WEC:グリッケンハウス、ハイパーカー『SCG 007』にピポ・モチュール製V8エンジンを採用
2020年4月21日(火)12時50分 AUTOSPORT web
LMHル・マン・ハイパーカー“元年”となる2020/21年シーズン(実質2021年シーズン)から、WEC世界耐久選手権のトップクラスへの参戦を予定しているスクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスは、フランスのピポ・モチュール社と提携して新型LMHカー『SCG 007』のエンジンを開発している。
これはスクーデリア・キャメロン・グリッケンハウス(SCG)の創設者であるジェームズ・グリッケンハウスが明らかにしたもので、彼によればラリーエンジンビルダーとして知られるピポ・モチュールが開発した、4気筒エンジンから派生したツインターボV8ユニットがSCGのニューマシンに搭載されるという。
1970年代に設立されたピポ・モチュールは、ヒュンダイi20 WRCやフォード・フォーカスWRC、プジョー206 WRCなど有名なラリーカー向けのエンジンを製造してきた企業だ。
ノンハイブリッドマシンであるSCG 007は現在、アメリカに拠点を置くSCGと、イタリアのポディウム・テクノロジーによって開発が行われている。フランスのエンジンビルダーはここにオーダーメイドのパワートレインを供給することになる。
「ピポは世界最高の4気筒シングルターボWRCエンジンを開発した」と語ったグリッケンハウス。
「それは美しいエンジンであり、彼らの夢は私と同じ、ル・マンに行って勝つことだ。我々はWRCモーターをふたつ用いてフラットプレーンクランクでつなぎ、共通ブロックに配置すること彼らに提案した。これは約870psを発するV8エンジンだ」
「我々はこのエンジンの開発に対して対価を支払っているが、他のチームがLMHのパワートレインとして又は、LMDhカーで使用したいと考えている場合は購入できるようにすることを望み、そうなればうれしいと思っている」
「ピポのエンジンはハイパーカーで870psを発揮するツインターボV8として利用でき、スペックハイブリッドと結合させればLMDhカーでも使用できる」
「その新型エンジンは4気筒形式でベンチに乗っており、必要なパワーの50%の状態で稼働している。まもなくV8形式が構築される予定だ」
■アルファロメオV6は870馬力に達せず
SCGは当初、アルファロメオからV6ツインターボエンジンの供給を受ける予定だった。しかし、この計画は1176psを発揮するアストンマーティンのハイパーカー『ヴァルキリー』に対応するため、WECが設定した750psという出力から算出した目標値をさらに引き上げる必要に迫られたことで妨げられることになった。
「アストンがやってきてパワーを上げるように要求したとき、アルファロメオのV6ツインターボはロードカーのエンジンをベースにしていたため、出力を上げることができなかった」とグリッケンハウスは語った。
「それは正直に言えばフェラーリ488のロードカーに搭載されているV6エンジンだった。彼らはそれを30時間の連続走行に耐えうるようにしたときに650psは作り出すことができたが、870psは不可能だった」
「残念ながら、それが原因でアルファロメオとの提携は解消することになったんだ」
■コロナ禍でも開発作業は進む
また彼は、SCGが新型コロナウイルスの“パンデミック”によって引き起こされた現在の困難な状況下でも、ピポ・モチュールとできる限り多くの作業を進めていると説明している。
SCG 007が予定していたトラックデビューは世界中の混乱の結果、2020年夏から2021年1月に延期されたが、作業は継続中だ。
「物理的な製造を開始する前に、コンピューターで行う作業が非常に多く、これには2カ月を要す」と同氏。
「エンジニアリング、デザイン、コンセプトの設計と証明には1年かかる。我々にはまだ何カ月分もの設計作業が残っているが、それを行うことは可能だ」
「プロジェクトの多くは、CADやコンピューター、電話会議で作業ができる。つまり、私たちは動き続けることでき、この間にもピポは我々に完全に対応してくれた」
「また、ポディウム(・テクノロジー)でも同じことが起こっている。彼らのエンジニアは当局の規制に従いながら完全にリモートで作業することができているんだ。(このような状態にあっても)我々はすべきことはそれぞれ異なるが、最後には必ず一緒になるんだ」