スーパーGT開幕戦レクサス陣営の敗因と光明。バトン、可夢偉級の新人ローゼンクヴィストの実力

2018年4月16日(月)12時53分 AUTOSPORT web

 昨年の開幕戦のスーパーGT500クラスは、結果からも明らかなようにレクサスLC500がライバルを圧倒していた。しかし今季は上位独占という雰囲気は感じられなかった。その原因は、ライバルが進化したこと、レクサス勢のブリヂストンユーザーがその新構造タイヤとのバランスに苦しんでいたこと、そしてさらに持ち込んだタイヤのレンジをやや外していたことである。


 昨年のチャンピオンであるKeePer TOM’S LC500は、ブリヂストンの新構造タイヤのバランス取りに苦しんでいた。リヤグリップが高く、どうしてもアンダーステアになってしまう。もともと岡山国際サーキット自体がアンダーに苦しむサーキットではあるため、余計それを助長することになってしまう。


 テストからその症状が改善されないまま本番を迎えた上に、予選直前に平川亮(KeePer)がサーキットサファリの時間にコースアウトしまった。その際に破損したフロントスプリッターを新品に交換したら、今度はマシンバランスはドオーバーに。その結果屈辱のQ1落ちの9番手となってしまう。「仮にQ2に行けたとしても、ホンダ勢の速さには叶わなかったと思う」と、平川は苦しい状況を説明する。


 対照的だったのがWAKO’S 4CR LC5000だ。テストから絶好調で、開幕を迎えてもその流れは変わらなかった。唯一の不安材料は今季新加入のフェリックス・ローゼンクヴィストがスーパーGTへ適応できるかどうか。前評判はこれまでのどの新人よりも高いのだが、評判倒れの例も少なくない。


 予選はQ1が低気温でウォームアップが難しく、Q2は一転、ウエット路面。経験がものを言う、まさに“ルーキー殺し”のコンディション。しかし、この難局をレクサス勢で唯一潜り抜けたのが、誰よりも経験が少ないローゼンクヴィストだった。


「ミスをせず、Q2につなげばいい」というチームの指示をしっかり守り、5番手でQ2の大嶋和也にバトンを渡したのだ。「寒い時期はグリップがすごく高くて楽しい。もしかしたらスーパーフォーミュラよりも楽しいかも」と、本人はさらりと言う。

WAKO’S 4CR LC500で新人ながら誰もが高評価するローゼンクヴィスト(左)と、エースの大嶋和也(右)


 ウエットとなったQ2では、ブリヂストンの今季のウエットタイヤは新ゴムのためデータが少なく、本来のポテンシャルを発揮するまでには至らず、4番手どまりとなった。


 予選後の平川は、「明日は一番つらいレースだと思うので、なんとか耐え忍んで、腐らず戦いたい」と語っていたが、その決勝では王者らしく一気にV字回復を見せた。予選でのドオーバーを修正するために、フロントの車高を数ミリ上げた。さらに気温が上がったことでタイヤがしっかり発動してくれた。


 スタート直後からKeePer TOM’S LC500のニック・キャシディは力強い走りを見せ、一時は優勝マシンであるKEIHIN NSX-GTも抜いてみせる。しかしそのときの接触で舵がきかなくなってしまった。後半担当の平川は、まっすぐ走らないマシンをねじ伏せて3位表彰台を獲得。もしステア機能が正常であれば、さらに白熱したトップ争いになったはずだ。


 WAKO’S LC500の方は、レース前にローゼンクヴィストが「ミーティングしたい」と言い出す。スーパーGTではレース中どんなミスが多いのか、GT300のマシンのインにどのように入ると接触が起きやすいのか、セーフティカー導入の際はどう走るべきなのか、タイヤのデグラデーションの出方、ウォームアップの仕方等々……。それらを再確認してスタートに臨み、「フィニッシュすることがプライオリティナンバー1である」というミッションを完遂。


 前日は「トラフィックのマネジメントが課題」と語っていたが、それもクリアしてみせた。WAKO’S LC500 の山田健二エンジニアは、「ここ岡山とSUGOが一番抜きにくい。ここでできれば大丈夫」と語り、開幕戦でのローゼンクヴィストの仕事は「満点」という最高の評価を与えた。


 第2戦の舞台である富士のテストは、WAKO’S LC500がレクサス+ブリヂストン勢のトップタイムをマークしている。山田エンジニアは、当然「優勝を目指す」と語っている。KeePer LC500は、この手強いライバルの“雪辱”を迎え撃つとともにホンダ勢の影を追う。


《autosport 4月13日発売号No.1479》 スーパーGT 開幕戦岡山レース詳報
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