F1技術解説 ホンダPU進化の過程(1):メルセデス方式のタービンレイアウトにたどり着いたホンダ

2019年1月8日(火)7時0分 AUTOSPORT web

 2015年のF1復帰から苦戦を強いられてきたホンダF1。マクラーレンと袂を分かち、トロロッソと手を組んだ2018年シーズンでは、ホンダに明るい兆しが見えてきた。そんなホンダがいかに進化していったか、F1iのテクニカルエキスパート、ニコラス・カーペンティアーズがその軌跡をたどる。


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■メルセデス方式にたどり着いたホンダ


 3年に及んだマクラーレンF1との苦難のパートナーシップを経て、2018年のホンダF1はやや明るさを取り戻したように見える。


 2018年のRA618Hは、それまでのホンダPUの基本構造を踏襲したものだ。


 ここで簡単なおさらいをしよう。ターボユニットは、3つの主要パーツで構成されている。タービンとコンプレッサー、そのふたつを繋ぐシャフトである。タービンは排気によって高速回転し、そのエネルギーがシャフトを介してコンプレッサーに伝わって吸気を圧縮する。


 通常、タービンとコンプレッサーはともに、エンジンブロック後部の近い位置に搭載されている。フェラーリとルノーが採用しているのが、そのオーソドックスな方式である。一方メルセデスとホンダはコンプレッサーをブロック前部に置き、後方のタービンとは長いシャフトで繋げた。


 ただしホンダは2015年の最初期型では、マクラーレンからの極力コンパクトなパワーユニットという要求に応じて、ターボとコンプレッサーの両方をVバンクの中に収めていた。


 しかしそれでは十分な電気エネルギーが回生できず、翌2016年型ではターボの大径化に踏み切った。しかし搭載位置は相変わらずVバンク内だったため、重心が大幅に高くなってしまった。


 重心を下げるために2017年型でようやく、メルセデスと同じレイアウトにたどり着いた。コンプレッサーを大きくすることで、パワーアップに成功したのである。

2018年型のホンダPU、RA618H


■独創的なダブルダクト


 2018年型のPUは基本的に2017年型の発展型だが、コンプレッサーから延びるダクトは2本に枝分かれしている。2017年型(写真下)はコンプレッサーから出た1本のダクトが、サイドポンツーン左のインタークーラーに連結している。


 それが2018年型は、コンプレッサーで圧縮された空気は二方向に分岐したダクトによって、左右のサイドポンツーンに1基ずつ設置されたインタークーラーへと送られる。

インタークーラー2基方式の2018年型(上)と、1基方式の2017年型(下)


 黄色矢印に示されたダクトは、もうひとつに比べるとかなり長い。オイルタンク下部を回して、エンジンブロックの反対側に通しているからである。


 このインタークーラー2基方式は、ルノーPUを搭載していた2017年のトロロッソがすでに採用していたものだ。大幅な設計変更をチームが嫌ったこともあるが、なによりもレッドブルが2014年以来この形式を踏襲してきたことが大きい。2019年からレッドブルがホンダPUを搭載することを、トロロッソ・ホンダ誕生の時点から見据えての措置だったと考えていいだろう。


(その2に続く)


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