スーパーGT:シェイクダウンを無事終えたARTA NSX GT3。強力パッケージも課題は時間!?

2019年3月12日(火)22時24分 AUTOSPORT web

 2019年、さまざまなトピックスがあるスーパーGT GT300クラス。そのなかでもライバルが警戒しているのは、今季からホンダNSX GT3に車両をスイッチしたARTA NSX GT3だ。2018年もタイトルを争っていたチームだが、今季は車両変更によりまったく違う性格の戦いを展開することになりそう。無事にシェイクダウンテストを終えた3月7〜8日の鈴鹿メーカーテストで、ドライバーの高木真一と福住仁嶺に、NSXの感想を聞いた。


■シェイクダウンは無事終わるも……足りない“時間”


 今季からエントラント名も新たに“ARTA”として参戦するチームは、2016年からGT300クラスではBMW M6 GT3を走らせてきた。ブリヂストンタイヤとのパフォーマンスも相まって、特に近年、富士スピードウェイでは無類の強さを発揮。2017年から富士では3連勝を飾ってきた。ただ、2018年はタイトルをほぼ手中に収めながらも、最終戦もてぎでまさかの逆転を喫した。


 そんなチームは、今季タイヤはブリヂストンで変更はないものの、マシンをホンダNSX GT3にスイッチ。さらに高木真一のパートナーに、ヨーロッパで実績を積んできた福住仁嶺を起用することになった。経験豊富な高木とSFでも戦う福住のコンビ、さらにブリヂストンと、そのパッケージは発表された段階から多くのライバルが「ARTAは速い」と警戒するものとなっていた。


 1月の東京オートサロンでの発表後、初の走行となったのが3月7〜8日の鈴鹿メーカーテスト。このときがARTA NSX GT3のシェイクダウンとなった。テスト開始後、高木のドライブで慎重にチェックを行うと、少しずつペースを上げ福住もNSX GT3を初ドライブ。2日目にはさらにペースを上げ、トラブルフリーでテストを締めくくっている。


 これまで数多くのマシンを乗り継いできた高木に、まずはNSX GT3の感想を聞いてみると、「今までのM6 GT3がああいう印象のクルマでしたからね。鈴鹿は特につらいコースでしたが、ミッドシップのNSX GT3での鈴鹿は、攻め甲斐があると感じましたね」とまったく違う性格のマシンに笑顔を浮かべた。


 ホンダNSX GT3は、2018年に2台がGT300クラスに登場したが、得意とするコースは富士だった。ただ、今季はエボリューションキットが組み込まれることで、リヤのダウンフォースが増加。鈴鹿のようなテクニカルなコースで速さを発揮するマシンに変貌を遂げているのかもしれない。


 ただスーパーGTにおいて、重要なのはマシンだけではない。このテストでは、セットアップを進めながら、ブリヂストンのNSX GT3用タイヤの開発もスタートさせた。ブリヂストンは他のGT3カーのデータはもっていても、ミッドシップのNSX用のデータはない。


「今日は2種類のタイヤをチョイスして、イチからやっていきました」と高木。


「(開幕まで)時間がないのがいちばん大変なところですが、そこは天下のブリヂストンさんなので(笑)。今日履いたなかでも違和感はそれほどなかったですが、今は少しずつ、何をどうしたら変わるのかを見つけているところですね」

高木真一
ARTA NSX GT3


■GT3カー初体験の福住をいかに磨くか


 そして、今季高木にとってはまだまだ“仕事”は山積みだ。NSX GT3、ブリヂストン、そしてチームメイトとなる福住仁嶺を育てることが「課題」だという。「今いちばんイケイケのルーキーを、どうコントロールするか(笑)。速さはピカイチなので、その原石をどう曇らせないように磨くかです」と高木は言う。


「たぶんGT500に乗せたらもっと速いと思うんですが、そこの“違い”をどう理解するか。それが仁嶺にとってもいい経験になるのではないかと思っています。今までワンメイクのクルマしか乗っていないので、言葉のニュアンスの違いだったりを、少しずつ勉強してもらい、ひと皮むけてもらればと思います」


 その指摘どおり、福住はこれまでジュニアフォーミュラではワンメイクのマシン、タイヤのレースばかりを戦ってきた。2015年の鈴鹿ではARTA CR-Z GTの第3ドライバーに起用された経験もあるが、それもわずかなもの。加えてCR-ZはJAF-GTカーで、フォーミュラに近いものだった。


「こういうハコのレーシングカーは、2015年にCR-Zに乗せていただいた時以来ですが、その時とはクルマの感覚も全然違いますね。僕はこれまでシングルシーターしか乗っていないので、ロール量やタイヤの動きもすごく感じました」と福住はNSX GT3の感想を語る。もちろん、前日までスーパーフォーミュラに乗っていただけに、その違いはより大きく感じただろう。


 ただ、鈴鹿テストで精力的に走り込んだ福住は、「2時間乗せていただいて、少しずつクルマのことは分かってきました」という。「そこからどうコメントをしたらいいのかを、チームや高木さんに聞いてもらいながらやっています」とチームの一員としても活躍をはじめたようだった。


「次のテスト(岡山公式テスト)では、もっと開発ができるようになれればな、と思っています」


 冒頭にも記したとおり、高木と福住、そしてNSX GT3とブリヂストンのパッケージは、そのポテンシャルが最大限に発揮されたときには“遅いわけはない”ものだ。ただ開幕まで残された時間はわずかしかない上に、福住はルーキーテストも受けなければならない。ARTA NSX GT3の今季をうらなう上での最大の課題は“時間”かもしれない。

HOPPY 86 MCの松井孝允、佐藤公哉と話し込む福住仁嶺
ARTA NSX GT3


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