ル・マン24時間のセーフティカー運用規則が変更。隊列を“まとめて・整理”し不公平感を低減へ

2023年4月5日(水)19時38分 AUTOSPORT web

 100周年記念大会として2023年6月に開催される第91回ル・マン24時間レース(WEC世界耐久選手権2023年第4戦)では、セーフティカー(SC)の運用規則が変更されることが明らかとなった。『パス・アラウンド』と『ドロップ・バック』と呼ばれる手順が導入、SCが介入している間にクラスごとに隊列を整理し、各車両の位置やライバル間のギャップになるべく不公平が生じないような運用が目指される。


 ル・マン24時間の行われるサルト・サーキットではこれまで、事故等のアクシデントが発生した際、3台のSCが別々の地点からコース上に入り、ペースをコントロール。解除される際も、3つの隊列がコース上の3地点から同時に競技を再開するという形式が採られてきた。


 今年も3台のSCが(ホームストレート/アルナージュ先/デイトナ・シケイン先から)同時介入するという手順までは変わらないが、その後、隊列は1台のSCの背後へと統合されるとともに、クラス別に順位の整理が行われることとなった。


 ACOフランス西部自動車クラブにより発表された大会特別規則書で『パス・アラウンド』と表記されているこの手順は、一般に『ウェーブ・バイ』とも呼ばれ、この部分はすでにWECのスポーティング規則にも明記されている。また、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権では独自のものが採用されているほか、GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ/エンデュランス・カップでも同様の規定が今季から導入される。


 ル・マンでは、3台のSC隊列が1台へとまとめられた後、『SCの後方かつ各カテゴリーのリーダーより前方に位置する車両』はSCを追い抜くことが許され、サルト・サーキットを1周した後、隊列の最後方に付くことになる。ここまでが『パス・アラウンド』だ。


 パス・アラウンドが終了すると、レースディレクターは次に『ドロップ・バック』という手順を開始し、隊列をクラス別に整頓する。


 まずLMP2車両がコースの右側へと移動し、ハイパーカーとLMGTE車両がこれを追い越す。次にLMGTE車両が右側へと移動してハイパーカーとLMP2車両に抜かれ、ハイパーカー・LMP2・LMGTEという順でクラス別に隊列が整理された後、レースが再開される。


 WECのシリーズ戦と同様、ウェーブ・バイ(パス・アラウンド)を受けることができるかどうかは、チームが責任を持って判断することになる。対象外にも関わらずウェーブ・バイを行った車両については、レースラップ2周分の時間にあたるストップ・アンド・ゴー・ペナルティが科せられる。


 SC運用中であっても、3台が1台の隊列へと統合される前のタイミングであれば、ピットインは許される(ピットレーン入口は、1台となったSCの後ろに隊列が合流した時点で閉鎖される)。ピットに入り作業を行った車両は、セーフティカーの隊列が通過するまで、ピットレーン出口の赤信号で待機させられることになる。


 規則書によれば、このSC隊列の統合とパス・アラウンド、そしてドロップ・バックは、レースの最後の1時間には実施されないことになっている。


 SCの隊列を3台から1台へとまとめるという今回の変更は、近年のル・マンで争点となっているクラス内でのバトルの分断を避けるための措置だ。


 従来の3台方式では、バトル中の車両が別々のSCに拾われてしまうことでギャップが広がり、前方の車両が大きく有利になるケースがしばしば発生していた。


 なおレースディレクターは、SC導入以外にも、フルコースイエロー、(一定区間にのみ速度制限を設ける)スローゾーン、そして赤旗を導入し、ル・マンにおけるインシデントを管理することができる。

2022年、新たにWECのセーフティカーとなったポルシェ911 Turbo S

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