TCR:バレンシアBoPテストに新型マシン続々。メガーヌはクラッシュの不運

2018年2月16日(金)16時23分 AUTOSPORT web

 TCR規定車両の2018年シーズンに向けたBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)テストがスペインのバレンシアで2日間にわたって開催され、合計11のマニュファクチャラーが参加。各メーカーの契約ドライバーに加え、TCR公式のドライバーとして、ダン・ロイドとジャンニ・モルビデリのふたりが性能調整の基準値を判定するドライブを担当した。


 今回、バレンシアのリカルド・トルモで開催された性能調整テストには、JASモータースポーツが開発を担当したFK8型のホンダ・シビック・タイプR TCRや、プジョースポールが空力を中心にマイナーチェンジを施した新型308 TCR、そしてオーストリアのブコビッチ・モータースポーツがフランス、ルノースポールの全面支援を得て完成させたルノー・メガーヌTCRなど多くの新型モデルが参加した。


 各国、各地域のTCRシリーズを始め、今季からTCR規定によるFIAワールドカップ格式のシリーズとして発足するWTCRワールド・ツーリングカー・カップにも適用される全TCR車両の性能調整基準を決めるテストに向け、車検を受けた各マシンは車両重量をドライバーを含めてすべて1265kgに揃えられ、車両重心位置(センター・オブ・グラビティ)のチェックと、エンジンダイナモメーターでのテストを経てトラックへ。


 今回のテストで公式TCR BoPドライバーを務めるロイドとモルビデリの手で周回を始めるプログラムが進められたが、初日の早い段階でモルビデリのドライブしたルノー・メガーヌTCRにトラブルが発生。


 ホームストレート通過中にブレーキダクトが破損し、高速1コーナーで車速を落としきれずに激しくクラッシュ。元F1ドライバーで、近年はウェスト・コースト・レーシングのフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRでTCRインターナショナル・シリーズを戦ってきたイタリア人は、すぐさまメディカルセンターに搬送され治療を受ける事態に。

各マシンは車検を経て、重量配分やエンジンダイナモのテストを実施。さらにトラック走行テストへと進む
シリーズは公式BoPテスターとして、BTCC出身のダニエル・ロイド(右)と元F1ドライバー、ジャンニ・モルビデリを起用
多くのユーザーを抱えるホンダは、JASが新型のFK8型(右)と従来モデルのFK2型の2モデルを持ち込んだ


 このアクシデントで、初日はロイド単独での性能調整確認テストが進められることとなった上、メガーヌは車体の損傷が激しくここでテストを終了する形となってしまった。


 また、このテストには各車両メーカーのセットアップと動作確認を担当するため複数の契約ドライバーも姿を見せ、TCRドイツを2連覇中のジョシュ・ファイルズと、2018年はWTCRでホンダ陣営に加入することになったエステバン・グエリエリが揃ってJASのマシンをドライブ。


 ホンダは旧型となるFK2型のシビックもまだ各国に数多くのユーザーを抱え、引き続き18年シーズンも多くのマシンがシリーズを戦うことが予想されるため、FK2、FK8と新旧2車種を持ち込んだ唯一のマニュファクチャラーとなった。


 また、ドイツのキスリング・モータースポーツとオペル・パフォーマンス・センター(OPC)が改良を加えたオペル・アストラTCRと、新型プジョー308 TCRは、昨季のTCRヨーロピアン・トロフィー王者であるオーレリアン・コンテがドライブ。


 こちらもバージョンアップを果たしたフォルクワーゲン・ゴルフGTI TCRとセアト・レオンTCRは、フォルクスワーゲン契約ドライバーで数多くのフォルクスワーゲン製モータースポーツ車両のテストを担当してきたディーター・デッピングと、元WTCC世界ツーリングカー選手権ドライバーでもあるジョルディ・ジェネがステアリングを握った。


 そのほか、こちらも細部のデザインが見直されたアウディRS3 LMSやロメオ・フェラーリ製のアルファロメオ・ジュリエッタTCR、WorldRX世界ラリークロス選手権にも参戦するSTARD製のキア・シードTCR、そしてWTCCではTC1車両として活躍したラーダ・ベスタがTCRマシンとして復活。2018年からデリバリー開始ながら、すでに各選手権への参戦表明が続いているヒュンダイi30 N TCRは、開発ドライバーを務めてきたガブリエル・タルキーニが走行を担当している。

完全ブランニューとなる「ルノー・メガーヌTCR」はトラブルから思わぬ展開に
アウディスポーツ・カスタマーレーシング契約で、元DTMドライバーでもあるラヘル・フレイはRS3 LMSをドライブ

フェイスリフトを受け空力が洗練された新型「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR」も登場


 そして最終日となった2日目には、打撲傷を負ったにもかかわらずモルビデリがトラックに復帰。ロイドとともに、全11台のBoPテストを続行した。


 2017年シーズンの後半にBTCCイギリス・ツーリングカー選手権から転向し、TCRインターナショナルでクラフト・バンブー・ルクオイルのセアト・レオンTCRをドライブしたロイドは、「すべてのTCRマシンをドライブし、それらの違いを見られたことは本当にエキサイティングだった」とテストを振り返った。


「僕とジャンニ(・モルビデリ)は、TCR技術スタッフの設定したプログラムをこなすのに本当に忙しい2日間になった。とくに方式の異なる多くのマニュファクチャラーのマシンに対応する必要があったからね」と、ダニエル“ダン”ロイド。


「僕らは良い仕事をして、やるべきことをすべてこなしたと思う。とくに各マシンに乗り込んだ瞬間から、迅速に慣れることはとても重要だった。中古タイヤで5〜6周してから新品に履き替え、タイムを出すのではなく終始一貫した速いペースを維持する」


「そう、一貫性こそが最優先事項だった。ファステストラップを出すのではなく、同じ方法でタイヤを温め、トラックリミットを守り、ラインをトレースし、一貫して安定したペースを刻めたと思う」


 このテスト結果を受け、TCRテクニカルチームはFIAと協力して3月にも単発で開催されるBoPテストの結果も踏まえて各車の性能調整を決定。その数値は各TCRシリーズやWTCRにも適応されることとなる。

タルキーニ、ファイルズ、コンテなど、各マニュファクチャラーに縁のあるドライバーも多数参加
マンフレッド・ストール率いるSTARDが開発した「キア・シードTCR」
TC1規定で活躍したロシアの「ラーダ・ベスタ」はTCRマシンを開発。ミカエル・グラチェフがステアリングを握った


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