15番手から4位。トヨタ、戦略と運が噛み合った「完璧なレース」で起死回生の2台入賞/WEC第3戦スパ
2025年5月11日(日)10時54分 AUTOSPORT web

5月10日、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットでWEC世界耐久選手権の第3戦『スパ・フランコルシャン6時間』レースの決勝が行われた。予選で後方に沈んだトヨタGAZOO Racing(以下、TGR)の2台のGR010ハイブリッドはドラマに満ちたレースを戦い抜き、そろってポイント獲得を果たした。
15番手スタートだったセバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組の8号車は、攻めのピット戦略を絡め、激戦の末に4位でフィニッシュ。16番手からスタートしたマイク・コンウェイ/小林可夢偉/ニック・デ・フリース組の7号車は7位でフィニッシュを果たした。
■熱闘見せた小林可夢偉「今大会の我々にとって最高の結果」
決勝日のスパ・フランコルシャン・サーキットは好天に恵まれ、約10万人の観客が週末を通して訪れた。
TGRは8号車がハートレー、7号車がコンウェイでレースを開始し、序盤から追い上げを見せる。しかしコンウェイはスタートから23分というところで右フロントタイヤのパンクチャーに見舞われ、緊急ピット作業を行った結果、クラス最後尾へとポジションを落としてしまう。
2時間経過を前にバーチャルセーフティカーが導入され、7号車コンウェイはグリーンフラッグ下のピットストップよりも短いタイムで作業を行い、トップ10圏内へとジャンプアップすることに成功。2時間30分経過時点でもう一度ピットインし、可夢偉へと交代した。
可夢偉は5号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)とスリリングな7番手争いを繰り広げ、一度はコースオフしたものの、サイドアタックを仕掛けてこれをパス。これにより、レース折り返しを迎える頃のセーフティカーでは、ポジションを上げるチャンスを得た。全車が一斉にピットへと向かうなか、2本のみのタイヤ交換という作戦と迅速な作業により、7号車は3番手でリスタートを迎えることとなった。
そのリスタート後には、可夢偉はフェラーリ勢からの猛追を受けることになる。セーフティカーで各車のギャップが消滅したため集団でのバトルとなるなか、最終シケインでブレーキをロックさせた7号車はコースオフを喫し、7番手へとポジションを下げた。
8号車の中盤スティントは平川が担当。4時間を迎える直前に再度セーフティカーが導入され、2台のGR010ハイブリッドはそろってピットへと向かう。ドライバー交代を行い、7号車のデ・フリースは4番手、ブエミの8号車は9番手でコースへと復帰した。
最後の2時間は、ピット戦略での争いとなった。8号車は他の車両よりも早めにピットインし、コース上の混雑を避ける作戦を採り、その結果、ブエミはさらに速いラップタイムで周回を重ねていく。ライバル勢が通常のピットストップを行う中、ブエミの8号車は最後の給油ストップまで一時首位を走行。残り45分で最後のピットへ向かった。
これで一時は10位まで順位を落とした8号車だったが、その後、他の車両が次々と最後の給油のためにピットへ向かったことで順位を上げ、4位までポジションアップ。デ・フリースの7号車も最後まで順位争いを繰り広げて7位でフィニッシュし、TGRは今季開幕から3戦連続で2台ともポイント獲得となった。
TGRからWEC第3戦の決勝を戦った6名のドライバーのコメントは、以下のとおり。次戦はフランスのサルト・サーキットで6月14〜15日にかけて決勝が行われるシーズンハイライト、第4戦ル・マン24時間レースとなる。
■小林可夢偉(チーム代表兼7号車ドライバー)
「4位と7位というのは、今大会の我々にとって最高の結果だと言えます」
「2台の戦略を分けたため、我々の7号車は順位を落としましたが、8号車が素晴らしい走りで4位フィニッシュを果たしてくれました。この週末、チームすべてのメンバーとドライバーが素晴らしい仕事をした結果であり、彼らの多大な努力に感謝したいと思います」
「次はル・マンの大舞台です。必要なパフォーマンスを見出すべく努力を続けて行きます。再びル・マンでの勝利に挑むのが楽しみです」
■マイク・コンウェイ(7号車)
「今日のレースは刻々と展開が変わり、多くのアクシデントもあった。私のスティントではパンクに見舞われ、戦略を変更せざるを得なかった。しかし、すぐ後にバーチャルセーフティカーが導入されたのは幸運だった」
「最終的には、8号車が変則的なピット戦略を採り、それが効を奏した。彼らはよくやったと思う。2台そろって選手権ポイントを獲得できた。上位を争うライバルにはペースでは及ばなかっただけに、予想以上の結果となったが、もっと上を目指していかなければならない」
■ニック・デ・フリース(7号車)
「チームとして厳しいレースだったが、4位と7位フィニッシュという結果は良かったと思う」
「今週の我々のパフォーマンスを考えれば、これが最大限の結果だったのは間違いない。大変な挑戦だったが、全力を尽くして必死に戦い、チャンスをうまく活かした。チームとして、この週末に持っていた力を最大限に引き出せた」
■セバスチャン・ブエミ(8号車)
「すべて考えて、この結果には満足している。ピット戦略をうまく変化させ、ポジションを上げていくという素晴らしい戦いだった。チーム全員が最大限のパフォーマンスを発揮した結果で、これ以上は難しかったと思う」
「高い信頼性と考えられた戦略を実行し、コース上のトラフィックの中でもミスを犯すことはなかった。もっと上位でフィニッシュしたかったが、素晴らしいレースパフォーマンスだったと思う」
■ブレンドン・ハートレー(8号車)
「波乱のレースだった。我々は2台そろって後方グリッドからスタートした。ペースではライバル勢には及ばなかったものの、素晴らしいチームワークを発揮できたと思う。良い戦略で、集中力を切らさず戦い続けた結果、一時は表彰台の可能性も見えた」
「ただ正直なところ、4位が現実的に達成できる最良の結果だった。とはいえ、予選を終えた時点では、この結果は夢にも思わなかった。メカニック、エンジニア、そしてドライバー全員が完璧なレースを戦った。表彰台でのシャンパンファイトを早く味わいたいが、今日のこのポイントフィニッシュは素晴らしい結果だ」
■平川亮(8号車)
「厳しいレースでしたが、結果には満足しています。予想どおい、多くのアクシデントがあったレースでしたが、我々は忍耐強くクリーンに戦い続けました。時には困難な状況もありましたが、戦略を最大限に活かし、適切な判断ができました」
「このレースウイークを通して、チームが本当に尽力し、苦しかった予選を乗り越えて決勝での努力が実を結んだことは本当に嬉しいです。次戦のル・マンへ向けて状況は悪くないと思いますので、引き続き努力を続けて行きます」