日本代表が北朝鮮代表相手に苦戦したワケ【W杯26アジア2次予選】

2024年3月22日(金)19時30分 FOOTBALL TRIBE

写真:Getty Images

3月21日、サッカー日本代表は国立競技場で北朝鮮代表とFIFAワールドカップ26アジア2次予選で激突。前半2分にMF田中碧(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)のゴールで先制点を奪うも、その後は攻撃が停滞し何度か危うい場面も見られた。予想に反し苦戦を強いられた日本代表だが、最初の1点を守り抜き1-0で勝利している。


26日に平壌で行われるはずだったアウェーでの試合が中止になるなど、予想外の展開となっている北朝鮮戦。しかし、このままアウェーに乗り込まずによかったという安堵感があることも確かだろう。かろうじて白星を挙げた今回の戦い。日本代表は明らかにうまくいっていなかった。本記事ではその理由について考察する。




日本代表 FW前田大然 写真:Getty Images

単調な攻撃陣とバリエーションの少なさ


この試合における最大の問題点は効果的な仕事を果たせなかった攻撃陣にある。田中の先制点が開始早々決まったこともあり、スタジアム全体には快勝のムードが漂っていた。しかしその潮目が変わり始めたのは前半13分、MF堂安律(SCフライブルク)が相手GKと1対1の局面を外してしまった後からである。この非常に惜しいシーン以降、日本は決定的なチャンスをほとんど生み出すことができずに前半を終了。ボールの主導権を握っていたにも関わらず1-0で折り返すと、後半開始直後にはオフサイドの判定ながらゴールネットを揺らされてしまうなど、徐々に流れを相手に握られてしまった。


付け入る隙を与えていたのは日本代表の単調な攻撃だ。この試合で先発していたFW上田綺世(フェイエノールト)は相手を背負うことに関して言えば一級品の活躍を見せていたが、裏抜けやスペースメイクなどの仕事を実行することができず、さらには点取り屋としての脅威も感じさせることができなかった。また、MF南野拓実(ASモナコ)もほとんど試合に関与することができず、得意とする相手との間でボールを受けるようなシーンもあまり見られなかった。結果的に日本のボール回しが外回り気味となり、攻撃は大半がサイドからによるものだった。


的が絞られれば守備も幾分かはやりやすくなる。日本代表が主軸としていたサイド攻撃も、驚異的であったと呼ぶのは難しい。左サイドで先発したFW前田大然(セルティック)は攻撃と守備面で何度も献身的な働きを見せ相手に不自由を与えていたことも事実だが、そのインパクトが攻撃面でも十分であったかは疑問だ。左サイドにおける崩しは未完成であり、同じく左サイドのDF伊藤洋輝(VfBシュツットガルト)との連携は皆無に等しかった。左サイドからの攻撃は、前田が持ち前のスピードで相手DFをズラしクロスを上げるというものがほとんど。前田が中央に切り込む場面は少なく、ワンパターン化された攻撃はいつ対策されても不思議ではなかった。


日本代表 DF板倉滉 写真:Getty Images

再び浮き彫りになったロングボール対応


結果的に、北朝鮮代表は試合が進むにつれて守備をコンパクトにしており、奪ってから速攻という形を何度も作り出す。幸い速攻には厚みがなく日本DFと北朝鮮FWが個々で対峙したときは、そのレベル差から攻撃をシャットアウトできていたが、相手FWにペナルティーエリア付近まで何度も侵入されてしまったことは明らかな問題である。AFCアジアカップ2023から続くロングボール対応が、日本代表の今後の課題として再び浮き彫りになった。


北朝鮮とは対照的に、日本はボールを奪ってからの速攻もやや消極的に映った。自陣中央でボールをカットしてもそこから相手DFラインの背後に蹴りこむようなシーンはなく、速攻が可能な場面であってもボールはDF板倉滉(ボルシアMG)やDF町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)のところまで戻ってしまう。この試合での日本代表は、攻撃に関するチャレンジがあまり見受けられなかった。


2月3日に行われたアジアカップ準々決勝(イラン戦)以前は、ロングボールや自陣の深い位置でのセカンドボールを繋ぐ意識と自信が感じられたのに対し、今回は単純なクリアが目立った。そのクリアが再び相手選手に拾われてしまうことも多く、前がかりになった相手をカウンターで仕留めることができず。後半は特に悪い意味で相手にペースを合わせてしまっていた。DF冨安健洋(アーセナル)が不在の影響も大きかったのかもしれないが、セーフティーな試合運びやボール回しが目立っており内容では圧倒できずに終わった。




日本代表 DF谷口彰悟 写真:Getty Images

本物の自信を得るためのプロセス


しかし、終盤で披露した5バックは一つの進歩かもしれない。日本は試合終盤にDF谷口彰悟(アル・ラーヤン)とDF橋岡大樹(ルートン・タウン)を投入。フォーメーションをそれまでの4-2-3-1から5-2-3に変更した。試合はそこから落ち着きを取り戻し、ゲームの中で意図的に戦い方を変化させることには成功した。今後も拮抗した試合が続くことを考えれば、自チーム主導のアクションにより試合を安定させられる手段は多用されるだろう。


北朝鮮戦で日本代表から欠落していたもの、それは「自信」だったように思う。ボールを後方から繋ぐ自信、ロングボールを収める自信、1対1で勝負する自信、遠くからでもシュートを打つ自信。「どんな相手にも勝てる気がする」という自信が以前は感じられていた。しかし、それが幻想だったことをイラン戦での敗北により痛感したのではないか。だがそれは決してマイナスではない。自分たちがいる本来の立ち位置を再認識することは、幻想ではなく本物の自信と実力を得るために必要なプロセスではないだろうか。そのために、まずは目の前の試合で自分たちのやりたいことを実現し、勝利することが重要だ。

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