Moto2:名門チームのレッドブルKTMアジョに電撃移籍した理由/長島哲太独占インタビュー(前編)

　2020年シーズンのロードレース世界選手権が3月8日に開催され、開幕戦カタールGPのMoto2クラスで長島哲太（Red Bull KTM Ajo）がキャリア初優勝を飾った。その長島に独占インタビューを行い、Red Bull KTM Ajoに移籍した経緯や、開幕戦の振り返り、新型コロナウイルスの影響で序盤戦が延期していることを受け、ファンに向けてメッセージを聞いた。

　今季からチームを移籍し、ロードレース世界選手権で初の優勝を飾った長島。アキ・アジョが代表を務めるRed Bull KTM Ajoに加入することになった経緯について「（2019年の）日本GPが終わった後に、たまたまアジョさんのチーム（Red Bull KTM Ajo）からオファーをいただきました」と説明した。

　長島がロードレース世界選手権デビューを果たしたのは、代役で出場した2013年MotoGP第17戦日本GPのMoto2クラスだ。翌2014年に本格的にMoto2クラスでの参戦を開始するが、シーズンの途中に怪我を負ったことにより残りのレースは欠場を余儀なくされた。2015年は同シリーズを離れCEV Moto2ヨーロッパ選手権へと戦いの舞台を移す。

　そしてCEVに参戦して2年目となる2016年にアキ・アジョと出会うことに。この年にアジョ・モータースポーツ・アカデミーに加わると優勝や表彰台を多数経験しランキング2位でシーズンを終える。また、ロードレース世界選手権のMoto2クラスにも2度出場し、日本GPで初ポイントを獲得した。

　2017年には、ロードレース世界選手権のMoto2クラスに復帰しTeluru SAG Teamからエントリー。2018年はイデミツ・ホンダ・チーム・アジアに移籍し、2019年は古巣のONEXOX TKKR SAG Teamに戻り2年契約を締結していた。

　昨年の9月には、改めて2020年シーズンも長島とレミー・ガードナーのコンビでMoto2クラスを戦うことが発表されたが、11月12日にはONEXOX TKKR SAG Teamが長島との契約を取り消し。それから11月15日に、長島がRed Bull KTM Ajoと新たに契約していたことが明らかになり、再びアジョのチームへと加入することに多くのファンが驚いたことだろう。

「SAGではチームやメカニックたちと良い形で仕事をしていました。しかし、予選ではポールポジションやフロントロウを獲得しても、なかなか勝つことができず最高位は5位。表彰台にも立てない状況が続いていたので、少し足りない部分があると考えているなかでのオファーでした」

「チャンピオン獲得チームだし、ブラッド（ビンダー）も昨年速かったので、自分としてはRed Bull KTM Ajoに加入したい気持ちが強かったです。SAGで継続参戦するはずでしたが、縛りのある契約ではなかったため、うまくまとめていただき移籍したという経緯です」

　長島が話す通り、アジョがチーム代表を務めるアジョ・モータースポーツはチャンピオンを輩出しているチームだ。2001年から活動を開始したアジョ・モータースポーツは、ロードレース世界選手権ではマルク・マルケス（125cc）、ブラッド・ビンダー（Moto3）、ヨハン・ザルコ（Moto2）など現在MotoGPで活躍しているライダーを含む5名をチャンピオンへと導いた。

　トップチームのRed Bull KTM Ajoに、2019年11月末にバレンシアで行われたプライべートテストから本格的に加入した長島。チームの印象は「これまで複数のチームに所属しており、相性が悪かったチームもなくて基本的に仲良く過ごしましたが、そのなかでも一番プロフェッショナルなチームだと思いますね」という。

「このチームにはこれまで長年の経験があり、チーム全員が勝ちに対して貪欲。逆に言えば優勝しか目指していないチームです。結果が残らなければ厳しい部分もあると思いますが、スタッフ全員が一生懸命働いているので、今の自分に必要なものとチームが持っているものが噛み合っていると思います」

（後編に続く）