選手権初の戴冠か、3冠達成か…大津vs青森山田“プレミア対決”の頂上決戦

2022年1月9日(日)20時31分 サッカーキング

大津と青森山田によるファイナルの行方は… [写真]=鈴木颯太朗、野口岳彦

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 100回目の高校サッカー王者が10日、国立競技場にて決定する。記念大会の栄冠を手にするのは、初の決勝進出となった大津(熊本)か、驚異の4大会連続決勝進出を果たした青森山田(青森)だろうか。

 新型コロナウイルスへの感染が発覚し、4強進出を果たした関東第一高校がまさかの辞退となった。彼らが今大会で残した足跡が消えることは決してないものの、大切な仲間たちが不本意な結末を強いられたことで、関係者の表情は決して明るくない。

 不戦勝での決勝進出となった大津の山城朋大監督は「やはり選手たちは動揺が隠せなかった」と率直に明かす。関東第一の感染が発覚した翌日の抗原検査では、「選手たちは一言もしゃべることなく検査の結果を食い入るように見ていた」そうで、その日の練習の雰囲気も上がらなかったという。だが、平岡和徳総監督が練習を止めて「いま自分たちにできることは、関東第一さんの分まで決勝に向かって準備をすることだけだ」と諭し、あらためて初めての舞台に向けて気持ちを切り替えさせた。まずはメンタル面が一つのポイントとなる。

 対する青森山田は準決勝を90分戦い抜いて6−0と圧勝。中1日で肉体的なダメージの完全回復は難しいが、勢いに乗って臨めるのはポジティブな材料だ。準々決勝までの各試合では試合内容に不満を残す流れだったが、準決勝は「青森山田らしい試合ができた」と監督・選手が口を揃える好内容となった。

 準々決勝までについて黒田剛監督は「相手をリスペクトするのは大切だが、研究したことが頭に入り過ぎていた」と振り返る。相手のサッカーに対応する部分ばかりが先に立って、青森山田の強みを押し出すことができず。この点は「プレミアリーグで見せてきたようなプレーができていなかった」と主将のMF松木玖生が振り返ったとおり。一方、開き直って猛烈なハイプレスから試合に入った準決勝の高川学園戦は確かな手応えがあった。この路線を決勝でも継続する形になるだろう。

 両校ともにJリーグのユースチームを含めた高校年代最高峰のリーグ戦である高円宮杯プレミアリーグの所属。全国を東西2ブロックに分けて行う方式。その東日本ブロックで優勝しているのが青森山田であり、西日本ブロックで高校サッカー勢として最高順位(4位)を記録したのが大津だった。

 大会中も、両校の監督・選手からしばしば「プレミアリーグの経験」が財産として語られてきた。たとえば大津のDF寺岡潤一郎は、劣勢の展開を跳ね返しての快勝となった準々決勝の前橋育英戦後、「名古屋グランパス戦では…」「ジュビロ磐田やヴィッセル神戸との試合では…」「やっぱりサンフレッチェ広島戦ですね」といった具合に様々なタイプの相手との試合をすぐに思い出せる様子だった。強豪との激戦が血肉となり、戦術的な引き出しを増やしていたことをうかがわせた。青森山田もまた、3回戦で湘南ベルマーレ内定FW鈴木章斗と対峙したDF丸山大和が「プレミアリーグで(ともにトップ昇格を果たしている)清水エスパルスの千葉寛汰や柏レイソルの真家英嵩といったFWと対戦してきた経験を生かせた」と胸を張った。

 サッカーのスタイルも学校としての成り立ちも異なる両校だが、年間を通して行われるリーグ戦を通じてタフな相手と戦うことでチームを強化してきた点は共通する。「プレミアリーグでできたことが選手権でできないはずがない」と豪語したのは青森山田のMF松木玖生だが、そうして互いに培ってきた「できていたこと」をぶつけ合うには最高の舞台となるだろう。

 100回目の高校サッカー選手権。“公立の雄”として初の戴冠を狙う大津と、“3度目の正直”を誓う東の横綱・青森山田の頂上決戦。毎度のことながら高校サッカーのファイナルというのは特殊な舞台で、今年は国立が生み出す雰囲気もあって何が起こるか予想は不可能。いずれにしても、戦術的にも肉体的にも、そして精神的にも高強度のバトルが続く中、一瞬の精度が勝敗を分ける。そんなハイレベルな戦いになるのは確実だ。

取材・文=川端暁彦

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