤホール 枡々益(ますみ)』4月2日(火)登録有形文化財(建造物)の「銀座ライオンビル」3階にオープン3月21日16時46分
-
登録有形文化財で味わう極上の和空間 会津藩士も癒やした名湯を掛け流しで 「会津東山温泉 向瀧」 【コラム:おんせん! オンセン! 温泉!】3月4日10時14分
-
ホロラボ、登録有形文化財「沖本家住宅」の3Dデジタルアーカイブのご協力と、3Dデータの管理及び活用を支援する契約を締結2月2日18時40分
-
一旗プロデュース「国登録有形文化財 料亭河文 デジタルアート会席 2024」を開催。400年の歴史を誇る名古屋最古の料亭河文で会席料理と幻想的なテーブルプロジェクションマッピングの融合。1月9日19時16分
-
FeiyuTech、超小型All in Oneのジンバル「SCORP-Mini 2」先行販売アラート登録開始12月21日13時46分
-
迫力の夏祭りを体験、昭和レトロな戸倉上山田温泉の登録有形文化財に泊まる6月9日12時0分
-
「箱根小涌園 天悠」の国登録有形文化財「蕎麦 貴賓館」が待望の再オープン9月28日9時50分